新しい食

カカオフリーチョコを開発する英Win-Win、シリーズAで約6億円を調達──ベーカリー原料大手のMartin Braunと提携、欧州展開を加速へ

出典:Martin Braun-Gruppe

米やイナゴマメを原料にカカオフリーの代替チョコレートを開発する英Win-Win(旧称WNWN)は先月、シリーズAラウンドで300万ポンド(約5億9,800万円)を調達した

Oetker CollectionFoodlabsMustard Seed MazeGota VenturesPauligKapitalが出資し、調達総額は800万ポンド(約16億円)となった。

Win-Winは調達した資金で、イギリス市場で新製品の投入、ドイツ、ベネルクス、北欧、フランス、スイスなど主要な欧州市場への拡大を目指すとしている。

2021年設立のWin-Winは、代替チョコレート分野のパイオニア的企業とされ、2022年5月に世界初のカカオフリーチョコレートを発売した。2023年11月にはベーカリー、レストラン、製菓企業向けにカカオフリーチョコレートのB2B販売を開始した

同社製品は、ロンドンのバーLyanessで2023年1月にカクテルメニューに添える代替チョコレートに採用されたり、ミシュラン・グリーンスターのApricityでは「Baked Win-Win milk choc’ mousse, brown sugar & miso custard」「Win-Win choc’ & caramel bonbons」など、現在もチョコムースなどのメニューに採用されている。

また、ロンドンのTOAD Bakery採用された事例など、一部で導入が確認されていたが、Foovoの調査では、2023年のB2B販売開始以降の大きな動きは確認できていなかった。

そうした中、Win-Winはドイツのベーカリー原料大手Martin Braun Backmittel und EssenzenMartin Braun-Gruppe)と流通パートナーシップを締結。Martin Braun-Gruppeにとって初のカカオフリー製品となり、公式サイトにも、「Win-Win dark vegan」「Win-Win Bright vegan」が掲載されている。

出典:Martin Braun-Gruppe

Martin Braun-GruppeB2Bベーカリー分野を中心に、焼き菓子用プレミックスやフィリング、アイスクリーム製品などを展開しており、世界100ヵ国以上で販売網有する。今回出資したOetker Collectionのグループ企業でもある(Oetker Collectionは37ヵ国148の企業から構成されている)。

さらに Martin Braun-Gruppeとは、2023年10月に共同開発による最初の試作品を発表していた

つまり、Win-WinへのOetker Collectionによる出資、およびMartin Braun-Gruppeとの流通提携は、既存のベーカリー原料企業がWin-Winのカカオフリー製品を必要な解決策として支持していることを示すものだ。

Oetker CollectionのSven Wiszniewski氏も、「チョコレートなどの原材料を新たな視点で捉える彼らのアプローチは科学的に画期的であり、業界が直面する環境的・倫理的な課題を考えると非常にタイムリーです」とプレスリリースで述べている。

今回の動きを機に、Win-Winのカカオフリー製品が欧州でさらに導入が拡大していく可能性が高い。ベーカリー分野では米製粉メーカーArdent Millsが代替カカオ原料を開発しており、これまで海外で市場投入が先行していたPlanet A Foodsに加え、代替カカオ市場がさらに活発化しそうだ。

国内でも昨今のカカオショックを背景に、不二製油あじかんイオンが代替カカオに参入済みだ。

不二製油はB2B向け、あじかんは消費者向け製品を展開している。イオンが海外スタートアップと提携したように、米やイナゴマメなどを原料とするWin-Winと提携する国内企業が今後現れる可能性もある。Foovoが運営する英語サイトの閲覧傾向からも、あじかん・不二製油の代替カカオは英語圏で一定の関心を集めており、日本発の代替カカオが海外で採用される事例もでてくるかもしれない。

 

※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。

 

関連記事

出典:Martin Braun-Gruppe

 

関連記事

  1. 培養カカオを開発するCelleste Bioが約6.8億円を調達…
  2. カスタムメイドの代替砂糖を開発するイスラエルのSweet Bal…
  3. プラスチック使用削減のために食用スプーンを開発したIncrEDI…
  4. ビーガンハチミツのMeliBio創業者に聞く|精密発酵によるハチ…
  5. アボカドの芽の凍結保存に初めて成功|オーストラリアのクイーンズラ…
  6. フードテックの祭典Smart Kitchen Summit 20…
  7. チョコレート大手のBarry Callebaut、培養カカオに参…
  8. ミツバチを使わない「本物のハチミツ」を開発する米MeliBio

おすすめ記事

培養肉企業MeaTechがベルギーに培養脂肪のパイロット工場を建設することを発表

イスラエルの培養肉スタートアップMeaTechが培養脂肪のパイロット工場を建設予…

培養うなぎセミナー動画(北里大学・池田大介先生)|2023年9月開催

今月7日、培養うなぎの開発に取り組む北里大学海洋生命科学部の池田大介准教授にFo…

イスラエルのWilk、研究室でヒトラクトフェリンの生産に成功

イスラエルのスタートアップ企業Wilk(旧称Bio Milk)は今月、ヒトラクト…

再生医療学会・培養肉シンポジウムレポート|再生医療研究者が「培養肉」をテーマに集結

先月開催された第21回日本再生医療学会総会では初の試みとして、「培養肉開発の現状…

英Hoxton Farmsが住友商事と提携、日本を含むアジア市場への培養脂肪導入を目指す

出典:Hoxton Farms2025年4月1日更新豚の培養脂肪を開発する英Hoxton…

MeaTechの子会社Peace of Meat、培養肉の実証プラント建設を年内に開始

イスラエルの培養肉企業MeaTechは、子会社のPeace of Meatが新た…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

最新記事

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(09/21 15:58時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(09/22 02:18時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(09/22 05:58時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(09/21 21:57時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,980円(09/22 13:55時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(09/22 01:14時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP