代替プロテイン

米Harmony Baby Nutritionがブラジル政府から約9.2億円を調達|アレルギー対応粉ミルクから先行上市へ、精密発酵は次の一手

出典:Harmony Baby Nutrition

アレルギーに対応した粉ミルク製品と、精密発酵による母乳成分の開発に取り組む米フードテック企業Harmony Baby Nutritionは先月、ブラジル国立経済社会開発銀行(BNDES)およびイノベーションに公的投資を行うFinepの共同公募プログラムの枠組みで、590万ドル(約9億2,000万円)の資金を獲得した

アレルギー対応粉ミルクから先行投入、精密発酵は長期計画

Wendel Afonso氏(左) 出典:Harmony Baby Nutrition

同社は、既存の粉ミルクにアレルギーを持つ乳幼児が全体の約20%に上り、毎年多くの家庭が代替品を模索する現状を受け、乳幼児に十分かつ優れた栄養を届けるために、薬剤師であり起業家のWendel Afonso氏が2018年に設立した。Afonso氏自身も、アレルギーのある自身の子供の授乳に苦労した当事者である

Green queen報道によると、長期的には精密発酵によるラクトフェリンなどの母乳成分の開発を目指す一方で、短期的には精密発酵技術を使用しないアレルギー対応粉ミルク製品「Melodi」からの市場投入を目指している。

現在、「Melodi」の上市に向けてWefunderで資金調達を進めており、本記事執筆時点で約23万ドル(約3,600万円)を集めている。

「これ(アレルギーに対応した粉ミルク市場)は小さなニッチ市場ではありません。世界的に大きな市場でありながら、十分なサービスが提供できていないのです。これほど大きな需要があるにも関わらず、アレルギー対応製品は乳児栄養において最も見過ごされている分野です」とHarmony Baby Nutritionは指摘する。

出典:Harmony Baby Nutrition

同社は現在、アレルギーのある幼児(Toddler)を対象に、母乳成分から着想を得たアレルギー対応粉ミルク製品「Melodi」から市場投入を目指している。「Melodi」は母乳にある成分と似た成分を約50%使用し、従来のアレルギー対応製品ではそれが3%未満にとどまるという

具体的には乳糖や、臨床的に安全性が確認されたプロテインブレンド、2′-フコシルラクトース(2FL)とラクト-N-テトラオース(LNnT)などのヒトミルクオリゴ糖(HMO)を配合。これまでに50以上の試作品を試験し、4件の特許を出願した

「Melodi」は自社のD2Cサイトでの発売を計画している。一部の小売店での展開も視野いれている「Melodi」で先行投入を進めながら、精密発酵由来の母乳成分への移行を図っていく考えだ。

背景には、精密発酵による母乳成分は規制対応のハードルが高く、市場投入までの道のりが長いことが考えられる。非組み換え製品を先行して上市することで、資金・販路・認知度・市場でのポジションなど、事業継続の土台を築く狙いがあると思われる。

Green queenのインタビューでは、ラクトフェリンから着手し、α-ラクトアルブミン、ヒトカゼイン、ヒトアルブミンなどの開発に取り組む計画を語っている

Harmony Baby Nutritionは今回調達した資金で、2026年前半にブラジル・ベロオリゾンテで研究開発センターの立ち上げを開始し、母乳に着想を得た粉ミルクの幅広い開発を進める計画だ。精密発酵タンパク質については、自社製造ではなく、既存のメーカーや原料サプライヤーと提携して製造する計画を同メディアに明らかにしている

精密発酵ラクトフェリンでも異なる入り口戦略

出典:Harmony Baby Nutrition

Harmony Baby Nutrition以外にも、母乳成分を精密発酵で開発する企業は複数あるが、各社で市場戦略は異なり、同社のように、アレルギーのある幼児を対象に非組み換え製品から市場参入を目指す動きは少ない

昨年、アメリカで精密発酵ウシラクトフェリンのGRAS認証を取得したTurtleTreeの場合は、パートナー企業のコーヒー自社D2Cのサプリメントなどから上市を進めている。ヒトラクトフェリンのHelainaも、プロテイン粉末やサプリメントなどの製品に配合される形で上市を進めている

Harmony Baby Nutritionは最初から乳幼児のアレルギー課題への対応を第一に据えており、希少なラクトフェリンの普及拡大を目指すTurtleTreeやHelainaとは異なる戦略を採用していることがうかがえる。精密発酵による母乳成分開発は長い道のりとなるため、「Melodi」を先行販売後、子育て世代の受容やリピートをどこまで獲得できるかが注目される。

 

※本記事は、WeFunderの資金調達ページおよびGreen queenの報道をもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。各所の出典については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Harmony Baby Nutrition

 

関連記事

  1. 米NovoNutrients、牛タンパク質と同品質のCO2由来タ…
  2. 微生物でタンパク質を作るNature’s Fyndが約46億円を…
  3. ブラジル初の培養脂肪企業Cellva Ingredientsが約…
  4. 米培養肉企業New Age Eatsが閉鎖を発表「投資を呼び込め…
  5. 菌類タンパク質の業界団体「菌類タンパク質協会(FPA)」が発足
  6. イスラエルのBELIEVER Meats、アメリカで世界最大の培…
  7. 米培養肉Upside Foods、カリフォルニアに培養肉工場を開…
  8. 精密発酵で代替パーム油を開発するC16 Biosciencesが…

おすすめ記事

ソーラーフーズ、CO2由来の微生物タンパク質「ソレイン」で米国GRAS自己認証を取得

フィンランドのソーラーフーズ(Solar Foods)が、二酸化炭素を原料とした…

培養肉企業モサミートがシリーズBを約89億円でクローズ

オランダの培養肉スタートアップ企業モサミート(Mosa Meat)が新たに100…

バイオ3Dプリンティング技術で培養肉を開発するTissenBioFarmが約2.2億円を調達

韓国の培養肉スタートアップTissenBioFarmは先月、シリーズAラウンドで…

米MeliBioが欧州進出を拡大、植物性ハチミツをスイスとオーストリアで発売

米MeliBioが開発した植物性のビーガンハチミツが、イギリスでの発売に続き、ス…

東京大学、1125本を使用した中空糸バイオリアクターで厚みのある11gの培養鶏肉生成に成功

培養肉を開発する東京大学の竹内昌治教授らの研究グループは、内部が空洞になった中空…

カゴメとNoMy Japan、マイコプロテイン活用の共同検証を開始

出典:NoMy Japanカゴメがマイコプロテイン活用の共同検証を開始した。マイコプロテ…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

代替カカオレポート販売開始のお知らせ

最新記事

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP