出典:Planetary
スイスのディスカウント系大手スーパー、ALDI SUISSEは先月、同国フードテック企業Planetaryのマイコプロテインを使用した代替チキン製品の販売を開始した。対象店舗はスイス国内242店舗。
このマイコプロテインは、Planetaryが買収したスペインの菌糸体スタートアップLibre Foodsが開発したもので、買収後に発売された初の製品となる。
PlanetaryはLibre Foodsの資産をB2B部門として統合し、今回のALDI SUISSEとの提携により、マイコプロテインを活用したホールカットの代替鶏肉がスイスの一般消費者に届くようになった。
製品名は「MyVay Gourmet Filet」で、ALDIの植物由来製品のブランド「My Vay」から展開されている。公式サイトでは製品ページが確認できなかったが、The Plant Baseの報道によると、2025年7月7日に販売が開始され、4つの天然成分を使用し、高タンパク質・高食物繊維・低脂肪を特徴としている。
Green queenの報道では、現行製品には卵白が使用されておりベジタリアン向けとなるが、卵白の代わりに植物性結着剤を使用したヴィーガン版も開発しており、今後、発売を予定しているという。現行製品は93%がマイコプロテインとなるという。
2021年創業のPlanetaryは、発酵プラットフォームのBioBlocksを中心に、精密発酵、バイオ由来製品、マイコプロテイン事業を展開している。スイス・Aarbergには最初のマイコプロテイン製造施設を備えている。
欧州マイコプロテイン市場の今

出典:Tempty Foods
欧州では他にもマイコプロテイン企業が存在し、一部ではコンビニへ導入も進む。
デンマークのTempty Foodsは昨年6月にレストラン導入を実現し、1年後にはセブンイレブンでの試験販売を開始した。
オランダのThe Protein BreweryはアメリカでGRAS自己認証を確認済みで、シンガポールでも昨年、販売認可を取得した。シンガポールでの販売は確認できていないが、アメリカでは同社マイコプロテイン「Fermotein」を使用したベーグルの販売実績がある。
世界的に有名なマイコプロテインブランドのQuornは昨年6月、肉摂取量削減を加速させるため、ハイブリッド製品市場へ参入。今年5月には、フランスのKFCとメニューの試験運用を進めていることが報じられた。Quorn製品はスイスではCoop、Migrosのスーパーマーケットに導入されている。

Eniferの食品用マイコプロテインPEKILO Foovo(佐藤)撮影
世界で最も早くマイコプロテインを商用化したフィンランドのEniferは、食品用途の認可取得に向けて、昨年、欧州当局に申請した。まずはペットフード・水産飼料における先行展開を目指し、フィンランドでの工場建設を進めている。
2022年設立のフランスのMycelium Technologiesは今年4月、75万ユーロ(約1億2,800億円)の初の資金調達に成功した。
こうした中、ALDIによる全国展開での販売開始は、スイス市場におけるマイコプロテインの浸透を加速させる転換点となるだろう。オランダなど一部国の小売からQuornが撤退する動きもみられる中、欧州におけるマイコプロテイン食品の今後の動向に注目したい。
※本記事は、海外メディアの報道をもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
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アイキャッチ画像の出典:Planetary