ブラジルの精密発酵企業Future Cowが、技術をスケールアップし、企業向けにライセンス供与を開始するために、485万レアル(約1億2,000万円)の資金調達に成功した。
Green queenの報道によると、Future Cowは調達資金で精密発酵によるホエイ・カゼインの研究開発を推進し、2026年に商業規模に到達することを目指している。
Future Cowは、Leonardo Vieira氏とRosana Goldbeck氏によって2023年に設立され、同年に精密発酵による乳タンパク質の試作に成功している。
Pesquisa para Inovaçãoの報道によると、同社は動物性製品の完全な代替ではなく、補完的なソリューションの提供を目指している。
Vieira氏は同メディアのインタビューで、「精密発酵の初期には、動物性か非動物性かという白か黒かの二者択一でしたが、現在はハイブリッドモデルが登場しています」と述べている。
同氏によれば、乳業メーカーの幹部からは、「市場に出回る牛乳は乳業メーカーにすでに確保されている」との声が聞かれ、既存の原料だけでは生産量を20〜30%増やすことはできないという。Vieira氏は「動物性原料に当社の原料をブレンドし、ハイブリッド製品として生産を拡大できれば、大きな利益をもたらせるでしょう」との見解を示している。
Perfect Dayが先陣を切ったハイブリッド戦略の可能性
Foovoの認識では、これまでに市場に流通した精密発酵食品は、全体的に“非動物性への置き換え”を志向する製品が多かった。
米パーフェクトデイ(Perfect Day)の精密発酵ホエイを使用したアイスクリーム、ミルク、プロテインパウダーなどがその代表例であり、ネスレ、ユニリーバの大手による試験販売でも“非動物性への置き換え”が見られた。
一方で、2023年7月に発売された「APOLLO II」(パーフェクトデイ原料を使用)のように、動物性タンパク質・精密発酵乳タンパク質・卵白をブレンドしたハイブリッド型製品も登場している(現在は在庫切れとなっている)。

出典:Unico Nutrition/Perfect Day
こうした発想は精密発酵に先行して代替肉の分野ですでに見られており、マイコプロテインのQuornやThe Better Meat Co(今後マイコプロテインをハイブリッド肉に使用予定)のほか、オランダの一部スーパーでは植物性と動物性を掛け合わせたハイブリッド商品の導入が進んでいる。
精密発酵カゼインのThose Vegan Cowboysも、ハイブリッドチーズの導入を検討している。
現時点で精密発酵原料はコスト面と供給量に課題を抱えており、今後は「APOLLOⅡ」のように、原料の一部のみを精密発酵で置き換える段階的なハイブリッド戦略が主流となる可能性がある。乳製品、肉、卵などの各カテゴリにおいて、“精密発酵成分を何と掛け合わせるか”が、新たなトレンドになる可能性も十分に考えられる。
※本記事は、海外メディア(Pesquisa para InovaçãoとGreen queen)の記事をもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
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アイキャッチ画像の出典:Future Cow