魚介類の培養肉スタートアップCellMEATは今回、シリーズAの投資ラウンドを終えて810万ドル(約10億3000万円)の資金を調達した。
Nau lB Capital、BHK Venture Capital、Strong Ventures、Ryukyung PSG Asset Managementが出資した。増資が成功すれば2022年の後半には資金調達枠の拡張も検討している。
今回の資金調達によりCellMEATは培養エビのプロトタイプを製品するとともに培養カニや培養ロブスターの開発も進めることができる。生産能力も強化しつつあり、シンガポールで計画している上市までに培養エビは日産5~10kgに増やすことを目指している。
CellMEATが2020年5月に初めて資金調達を行ってから2年ほどの間に資金調達は3回目となり調達金額は累計で1,280万ドル(約16億3000万円)、出資者も10社に増えている。
培養肉分野への参入は他の大手に遅れたものの、シンガポールを最初の市場に選定するなど、他社に先んじて市場を確保すべくターゲットを明確にして研究開発を加速させているものと考えられる。
シンガポール市場を見据えて
CellMEATはシンガポール市場に参入することを明言している。シンガポールは今でも培養肉の販売を認可している唯一の国であり培養シーフードも近く同様に認可するだろう。
CellMEATは培養エビをシンガポールで2023年までにはBtoBとBtoCで販売し、アジアへと拡売していくことを目指している。
2021年はCellMEATにとって成功の1年だった。2月にプレシリーズAとして約4.7億円を調達して生産コストの低減をすすめ、12月の初めにはウシ胎児血清(FBS)不使用の培地を開発している。
CellMEATが開発した無血清培地CSF-A1は他の培養肉スタートアップに提供する製品ではなく、同社でのみ使用する培地として開発したものである。この培地を用いることにより培養エビの生産コストを1kgあたり20ドル(約2,500円)まで下げることも可能だとしている。
CellMEATは12月の終わりに世界初の培養独島エビという、これまでで最もインパクトのある製品を発表した。このプロトタイプは自社で権利化した無血清培地を用いて様々な大きさや形状で調製された。
試食での良好な評価を受けてCellMEATはタラバガニのような養殖が難しい高級品種の培養シーフードを開発する計画を明らかにしている。
韓国政府の対応
設備面の進展にも関わらず韓国国内における製品化には依然として課題があるため、CellMEATはシンガポールを最初の上市先として見据えている。
韓国政府は培養肉の正式な定義についてもまだ認可していないために規格の概要も決まっていない。今後、培養肉製品を販売するうえで重要になる生産規格やその他の管理項目にもその影響が及ぶだろう。
培養シーフードの生産販売をめぐるせめぎ合い
アジアでは魚介類に対する需要が高いことから培養肉はフードテックにとって重要な選択肢である。シンガポールのShiok MeatsやUmami Meats、香港のAvant Meatsなど多くの会社が将来の食資源として持続可能な魚介類を確保しようとしている。
培養シーフードを消費者に届ける競争をCellMEATと行っているのは米国のUpside Foodsである。CellMEATの無血清培地の発表があった後、ウィスコンシンの培養シーフードのスタートアップでCellMEATと同様にロブスターや高価格帯の甲殻類をターゲットとしているCultured Decadenceを買収している。
カリフォルニアではBlueNaluがハワイの高級魚マヒマヒやマグロの培養製品の開発を進めており、昨年には既存の水産会社タイユニオンや三菱商事と提携してアジアに展開する基盤を得ようとしている。
参考記事
CellMEAT Nets $8.1 Million For Prototype Shrimp Scaling And Crustacean R&D
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アイキャッチ画像の出典:CellMEAT