新しい食

米MeliBioの蜜蜂フリーなハチミツ、2023年始めに欧州市場へ

 

微生物を活用して蜜蜂フリーなハチミツを開発する米MeliBio(メリバイオ)が来年始めにも欧州市場に進出する。

MeliBioは1日、欧州最大の有機食品生産者の1つであるNarayan Foodsと協業して、2023年第1四半期に欧州の75,000店舗で製品を発売することを発表した。製品はNarayan Foodsのブランド「Better Foodie」として発売される。

MeliBioは精密発酵と植物生物学を活用することで、微生物をハチミツ生産の「媒体」とし、従来のハチミツと同じ味と健康上の利点を備えた代替ハチミツを開発している。欧州で発売するのは植物性ハチミツとなる。

MeliBioの代替ハチミツは、殺虫剤や混合物の使用、異常気象による蜜蜂個体数の急激な減少など、養蜂業界が直面している重大な問題を解決する可能性を秘めている。精密発酵により作成されるハチミツは、蜜蜂を使用せず、生産施設で生産されるため、生物多様性の喪失や不安定なサプライチェーンなどの問題と無縁な、持続可能なハチミツとなる。

出典:MeliBio

MeliBioの製品は最近、欧州で最も権威あるフードイノベーション賞の1つ、「SIAL Innovation Selection 2022」に選出されており、欧州の小売業者から高い需要があるという。欧州のレストランや食品企業は、Melibioの代替ハチミツをプライベートブランドに使用することも可能となる。

MeliBioは欧州進出に加え、追加で220万ドル(約2億9500万円)を調達したことを発表した。Collaborative FundSiddhi CapitalThe Greenbaum Foundationが出資し、同社の調達総額は940万ドル(約12億6000万円)となった。

今回の発表は、MeliBioが今年、サンフランシスコ、ニューヨークのレストランでハチミツを期間限定販売したニュースに続くものとなる。MeliBioは2021年10月に最初の製品を発表、昨年にはTIMEの「ベスト・インベンション 2021」でフードテック3社の1社に選出された。

出典:MeliBio

昨年、ニューヨークで開催されたPlant Based World Expo North AmericaでのNarayan Foodsとの商談をきっかけに、わずか1年未満で欧州進出が発表された。2020年設立のスタートアップ企業がわずか3年で欧州進出する段階まで成長した背景には、蜜蜂減少による食料システムへの影響、MeliBioの技術の革新性が関係しているだろう。

持続可能な方法で、生産施設で特定成分の生産を可能とする精密発酵は代替タンパク質の中でも特に成長が著しく、2022年以降は製品を市場へ投入する複数の事例や、大手企業の参入が増えている。乳タンパク質のパーフェクトデイ、卵白タンパク質のThe Every Companyなどすでに市販している企業に加え、来年には精密発酵による脂肪チーズなどの企業も上市を実現する可能性がある。

 

2023年11月追記:欧州で発売予定のハチミツ製品は植物性であることを追記しました。精密発酵の開発状況はこちらの記事をご確認ください。

 

参考記事

MeliBio Award-Winning Plant-Based Honey To Launch In Europe With Organic Food Leader Narayan Foods, Plus New $2.2 Million Investment

CULT Food Science Affiliate MeliBio Lands Distribution Deal for its Plant Cell-Based Honey with Europe’s Largest Organic Food Producer

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:MeliBio

 

関連記事

  1. 米MeliBioが欧州進出を拡大、植物性ハチミツをスイスとオース…
  2. アボカドの芽の凍結保存に初めて成功|オーストラリアのクイーンズラ…
  3. 砂糖削減・代替砂糖ソリューションを開発するスタートアップ企業13…
  4. 話題のビーンレスコーヒーATOMO COFFEEを渋谷で飲んでみ…
  5. 香港IXON社が肉を2年間常温保存できるASAP技術を開発
  6. 精密発酵で赤色着色料を開発するChromologicsが約18億…
  7. 米製粉大手Ardent Mills、小麦由来の代替カカオ原料「C…
  8. 誰もが食べられるグルテンを開発するUkko、食品アレルギーにパラ…

おすすめ記事

代替タンパク質の普及促進を行う国際シンクタンクGood Food Institute(GFI)が日本拠点を設立

代替タンパク質の普及促進で主導的役割を担う国際シンクタンクGood Food I…

EFISHient Proteinが目指す持続可能な魚生産:培養ティラピアの切り身開発に成功

細胞培養によるティラピアを開発するイスラエル企業EFISHient Protei…

砂糖削減に取り組むBetter Juice、ドイツにパイロット施設の設置を発表

砂糖削減テックに取り組むイスラエルのBetter Juiceは、ドイツにパイロッ…

精密発酵でカゼインを開発するEden Brewが約37億円を調達

オーストラリアの精密発酵企業Eden BrewがシリーズAラウンドで2,500万…

培養ロブスターを開発する米Cultured Decadenceが約1億7000万円を調達、州政府による細胞農業企業への初出資

細胞農業スタートアップのCultured Decadenceがプレシードで160…

米AQUA Cultured Foodsがギンコバイオワークスと提携、発酵由来シーフードの上市に向けて加速

バイオマス発酵で代替シーフードを開発する米AQUA Cultured Foods…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(07/11 15:27時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(07/12 01:27時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(07/12 05:24時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(07/11 21:30時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(07/11 13:30時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(07/12 00:37時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP