代替プロテイン

ソーラーフーズ、米レストランでCO2由来の微生物タンパク質「ソレイン」を初提供

 

二酸化炭素、電気、微生物から代替タンパク質を作るというフィンランド企業ソーラーフーズ(Solar Foods)

Foovoで最初に取り上げた2020年末から4年。同社はついに、巨大市場アメリカで持続可能なタンパク質「ソレイン(Solein)」の初販売を実現した

ソーラーフーズは今年9月、アメリカでGRAS自己認証を取得し、これはシンガポールでの認可に続くものとなった。その後、フィンランド、ヴァンターにある工場「Factory 01」をアメリカ食品医薬品局(FDA)に登録し、アメリカで販売する他の要件をクリアした。

2024年11月19日、ニューヨークのレストラン「Olmsted」でソレイン使用の4料理がゲストに提供された。「Olmsted」では今月末までソレイン使用の料理が提供される。

米レストランでソレインを初提供

出典:Solar Foods

ニューヨークのレストラン「Olmsted」のシェフGreg Baxtrom氏は、4つのコース料理で同社の代替タンパク質「ソレイン」を使用した。デリカータ・スカッシュ、Brussels Sprout Spätzle、人参クレープ、チョコレートムースの4品で、牛乳やバターなどの乳製品卵黄の代わりにソレインを使用した。

「私たちのレストランでは、持続可能な取り組みを大切にしています。ソーラーフーズから新しい食材『Solein』の最初の提供者として協力しないかというお話をいただいたとき、とてもわくわくしました」と、Baxtrom氏は振り返る。

シンガポールでの上市に続く米国進出

出典:Solar Foods

今回の提供期間は2週間弱だが、これは新しいタンパク質の市場テストとして重要な意味を持っていると思われる。短期間の提供とはいえ、これまでにない新しいタンパク質がアメリカで販売された意義は大きい。

ソレインは、空気中に無尽蔵に存在する二酸化炭素と、水の電気分解で生成された水素、そして水素細菌(hydrogen-oxidising bacteria/HOB)と呼ばれる微生物を使用して生成されるタンパク質。二酸化炭素、再生可能エネルギーを使用するため環境負荷を軽減し、工場があれば理論的に地球上のあらゆる場所でタンパク質生産を可能にするため、持続可能なタンパク質として期待されている

ソーラーフーズは2023年にシンガポールでソレインを初販売した。フィンランドのチョコレートメーカーFazerや日本の食品大手・味の素といった著名な企業もソレインの可能性に着目し、シンガポールでジェラートチョコレート(Fazer)、月餅(味の素)、中華料理などの試験販売を実施してきた。今年4月には「Factory 01」を稼働、9月にはフィンランドのNasdaq First North Growth Market直接上場した

同社は「Factory 02」に続き、「Factory 03」の建設計画も進めている。秋に開催された説明会によると、「Factory 02」は早ければ2028年に稼働開始予定となり、2035年までに世界数十カ所にソレイン工場の設置を目指している。これらの工場の稼働により、世界規模での食料需要・気候変動に対応する、農業に依存しない新たな食品システムを構築したいと考えている。

次世代タンパク質開発への挑戦

出典:Solar Foods

ソーラーフーズは現在使用中の微生物だけでなく、開発中の新しい微生物株を使用して、新たな食品原料の生産を目指している。世界の食品生産に革命を起こすことを使命とする同社にとって、アメリカでの初販売は、ようやく変化をもたらすためのスタートラインに立ったといえるのかもしれない。

同社は昨年9月、二酸化炭素を炭素源として乳タンパク質の1種、β-ラクトグロブリンを分泌する水素細菌の開発を目指していることを発表した。これが成功すると、将来的には水素細菌を利用して他のタンパク質を生産できる可能性もある

 

参考記事(プレスリリース)

Solar Foods launches Solein® in the United States

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Solar Foods

 

関連記事

  1. JACA、培養肉など細胞性食品のリスク評価案を消費者庁に提出|行…
  2. 分子農業で代替タンパク質と成長因子を開発するスタートアップ企業4…
  3. 二酸化炭素から代替タンパク質を開発するJooulesが約1.5億…
  4. Oobliが精密発酵モネリンでGRAS認証を取得|ブラゼインに続…
  5. Better Dairyはアニマルフリーチーズの最前線で約25.…
  6. 細胞農業によるキャビア製造でGeneus Biotechがヴァー…
  7. ブラジルの精密発酵企業Future Cow、最初の乳タンパク質試…
  8. 韓国のEverything But、ペットフードを使った培養肉の…

おすすめ記事

ゲイツ氏、ベゾス氏が支援するNature’s Fynd、発酵タンパク質を使った新商品を発表

微生物発酵で代替タンパク質を開発する米Nature’s Fyndが、最初の商品を…

Revo Foodsが3Dプリンターで作製した代替サーモンを初発売、スーパーでも販売開始

オーストリア企業Revo Foodsが3Dプリンターで作製した代替サーモンを発売…

アレフ・ファームズがアジアへの培養肉導入加速に向けてタイ・ユニオン、CJ第一製糖と提携

イスラエルの培養肉企業アレフ・ファームズが、アジアの食品大手2社と基本合意書(M…

牛を使わずにモッツアレラチーズを開発する米New Cultureが約28億円を調達

アニマルフリーなモッツアレラチーズを開発する米New CultureはシリーズA…

Change FoodsがUAEへの精密発酵タンパク質の工場計画を発表

精密発酵スタートアップのChange Foodsは、アニマルフリーな乳タンパク質…

フードテック現地レポート会・セミナー動画|2025年1月開催(オランダ)

2025年1月に開催した第16回Foovoセミナーの動画です。使用したセ…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

最新記事

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(08/01 15:30時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(08/02 01:37時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(08/02 05:29時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(08/01 21:35時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(08/01 13:34時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(08/02 00:42時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP