出典:Enifer(Iiro Rautiainen氏撮影)
フィンランドのマイコプロテイン企業Eniferは今月10日、自社のマイコプロテイン「PEKILO」についてアメリカでGRAS自己認証を取得したと発表した。
同社の食品研究開発部長を務めるElisa Arte氏は、「アメリカの食品メーカーとの協業を開始し、消化率の高いタンパク質と食物繊維を豊富に含む当社原料を市場に導入できることを嬉しく思います」とプレスリリースで述べた。
Eniferは欧州、イギリス、シンガポールで新規食品申請を進めている。現在、欧州当局によるリスク評価期限は2027年4月27日とされている。今回の発表により、海外での食品用途での上市に向けて、まずアメリカにおける足がかりを得たことになる。

出典:Enifer
プレスリリースによれば、PEKILOは、湿った状態や冷凍状態で販売されるマイコプロテインとは異なり、小麦粉のように出荷・保管できる常温保存可能な乾燥した粉末状となる。この形態により輸送時の重量負荷や冷蔵コストを抑えられるほか、消化率82%のタンパク質を最大50%、食物繊維31g/100g、さらにβ-グルカン20g/100gを含むなど、栄養価が高いことも特徴だ。
PEKILOはかつて亜硫酸パルプ廃液を原料に年間8,000トン規模で商業生産されたマイコプロテインだが、産業構造の変化で当時の事業は終了した。その後、2020年に設立されたEniferが、Paecilomyces variotii KCL-24を用いて復活に取り組んでいる。

PEKILOを試食(Foovo佐藤撮影) 2024年8月下旬 フィンランドにて
Foovoは昨年、フィンランドで食品用途のPEKILOを実際に試す機会を得たが、Eniferが述べるとおり、色も匂いもニュートラルで、ほぼ無味の粉末だった。
同社でLaboratory Officerを務める林小百合氏は、パスタの小麦粉の15%をPEKILOに置き換えることで、タンパク質を14.5gから21gに、食物繊維を0gから9gに引き上げることができるとFoovoのセミナーで発表した。

欧州での申請状況 出典:Open EFSA
今回のGRAS自己認証により、無味無臭で栄養価の高い粉末状のマイコプロテインPEKILOがアメリカで、どのように市場投入されていくか注目が集まる。
ただし、アメリカではGRAS自己認証廃止に向けて今月、FDAへのGRAS通知を義務付ける規制案がアジェンダに追加されており、先行きが不透明な状況にある。Eniferはプレスリリースで、アメリカの食品メーカーの信頼を一段と高めるため、FDA審査に向けたGRAS通知の提出準備を進めていることに言及している。
EniferがGRAS通知後にFDAから「質問なし」のレターを受領するまでは時間を要することが予想されるが、実際にGRAS自己認証が廃止されても経過措置が講じられるのであれば、同社が規制変更の影響を大きく受けることなく、アメリカで販売を継続できる可能性がある。
フィンランドでは既存の製糖工場の建物を再利用した年産最大3,000トンの工場を建設しており、2026年に生産開始を計画している。EniferはPEKILOの用途として食品、ペットフード、水産飼料の3分野を挙げており、フィンランドの工場稼働後はまずペットフード用途での提供を目指しているとプレスリリースで述べた。
米国で広がるマイコプロテインの認可
最後に、アメリカにおけるマイコプロテイン企業の認可状況を下記にまとめた。
EniferのGRAS自己認証により、Foovoの調査では11社がアメリカで販売可能な状況となった。代替肉やヨーグルト、パスタ、ケーキなど、幅広い食品で試作検証を行っているPEKILOが、今後どのように既存他社との差別化を進めていくか注目される。
関連記事
アイキャッチ画像の出典:Enifer(Iiro Rautiainen氏撮影)