フィンランド・アメリカに拠点を置くOnego Bioは今月、精密発酵による卵白タンパク質の商用化と生産拡大に向けて、シリーズAラウンドで4000万ドル(約61億円)を調達した。
今回のラウンドは、日本と北欧のベンチャーキャピタルNordicNinjaが主導し、Agronomics、Maki.vc、Holdix、Turretなど既存投資家に加え、Tesi、EIT Foodなどが新たに参加した。調達資金には、フィンランド政府傘下の公的機関Business Finlandからの1000万ドル(約15億円)の非希薄化資金が含まれており、Onego Bioの調達総額は5600万ドル(約86億円)となった。
Onego Bioは最初のターゲット市場・アメリカ進出に向けて、精密発酵による卵白タンパク質で年内のGRAS自己認証ステータスの取得、来年にはFDAからの「質問なし」レター獲得を目指している。
これが実現すると、米The Every Companyに続き、精密発酵由来の卵白タンパク質でアメリカで2番目に認可を取得することとなる。
Onego Bio、米国進出に向けて約61億円を調達
Onego Bioは、さまざまなフードテック企業を輩出しているフィンランド技術研究センター(VTT)からのスピンオフとして2022年に設立された。
VTTからは、空気タンパク質ソレインで知られるソーラーフーズ、マイコプロテインPEKILOを開発するEniferなどが登場している。
卵白には100種類のタンパク質が含まれているが、Onego Bioは、最も機能的で栄養価の高い1つのタンパク質に着目した。卵白の最大65%を占めるオボアルブミンだ。オボアルブミンは、食品製造に不可欠な機能特性を担っており、高い栄養価とバランスの取れたアミノ酸組成を備えている。
重要な卵白タンパク質オボアルブミンを生成するにあたり、Onego Bioはインスリン、酵素、香料、チーズ製造で使われるレンネットなど、身近な成分の製造に数十年前から使用されてきた精密発酵技術を使用した。精密発酵では、微生物が特定の成分を作るようにプログラムされる。
Onego Bioは糸状菌Trichoderma reeseiを「工場」として、オボアルブミンと生物学的に同等なBioalbumenを開発した。
トウモロコシ由来の糖に代わる原料開発にも着手
生産を鶏に依存しないBioalbumenは、卵の高騰、不安定なサプライチェーン、鳥インフルエンザなど業界が直面する課題を回避できる可能性がある。100gあたり90gのタンパク質を含み、必須アミノ酸をすべて含んでいるという。
微生物が目的の成分を生成するには、原料となる糖が必要になる。同社は環境負荷を最小限に抑えるために、代替原料の使用に焦点をあてたプロジェクトを進行中で、最終的にはトウモロコシや牧草地への依存をなくすことを目指している。
25社以上のCPGメーカーと提携
Onego Bioは今回の資金調達により、工業生産へのスケールアップや米国販売チームの拡大など、北米での市場参入戦略を進める。
上市を加速させるため、Onego Bioは共同製造業者と提携する一方、自社での製造計画を確定させつつあるようだ。このアプローチには、オフテイク契約の確保と、最初の自社製造ユニット建設のための非希薄化資金の獲得が含まれる。同社プロセスは、25万Lのバイオリアクターで1Lあたり120gのタンパク質を生産可能であることが実証されているという。
Onego Bioは設立から2年で、焼き菓子、菓子、スナック、ソース、パスタ、代替肉などに使用するため、25社を超えるCPGメーカーと協業している。その中には、世界最大手の食品メーカーもいるようだ。
卵タンパク質を開発する企業の増加
卵白タンパク質は必須アミノ酸を含み、ゲル化性、起泡性、乳化性に優れる機能性ゆえに、焼き菓子、パンの製造、畜産加工品、水産練り製品などに幅広く利用される動物タンパク質だ*。
Onego Bioのほかにも、複数の企業が確認されている。ここでは、対外的な発表に加え、出願特許から動物由来と同等の卵タンパク質を開発している可能性が高い企業7社をまとめている。
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アイキャッチ画像の出典:Onego Bio