出典:Plantible
米フードテック企業Plantible Foodsが先月、アメリカ、テキサス州エルドラドで商用生産施設の本格稼働を発表した。
アップグレードを経て正式に開設した「Ranchito(ランチート)」と呼ばれる100エーカー(約40万㎡)の施設では、年間数千トンのバイオマスを生産し、数百トンのタンパク質を供給できると見込まれている。動物タンパク質や合成原料の代替とすることで、年間約8,000トンの二酸化炭素排出量を削減できる可能性があるという。
米Plantible、ルビスコの商用生産施設を本格稼働

出典:Plantible
同社は植物性タンパク質「Rubi Protein」を起点に、世界の食料システムを根本から再構築することを目指し、Tony Martens氏とMaurits van de Ven氏により2018年に設立された。
「Rubi Protein」の主成分はルビスコというタンパク質。ルビスコとは、緑色の葉に含まれる光合成を行うタンパク質であり、地球上で最も豊富なタンパク質とされる。
ルビスコは、ケール、ほうれん草、アルファルファもやしなどに含まれており、Plantibleはウキクサ(lemna)に着目した。
同社によれば、ウォーター・レンティル(water lentils)としても知られるウキクサは水に浮かんだ状態で成長するが、栽培に必要な水が大豆の10分の1と少なく、2-3日で倍になるなど、成長の早い持続可能なタンパク質源だという。
タンパク質含有量は最大50%。バイオマスを収穫後、粉砕、ろ過、乾燥という工程でタンパク質を抽出し、最終的に無味でオフホワイトのタンパク質「Rubi Protein」が得られる。代替肉や代替乳製品から、焼き菓子、飲料などに使用できるとしている。
今回の施設拡張では、最先端のろ過設備を導入することで、生産コスト削減、スループットの向上につながったという。
FDAへのGRAS通知を完了、回答待ち

出典:Plantible
Plantibleは「Rubi Protein」をベースにメチルセルロースの代替となる「Rubi Prime」、ベーキング用途で卵の代替となる「Rubi Whisk」を開発しており、昨年にはこれを用いた植物性のメレンゲ、ケーキ、チョコレートアイスクリーム、マカロンの試作品をイベントで披露している(上記写真)。
同社は現在、アメリカで「Lemna leaf protein」という原材料名で、アメリカ食品医薬品局(FDA)のGRAS手続きを進めている。

出典:GRAS Inventory
GRN1160は会社側の申請により審査は中断され、GRN1256として再提出され、現在、FDAからの回答を待つ状態にある。
GRN1256によると、ベーキング製品やドリンク、粉末栄養ドリンク、パスタなどに最大5%の濃度で、原料、乳化剤、ゲル化剤、増粘剤として使用することを想定している。
現在の具体的な提供状況は不明だが、同社は食品メーカー向けのB2B原料に焦点をあてており、主要なクライアント企業にはICLが含まれている。今回の商用生産施設の稼働により、市場投入を加速していくものと思われる。

出典:Plantible
生産のスケールアップだけでなく、品種改良でも成果を出した。プレスリリースによれば、1エーカーあたりの「Rubi Protein」収量を増加させる独自品種の導入に成功した。さらに、35種のウキクサ科植物と1000種以上の株を保有しており、地域の気候に適した株を特定することも可能だという。
現在、生産能力を3倍に増やすため、追加資金の調達に取り組んでいる。
代替肉で有名な米インポッシブル・フーズも初期に注目しながら、採用を断念した経緯のあるルビスコの商用生産が、現実のものとなろうとしている。
先日にはニュージーランドのLeaft Foodsが、ルビスコを配合した消費者向けドリンク「Leaft Blade」をアメリカ・ニュージーランドで販売を開始した。Leaft Foodsは消費者向けの最終製品だけでなく、業務用にB2B提供も開始しており、Plantibleも含め、ルビスコを用いた代替食品が市場にどのように流通、浸透していくか注目したい。
※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
関連記事
アイキャッチ画像の出典:Plantible