オランダの培養肉企業Mosa Meat(モサミート)は5月15日、イギリス当局に培養脂肪の承認申請を提出したと発表した。
同社はこれまでに欧州当局(昨年12月)、スイス当局(2025年2月)に申請しており、イギリスでの培養脂肪の申請は欧州全体で3件目の申請となる。
モサミートは市場投入に向けて、ハンバーガー、ミートボールなどに植物成分と混合して使用する培養脂肪に焦点をあてている。同社は培養牛肉も開発しているが、植物成分と混合することで、全体に占める割合が少なくても、製品全体の味や風味の改善に寄与する脂肪から参入を目指している。
モサミートCEO(最高経営責任者)のMaarten Bosch氏は、「まず培養脂肪から始めることで、長期的なビジョンに忠実に、最初のバーガーを消費者に届ける道を拓いています。初期製品は、当社の専門性を活かし、培養成分と植物由来成分を組み合わせたものになります」と述べている。
イギリスではフランスのVital Meat(2024年5月)、イスラエルのアレフ・ファームズ(2023年8月)などが培養肉の申請を提出しているが、培養脂肪の申請ではモサミートが初となる。
培養肉(ヒト向け)は2020年から2024年にかけてシンガポール・アメリカ・香港で上市が実現しており、培養脂肪ではMission Barnsが3月にFDAの安全性審査をクリアし、販売まで近づいている。培養シーフードではまだ販売認可は下りていない。

Foovo作成 2025年5月19日時点の細胞性食品の認可・販売事例状況
GFIは、2025年は新たな承認や新工場の立ち上げにより、生産・販売ともに過去最大となる見込みだが、資金難企業の閉鎖・統合も加速し「選択と集中」の局面に入ると予想している。より多くの承認が見込まれる一方で、申請数の増加により、当局側のリソースなどから、承認までにかかる時間が長期化することも予想される。
こうした中、モサミートがイギリスの科学・イノベーション・技術省(DSIT)が資金提供する規制サンドボックスプログラムに他7社と共に選出されたこと、このプログラムが2年以内に2件の細胞性食品の安全性評価を完了することを約束していることは前向きな材料といえる。
培養脂肪は、少量の使用でも植物肉の味や食感を向上させると期待され、肉製品に混合して使用できるため、培養肉のような成形化の課題がなく、コスト面でも優位性を有する。培養脂肪の市場投入では、英Hoxton Farmsが住友商事と提携するなど、日本企業を巻き込んだ動きも進んでいる。

出典:GFI 2024 State of the Industry
一方、細胞性食品分野への世界投資額は、2024年に直近3年で最低水準となり、資金調達環境の厳しさが続くとされる。こうした状況下でモサミートの培養脂肪がシンガポールまたは欧州で正式に承認されれば、欧州での規制の前進・投資の回復を後押しし、業界全体の再活性化につながると期待される。
※本記事は、下記プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
Mosa Meat Requests UK Market Authorisation
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アイキャッチ画像の出典:Mosa Meat