菌糸体生産のB2Bソリューションを開発する独Kyndaは今月、ドイツ、ハンブルグで開催の見本市Internorgaで、同社の菌糸体成分を使用した代替バーガーパテ「Kynda meat」を披露することを発表した。
Kyndaの菌糸体成分は食品産業の副産物を使用して作られたもので、発酵時間は48時間。
Kyndaによると、9種の必須アミノ酸、食物繊維、ビタミンを含むタンパク質含量が37%の菌糸体成分は、えんどう豆タンパク質よりも温室効果ガスが700%少なく、「廃棄物ゼロ」で規制の制約を受けないものだという。
菌糸体由来のバーガーからドッグフードまで
Kyndaはドイツでの発売に向けて、食料システムから豚を取り除くことを使命とする2022年設立の独フードテック企業The Raging Pigと提携した。The Raging Pigはこれまでにえんどう豆、ヒラタケ(オイスターマッシュルーム)を使用した代替ソーセージ、小麦を使用した代替ベーコンを開発、販売してきた。
プレスリリースによると、Kyndaは今年後半に小売業界での提携も予定している。
代替肉の味と持続可能性を最重視するThe Raging Pigの共同創業者Arne Ewerbeck博士は、「Kyndaの栄養価が高く、アレルゲンフリーな(菌糸体)成分を使用することで、生産コストを大幅に削減でき、多額の補助金を受けている食肉生産者と競争できるようになりました」と述べている。
Kyndaはこれまでに菌糸体を使用したドッグフード(上記写真)の開発、ソーセージ・ハラミの開発を手掛けており、代替バターの開発では精密発酵企業とも提携している。
菌糸体タンパク質の自社生産をサポートするKynda
2019年に設立されたKyndaの長期的な狙いは、自社で食品ブランドを展開するのではなく、他社が菌糸体タンパク質を自社生産できるよう、低コストなバイオリアクターを提供することだ。
Kyndaはこれまでに自社のバイオリアクターをドイツ食品技術研究所に納入し、食品業界の副産物を利用して食用菌糸体を大量生産するためのプロジェクトを実施している。昨年11月には、このプロジェクトにドイツ政府から助成金が提供された。
Kyndaはバイオリアクター、スターター培養物、継続的なサポートというパッケージ化されたソリューションを提供することで、食品メーカー、CPG企業、バイオテック企業、アグリフード企業が、副産物を利用して自社で菌糸体発酵を行い、グローバルな原料サプライチェーンに依存しない体制を構築できると考えている。
同社は現在、ドイツ、イェルムシュトルフに発酵施設を構える。今年3万Lに生産をスケールアップし、アグリフード企業との提携を通じて、分散型発酵ネットワークを確立していく考えだ。
菌糸体は効率的かつ低資源で生産できる持続可能性と、高い栄養価から近年、参入する企業が増えているが、菌糸体スタートアップの多くは自社製品の販売をしている。菌糸体肉で代表的なMeati Foodsは、昨年9月、収益向上のため、人員削減とパイロット工場の閉鎖が報じられた。
Quornが昨年、原料事業を開始しているが、KyndaのようにB2Bの原料供給ではなく、B2Bの菌糸体パッケージサービスを目指す企業は少ない。
Kyndaのサービスは、食品メーカーの原料調達・食品開発における持続可能性の向上に寄与するもので、普及による影響範囲は大きい。Kyndaや、培養肉業界向けのThe Cultivated Bのように、より小さく、より効率的で、拡張可能なバイオリアクターの提供を目指す動きは今後も増えていきそうだ。
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アイキャッチ画像の出典:Kynda