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BlueNalu、培養マグロの米国先行上市を目指す|Nomad Foodsと提携拡大し、欧州は英国を優先

2025年5月13日:更新 欧州での優先市場がイギリスであることがわかるように一部、追記しました。また、タイトルを誤解のない表記に修正しました。

 

クロマグロなどの培養シーフードを開発する米BlueNaluは4月29日、欧州大手の冷凍食品メーカーNomad Foodsとの戦略的パートナーシップ拡大を発表した

両社は2021年に提携し、欧州とイギリス市場に進出する機会を模索してきた。

Green queenの報道およびプレスリリースによると、同社はアメリカではまずカリフォルニア州での販売を先行させつつ、欧州においてはイギリス市場への進出に注力し、高級レストランや期間限定商品の提供から実現を目指していく方針が示された。

この戦略シフトの背景には、BlueNaluが英国食品基準庁(FSA)の規制サンドボックスプログラムにアメリカ企業として唯一採択されたという、イギリスにおける規制環境の前進がある。同プログラムは、選出された8社がFSAと協働しながら新規食品の規制プロセスを進め、最高水準の食品安全と透明性を確保できるようにする仕組みである。

注目したいのは、BlueNaluは選ばれた8社のうち唯一、培養シーフードに取り組む企業であることだ。

同プログラムでは、2年以内に2件の細胞性食品について安全性評価を完了するとしており、その対象の一つにBlueNaluが含まれる可能性もある。もしこれが実現すれば、培養シーフード全体の商業化に向けた規制整備のモデルケースとなるだろう。

出典:BlueNalu

発表と同時に公表された、イギリスで寿司をよく食べる人2,000名を対象とした調査では、92%がBlueNaluの最初の製品である培養トロの試食に前向きで、73%が同商品を提供する寿司店に来店意欲を示した。74%は価格が同等以上でも購入を検討すると回答した。

肯定的な回答をした人では、安全性(無寄生虫・無水銀)と健康メリットが、培養トロの主なメリットとして挙げられた。

規制プログラムへの参加に加えて、イギリスでの消費者調査で明らかになった高い関心も、同国市場に注力する理由の一つと考えられる。

以前の報道によるとBlueNaluは、10万リットルのバイオリアクター8基を有する、年産最大600万ポンドを見込む大規模規模工場で2027年の生産開始を見込んでいたが、今回のプレスリリースで工場稼働に関する言及はなかった。

同社はこれまでに、住友商事、三菱商事、タイの食品大手タイ・ユニオン、韓国のプルムウォン、スシローを運営するフード&ライフカンパニーズなどと提携している。

2023年10月には三菱商事プルムウォンタイ・ユニオンといったアジア大手企業との提携拡大を発表し、アジア地域での取り組みを強化する姿勢を示した

出典:BlueNalu

BlueNaluは2024年2月、アメリカの主要な水産物業界団体「全米漁業協会(NFI)」に細胞培養シーフード企業として初めて加盟認められた

同社は初期製品としてクロマグロのトロを開発中であり、昨年には日本企業団がBlueNaluの本社を訪問するなど、国内の関心も高い。

人向けの培養肉では、シンガポールアメリカ香港ですでに販売が実現しているが、培養シーフードで販売認可が下りた地域はまだない。

培養シーフードは、世界的な水産物需要の増加や資源の枯渇リスクに対応する、持続可能な選択肢として期待されている一方、法規制の点で培養肉に比べて進展が遅れている。

今回のBlueNaluの規制プログラムへの参加とそれに起因するイギリス進出戦略は、そうした状況に一石を投じる動きであり、市場投入に向けた重要なステップとみなせる。今後の動向次第では、日本やアジア市場への展開が加速する可能性もある。

 

※本記事は、下記プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。

BlueNalu Expands Partnership with Nomad Foods as New Research Shows Strong UK Consumer Demand

 

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アイキャッチ画像の出典:BlueNalu

 

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