ネスレは、植物由来食品分野を強化していく一歩としてオランダのコルビオンと提携し、アニマルフリー食品の味、栄養、そして持続可能性を高められるような素材を微細藻類から開発していく。
微細藻類はビーガン食品に健康機能を与える重要な素材で、タンパク質、脂肪、栄養のクリーンな供給源であると共に、製造においても発酵技術のおかげで地球への環境負荷が小さい。
ネスレとコルビオンは炭素、水、土地のフットプリントが既存の成分よりも小さな素材を開発していく。
植物由来食品に添加する素材
今回の提携が最終的に目指すところは、自社製品への活用や、商品としての販売が可能な一連の微細藻類素材を創り出すことにある。
ネスレのCRO Stefan Palzer氏は、「植物由来食品に用いることのできる代替タンパク質や微量栄養素として微細藻類を活用することに注力していく。コルビオンとの提携を通じて、味がよく、栄養に富んだ素材を微細藻類から開発して様々な食品に用いることができると考えている」とコメントしている。
ネスレは、飲料、代替肉、インスタント食品などの植物由来食品市場で非常に好調な業績を出しており、微細藻類の開発が進めばこの市場で更に伸長できるものと考えられる。
発表によるとコルビオンの新規開発担当部長のMarc den Hartog氏は藻類由来の食品素材に関するネスレとの提携について、「コルビオンは高価格帯の食品や飼料分野で既に藻類を用いており、今回のネスレとの提携は藻類由来の製品を世界市場に展開する機会となる」と期待を表明している。
乳酸関連製品の大手であるコルビオンは2017年にテラヴィア(旧ソラザイム)を買収して微細藻類分野にも事業を拡大した。
ネスレの好調な植物由来食品
先月発表された2021年の決算によると、ネスレの世界市場における収益は940億ドル(約11.2兆円)に達した。ネスレの世界市場における収益のなかで、植物由来食品分野は代替ツナ製品のVunaやAwsome Burgerに牽引されて高い成長を記録し、売上額は約8億6000万ドル(約1,025億円)と2桁の伸びを示した。
2月の会計年度後の報告でネスレCEOのMark Schneider氏は、「代替肉食品でバーガーパテやチキンナゲットのような一般的な製品ではなく、植物由来のツナやエビのような特別な製品に進出したのは正解だった」と述べている。
植物由来食品にネスレは注力
3月、ネスレは7300万ドル(約87億円)を投じてセルビアに新たな生産設備を建設中であることを発表した。18,440平米の新たな生産拠点はスルチンにある既存の設備に近く、既に第1期の建設は終えており、今年末の完成を目指している。
主に欧州向けの植物由来食品ブランドであるガーデングルメ(Garden Gourmet)の専用ラインとなる予定で、その生産規模は最大で年間12,000トンとなる予定である。
最先端の工場で生産されるガーデングルメ製品は、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、オランダに輸出される。
今回の新たな生産設備は、コルビオンとの戦略的な提携とも呼応して植物由来製品に多くの資本を投入する動きの一つである。
植物由来食品分野における新たな潮流
ネスレは、児童労働に関連して会社の評価に受けたダメージの改善に力を注いでいる。
再生可能な農業や公正な価格設定、原料への割増金など、供給体制の転換のためにネスレは12億ドル(約1,431億円)を投じる。植物由来製品への配分を増やすのもその一環で、地球への負荷に配慮することにより会社に対する評価を改善しようとしている。
昨年5月にネスレは最初の代替乳製品としてエンドウ豆由来のミルク製品であるワンダ(Wunda)を発表したが、研究開発部門が社内での開発を急ぎ、わずか6か月で上市に至った。
植物由来食品で新たなファンを獲得できると考えているのはネスレだけではなく、ユニリーバも最近、その主力製品が非植物由来であるにも関わらず、植物由来食品が地球や人類にとって最も健康的な選択肢であるとの研究結果を報告している。
ユニリーバは更に、政府が発表している6つの栄養プロファイルモデルに対する自社製品のデータを開示することも公表した。大手企業でこのような対応をするのはユニリーバが初めてとなる。
参考記事
Nestlé Partners With Corbion To Explore Microalgae Ingredients For Plant-Based Lines
Nestlé Announces New $73 Million Serbian Production Facility For Plant-Based Garden Gourmet Brand
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アイキャッチ画像の出典:Nestlé