明治ホールディングスは今月、細胞培養によるチョコレートを開発する米California Culturedへの追加出資を発表した。明治は2021年11月、California Culturedに最初の出資をしており、今回が2回目となる。
明治はCalifornia Culturedとの協業を通じ、カカオ細胞の培養技術を確立し、持続可能なカカオバリューチェーンの構築を目指す。また、培養カカオを原料とした商品開発も行う予定だ。
海外メディアGreen queenの報道によると、二社の提携は10年にわたるものとなる。California Culturedは培養カカオ粉末を明治に提供し、アメリカ・日本市場向けのチョコレートなど菓子/ウェルネス製品に使用する予定だ。
California CulturedはすでにアメリカのGRAS認証に向けたプロセスを進めており、今年後半に心疾患の軽減に良いとされるカカオフラバノール粉末の上市を目指している。
明治は、健康意識の高い層をターゲットとした「チョコレート効果」シリーズで多くの製品を展開している。昨年には、カカオフラバノール含有量を高めた新製品を発売している。California Culturedが販売認可を取得後は、こうした明治の製品に原料として使用される可能性がある。
細胞培養チョコレート・コーヒーを開発するCalifornia Cultured
細胞培養によるチョコレート開発が行われる背景には、チョコレート生産による環境負荷、気候変動によるカカオの減少、チョコレート需要の増加、児童労働問題があげられる。
チョコレートは食品のなかで牛肉、羊肉などに続き、5番目に温室効果ガスを排出しており、パーム油よりも多い。
ドイツのチョコレート消費はガーナとコートジボワールの森林破壊の主要原因となっているなど、カカオによる森林破壊は以前から指摘されており、欧州では森林破壊に関連したカカオとチョコレートの販売を禁止する規則が昨年6月に発効された。
カカオはまた、気温上昇や降水量の減少など、気候変動の影響を受けやすく、2050年までにカカオの木が1/3消滅すると予想されている。
生産工場の中でカカオを開発できるようになると、干ばつや大雨など予測不可能な天候に影響を受けずにカカオ供給が可能となる。これにより、チョコレートメーカーは、児童労働問題を伴わない、安定した持続可能なバリューチェーンを構築できる。
California Culturedはチョコレートだけでなく、細胞培養コーヒーの開発にも取り組んでいる。チョコレート同様、コーヒーの温室効果ガスはパーム油、豚肉、鶏肉を上回る。2050年までにコービー栽培に適した土地が半減すると予測されるなど、コーヒー生産にもチョコレートと似た課題が不随している。
短期間の生産を可能にする植物細胞培養
California Culturedのプロセスは植物細胞培養と呼ばれるもので、細胞の培養から収穫までは3-4日間と短い。まず、最高の官能特性を持つカカオ、コーヒーの品種を選択し、数個の細胞を採取する。カカオとコーヒーが育つ熱帯雨林の状態を正確に模倣したバイオリアクターの中で、細胞が成長、増殖する。3-4日後、細胞を収穫し、発酵・焙煎工程を施す。
同社によると、培養肉などで一般に使用される足場は不要で、培地や設備投資のコストは大幅に抑えられるという。培養に使用するバイオリアクターは、精密発酵技術と比べて安価になるため、「店頭に並ぶチョコレートやコーヒーとコスト競争力のある」ものになるという。
California Culturedは、細胞培養は、チョコレートやコーヒーに含まれる1500以上の不可欠なフレーバー分子を生成する唯一の方法だと自社ソリューションに自信をみせている。
カカオやコーヒーの栽培にかかる時間と比較すると、細胞の収穫まで3-4日という短期間の生産は、業界を変える可能性を秘めている。
培養チョコレートはまだ認可されていないが、チョコレートメーカーが開発を進める事例や、大手食品メーカーと提携しているイスラエル企業Celleste Bioなどが確認されている。また、Ayana Bioのように、製菓よりも健康・ウェルネス用途としてカカオを開発する企業もある。
参考記事
米国のカカオ細胞培養スタートアップ California Cultured Inc.に追加出資
California Cultured Joins Forces with Japanese Chocolate Giant Meiji for Cell-Based Cocoa Products
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アイキャッチ画像の出典:California Cultured