代替プロテイン

欧州の植物由来食品市場、5.1%成長するも、代替肉・代替魚の浸透に課題

Foovo(佐藤)撮影 2024年10月、オランダ・ハーレムのAlbert Heijnにて

欧州の植物由来食品・飲料市場は成長を続けているが、肉や魚など主菜カテゴリへの浸透はまだ限定的だ。

米市場調査会社Circanaが4月9日にアムステルダムで開催されたPlant FWD公表した分析によると、イギリス、ドイツ、イタリア、スペイン、フランス、オランダの6市場における植物由来食品・飲料の市場規模は163億ユーロとなり、2025年は前年から5.1%増加した。ただし、食品・飲料全体の売上に占める割合は2.4%にとどまり、消費者の関心に比べて市場規模は依然として限定的だ。

今回のデータで特に注目したいのは、「代替肉」や「代替シーフード」は植物由来カテゴリ全体の売上の4%にとどまり、成長をけん引しているカテゴリではないことだ。カテゴリ別ではナッツ・種子植物由来売上の45%を占め、代替乳製品21%調理済み食品15%となり、日常的に消費される製品がけん引した形となる。

需要を支えているのはヴィーガンやベジタリアンだけではない。Circanaによると、欧州でヴィーガン・ベジタリアンは約11%にとどまる一方、フレキシタリアンは2023年の21%から2024年には31%へ拡大しており、これらの層が、植物由来食品・飲料の成長をけん引する主な要因となっているという。

植物由来市場は、動物食品の置き換えではなく、日常の食生活に組み込まれる食品へと重心を移しつつある。

Foovo(佐藤)撮影 2024年8月 フィンランドにて

ただし、各国での成長にはばらつきがある。ドイツは売上ベースで前年比7.2%増、販売数量ベースで4.2%増、スペインも売上ベースで7.5%の成長を記録した一方、イギリスは45億ユーロ規模と大きな市場でありながら販売数量は0.7%減と停滞した。

欧州の小売には多種多様な植物由来食品が並び、日本より大きく先行しているのは確かだが、今回のデータからは、欧州の植物由来市場はカテゴリによっては、まだ「ニッチ」にとどまっていることがうかがえる。

Circanaは、消費者の最優先事項として「健康、栄養、価格」を挙げ、次の成長を左右するのは、消費者の日常的な行動に適合する製品をどれだけ効果的に提供できるかどうかだとした。価格だけでなく、味・栄養のギャップを埋め、日常に自然に取り入れられる製品が重要だとし、「誇大広告や模倣品としての目新しさによって推進されるべきではない」と強調した。

筆者が参加した2024年後半の欧州カンファレンスでも、植物由来食品が選ばれる理由として、環境やサステナビリティ以上に、味や利便性、価格が重視されているとの議論があった。

さらに、先月サンフランシスコで開催されたFuture Food-Techでは、価格コントロールや消費者の選択に影響を与える存在として、小売業者の重要性が指摘された。Circanaも、小売業者やメーカーの課題は「認知度を高めることではなく、関心を習慣へと変えることだ」と述べている。

この1年だけでも、ドイツではキノコ由来肉が市場に登場し、Juicy Marblesは植物性バーガーをイギリスのスーパーマーケットで発売した。一方、事業終了にいたった代替シーフードのHooked Foodsは、販路を拡大した一方で、市場の反応が十分でないことに言及した。

Foovo(佐藤)撮影 2024年10月オランダにて

こうした点から、欧州の植物由来市場には成長の余地がまだ十分にある一方で、厳しさもうかがえる。

ナッツ・種子での植物由来拡大にも意味はあるが、これらは肉や魚のように食卓の主菜を担う存在ではない。植物由来市場が本当に大きな市場へ拡大していくには、周辺カテゴリの伸びだけでは限界があり、最終的には肉や魚といった主菜領域で置き換えが進むかが重要になる。

植物由来食品・飲料の全体に占める比率が2.4%で、「代替肉」や「代替魚」が植物由来カテゴリ全体の4%にとどまることは、市場がまだ小さいだけでなく、主菜市場への浸透がまだ限定的であることを示している。

一方で、ヘルシンキなど、市が2030年までに2025年比で肉・乳製品調達を半減する目標を掲げ、植物由来食品の比率を高める方針を打ち出す事例もある。市場形成は民間や小売の取り組みだけで進むものではなく、こうした公共施策も今後の市場形成を後押しする可能性がある。

 

※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。

 

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アイキャッチ画像はFoovo(佐藤あゆみ)撮影

 

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