出典:BlueNalu
英国食品基準庁(FSA)は12月5日、スコットランド食品基準庁(FSS)と共同で、細胞培養食品(cell-cultivated products/以下、「細胞性食品」)に関する初の安全性ガイダンスを発表した。
本ガイダンスは、2025年2月に始動したサンドボックス・プログラムによるもので、規制ガイダンスおよび補足的技術ガイダンスの第一弾が発表された。
細胞性食品は「動物由来製品」に分類、「肉」の法的定義に含めず

出典:FSA
FSAは規制ガイダンスと位置付ける「分類とHACCP原則に関するガイダンス」で、動物細胞由来の細胞性食品を、衛生規則上は「動物由来製品(Products of Animal Origin:POAO)」として取り扱う方針を示した。
一方で、「肉(meat)」の法的定義には含めないとし、動物の存在を前提とする一部の規制については、容易には適用されないとしている。

出典:FSA
POAO分類により、企業側が準拠すべき関連規則が整理された形となる(URLの表)。FSAは今後、衛生分野に関連したその他ガイダンスも公開する予定としている。
計6テーマの補足的技術ガイダンスを公表予定

出典:FSA
補足的技術ガイダンスの第一弾として公開された「アレルゲン性と栄養(Allergenicity and Nutrition)」は、新規食品申請に際し、当該新規食品が代替対象となる食品と比較して、栄養面で不利にならないことを示す必要性が明記された。申請者は、成分データ、栄養素のバイオアベイラビリティ(生物学的利用能)、意図される使用条件での予想摂取量の評価などのエビデンスを提出することが求められる。
当局はこのほか、細胞性食品向けの補足的技術ガイダンスをさらに5テーマ公開するとしている。

Foovo作成
細胞同一性(cell identity)/生産(production)/微生物(microbiology)/毒性(toxicology)/培地組成(growth media composition)に関する各ガイダンスは現在作成中で、2026年中に公開する計画だという。
今回のアレルゲン性・栄養ガイダンスでは、対象を「肉、魚介類、脂肪、内臓、受精卵など、動物細胞を培養して作られる食品」と定義しており、植物細胞由来の食品は含まれていない。
FSAのプレスリリースでは、cell-cultivated products(細胞培養食品)を「植物や動物から細胞を採取し、それを培養して食品にしたもの」と定義しつつ、サンドボックス・プログラムにおいてはあくまで「動物細胞」のみを対象とすると明記している。したがって、細胞性カカオなど植物細胞を用いた食品に対しては、今回の文書をそのまま適用することは想定されていないと理解できる。
このガイダンス群は、FSAとFSSが産業界やアカデミアと進める「サンドボックス・プログラム」の成果として位置づけられる。2025年2月に開始され、2027年2月までの期間にわたり、企業と規制当局が並走しながら、想定すべきハザードや、必要なデータの水準を具体化していく枠組みとなる。
このプログラムでは、2年間で2件の細胞性食品について安全性評価を完了させることが約束されている。
なお、北アイルランドでの新規食品プロセスは、EU規則および欧州委員会のプロセスに従うこととなる。
日本でもルール形成進む

Foovo(佐藤あゆみ)撮影
欧州で販売認可が下りた細胞性食品は、イギリスにおける細胞性ペットフード企業Meatlyの事例に限られる(EUではなく英当局による認可事例)。
イギリスと同様に非EU圏のスイスではモサミート、アレフ・ファームズ、Gourmey(現PARIMA)に加え、細胞性サーモンの申請も行われている。公開された情報では、EUで申請を提出した細胞性食品企業はGourmey(現PARIMA)、モサミートの二社となる。
日本でも細胞性食品のガイドライン整備に向けた議論が進んでいる。
消費者庁は2024年11月に食品衛生基準審議会・新開発食品調査部会で議題を開始した。細胞性食品に関しては5回の部会が開催され、適用範囲や安全性確保の手続きについても議論が進んでいる。
食品衛生基準審査課・新開発食品保健対策室のフードテック専門官・杉山真麻子氏は先月都内で開催された国際会議で、ガイドライン作成に「何年もかけるつもりはない」と述べた。国内においても、ガイドライン整備が現実味を帯びつつある。
※本記事は、プレスリリースおよび規制ガイダンス・技術ガイダンスをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
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アイキャッチ画像の出典:BlueNalu




















































