今年5月、シンガポールの小売店で培養肉の販売が開始された。
場所は、チャイナタウンからタクシーで15分ほどの閑静な場所にあるHuber’s Butchery。
現在もHuber’s Butcheryでは、GOOD Meat(イート・ジャストの子会社)が開発した培養肉製品「GOOD Meat 3」が販売されている。
このたびシンガポール現地へ行き、「GOOD Meat 3」を食べることができたのでその感想をお届けする。
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培養肉「GOOD Meat 3」を食べた感想
訪問したのは2024年7月下旬。「GOOD Meat 3」はHuber’s Butcheryの1階で販売されていた。
前回訪問したときもそうだったが、店が培養肉を取り扱っていることがわかるよう、いろいろなところに広告ディスプレイがある。
冷凍コーナーにも培養肉を販売中であることを示す表示があった。
培養肉の下段や隣のコーナーには骨付きうずら肉、レバーなど動物肉が陳列されている。
買った製品がこちら。培養鶏肉で、120gで7.2シンガポールドル(約800円)。
あらかじめカットされていて、味付けもされている。袋から取り出して焼き色がつくまで焼くだけなので、簡単に調理できる。植物成分には小麦タンパク質、大豆タンパク質、ほかには塩、ココナッツオイル、ヒマワリ油、オリーブオイルなどが使用されている。成分表示は「GOOD MEAT CULTIVATED CHICKEN」とある。製品は培養肉を3%使用している。
さて、問題の味なのだが、残念なことに私は渡航前からしばらく続いていた味覚障害で、味はわからなかった。ようやくGOOD Meatの培養肉を食べられると思ったら味覚障害なんて、、、と考えると落ち込んだが、幸い食感はわかったし、家族がいたので代わりに味・食感を評価してもらった。
家族①の感想
鶏肉と比べて遜色なく、よくできている。鶏肉と比べる視点に立って比較すると、鶏肉にはそれほど強くないものの繊維感があるが、「GOOD Meat 3」は動物肉らしい繊維感が欠けている感じはする。噛み応えはあるけれど、ややゴムゴムしい噛み応えで、鶏肉にあるような柔らかいけどしっかりした食感とは違う感じがする。といっても、言われなければ、ああこういう肉なのかなと感じ、培養肉だとは気づかないと思う。味は単調だから、何度も食べたら飽きる可能性はある。
家族②の感想
美味しい。ゴムゴムしい感じが気になるといえば気になるけど、敏感な人でなければ気づかないと思う。言われなければこういう肉なのだろうと思うだろうから、培養肉だとは気づかないと思う。
私の感想(食感のみ)
噛み応えがあり、食感をよく再現したと感心する出来栄え。少しゴムゴムしい感じはある。柔らかいけど繊維感がある鶏肉とはどこか違う感じはあるものの、よくできていると思う。2人と同じく、野菜などと一緒に炒めたものを食べたら自分は気づかないと思った。断面も動物肉のように見える。
世界で初めて培養肉を取り扱った小売店Huber’s Butchery
Huber’s Butcheryが培養肉を取り扱うのはこれが2回目。
2023年を通じて、Huber’s Butcheryに隣接するHuber’s Bistroでレストランメニューとして週1回提供されていた。この時の製品には約70%の培養肉が使用されていた。
Huber’s Bistroは当時、予約開始と共にすぐに満席になってしまうなど、予約を取ることが難しかった(Foovoも何度かトライするが予約を取れなかった)。
対照的に、現在の製品は、Huber’s Butcheryの冷凍コーナーに大量に陳列されており、まさに「いつでも培養肉を買って食べられる」状態である。たとえ製品中の培養肉の割合が3%と少なくても、広く消費者にリーチ可能な方法で培養肉を市場に投入するという点では効果的だ。
GOOD Meatは7月の土曜に計4回、Huber’s Butcheryで「GOOD Meat 3」の調理方法をレクチャーする無料試食イベントを開催していた。Foovoは残念ながら試食会に間に合わなかったが、開催場所の写真は撮ることができた。店のスタッフに聞くと、GOOD Meatのスタッフが来て、デモを行っていたらしい。
世界で「今」培養肉を購入できる場所は?
Foovoの調査では、培養肉を現在進行形で提供しているのはシンガポールのみ。
Huber’s Butchery(培養鶏肉)と、オーストラリアのVow(培養ウズラ肉)が最初にパートナーシップを結んだレストランTippling Club、2番目にパートナーシップを結んだレストランFuraの3か所のみとなる。
Vowの培養肉ブランド名は「Forged」。提携レストランのメニューを見て、「Forged」があれば培養ウズラ肉を提供しているということになる▼。
小売店で入手できるのはGOOD Meatのみだ。Tippling Clubではランチ・ディナーでコース料理の品として提供、Furaではバーのメニューとして提供されている。
この3箇所の中で、7.2シンガポールドル(約800円)で購入できる「GOOD Meat 3」は消費者が最も手に取りやすい培養肉になる。
培養肉の販売が認められた国
培養肉を巡る状況は次の通り。
- 販売が認められた国:シンガポール、アメリカ、イスラエル、イギリス(ペット用のみ)
- 販売を実現した国・企業:シンガポール(GOOD Meat、Vow)、アメリカ(GOOD Meat、Upside Foods)
他にもさまざまな企業が、シンガポール、オーストラリア、韓国、スイス、イギリス、EUなどで承認待ちの状態にある。Foovoが把握していないだけで、他のエリアでも承認申請が完了しているかもしれない。最近では、フランスの培養フォアグラ企業GourmeyがEUで初めて培養肉の承認申請を提出したことが発表された。
今年4月、シンガポールでVowの培養ウズラ肉を食べた時、スタッフが香港でも認可を目指していることを教えてくれたため、香港でも近い将来、培養肉が食べられるようになるかもしれない。
培養肉初販売からこれまでの流れはこちらから。
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アイキャッチ画像はFoovo(佐藤)撮影