代替プロテイン

JBAなどバイオ3団体、日本成長戦略に提言|フードテックで省庁横断体制とルール整備を求める

Foovo(佐藤あゆみ)撮影 記者会見にて

政府は昨年11月、日本成長戦略本部を設置し、17の戦略分野に「フードテック」「合成生物学・バイオ」「創薬・先端医療」を盛り込んだ。昨年末に各分野の検討体制が固まり、今年夏に成長戦略を取りまとめる方針だ

バイオインダストリー協会JBA)、日本バイオ産業人会議JABEX)、Greater Tokyo BiocommunityGTB)は2026年3月3日、日本成長戦略の検討課題に向けた提言を関係省庁へ提出した

三者は2024年4月、バイオ戦略見直しに向けて提出した提言の中で、「フードテック」を国家戦略として位置づけるよう求めていた。その後、政府の成長戦略に「フードテック」などバイオ関連分野が盛り込まれたことを受けて、多くの関連企業にヒアリングを実施。

今回、ヒアリングをもとに、現場の課題や国際競争力強化に必要な具体策を盛り込んだ新たな提言を関係省庁へ提出した。

提言は、危機管理投資・成長投資の17の戦略分野では「合成生物学・バイオ」「フードテック」「創薬・先端医療」の3分野、8つの分野横断的課題では「人材育成」「スタートアップ」の2分野に焦点をあてている。

政府が指定した17の戦略分野 Foovo作成

一般に「フードテック」には代替タンパク質(プラントベース食品や培養肉、バイオマス発酵食品、精密発酵食品など)から、フードロボット・3Dプリンターを用いた食品開発、植物工場、アップサイクル、代替カカオ・コーヒーなどが含まれる。本提言ではバイオものづくり技術を用いる食品開発に焦点をあてる。

細胞培養で開発する培養肉など細胞性食品では、細胞農業研究機構(JACA)が提言を提出後、消費者庁によるガイドライン作成に向けた議論が開始され、先月にはガイドライン骨子案が提示されるなど、議論が進む

一方、遺伝子組換え微生物を用いて特定成分を生成する精密発酵技術による食品開発については、遺伝子組換え微生物を利用した食品高度精製添加物に関する既存制度に包含される部分はあるものの、現時点では、細胞性食品のような形で議論されているとは言い難い状況にある。

フードテック分野の提言では、バイオものづくり技術を用いた食品分野が、経済産業省・農林水産省・厚生労働省などの複数省庁の管轄下に置かれている現状が国際競争の障壁になっているとし、「府省横断のワンストップ推進体制」の構築を求めた。

また、「ルール整備は、国内産業の自律性を確保するための生命線であり、民間企業が安心して研究開発に投資するための大前提」だとし、安全性審査基準の明確化や、ライフサイクルアセスメントLCAの標準化表示ルールの整備を急ぐべきだとした。

Foovo(佐藤あゆみ)撮影

また、合成生物学・バイオ分野では需要創出に課題があると指摘。バイオ由来製品は依然として石油由来製品との価格差が大きく、需要拡大の壁となっている。

提言では、需要喚起のために国や自治体による優先的調達を推進するほか、官主導による仕組みの国際標準化を通じて価格差縮小を図るなど、需要の創出に向けて「国による規制の整備・強制力のある推進策等が非常に重要」だと訴えた。また、遺伝子組換え規制に対応可能な大型バイオリアクターのあるCMO/CDMO拠点の整備支援は「死活的に重要だ」とした。

資金面では、スタートアップを中心としたリスクマネー不足も課題だ。

JABEX世話人代表の永山治氏は、成長戦略の17分野はスタートアップ依存度が高い一方、アーリーステージに十分なリスクマネーが流れていないと指摘。ディープテック分野では成果が出るまで10年以上を要するケースも多く、国の資金をより厚く入れるべきだとの考えを示した。

前回の提言は、2019年策定のバイオ戦略の見直しに合わせ、必要な項目を反映させることが主な狙いだった。今回の提言ではさらに踏み込み、海外投資や研究、人材を呼び込める世界水準の「バイオクラスター」整備の必要性を訴えた

現在、国内には8箇所のバイオコミュニティが活動しているが、2025年度の予算は総額1億2,000万円程度で、これらをバイオクラスターへ昇華させるには「圧倒的に資金が足りない」という。

JABEX事務局長の塚本芳昭氏はフランス・イギリスの都市型バイオクラスターなど海外事例を挙げ、特に創薬・先端医療においては「産学官が連携し、新しい芽を継続的に出す構造として、世界に勝てる集積の場であるグローバルバイオクラスターを整備するべきだ」と強調。東京や大阪でのバイオクラスター構想にも言及した。

政府は、リスクや社会課題に対し、官民連携の戦略的投資により先手を打って供給力を根本から強化する必要性から、日本成長戦略本部を設置した

気候変動や地政学的緊張の高まりを背景に、食品・バイオ製品・医薬品の安定供給を支えるサプライチェーンの強靭化は喫緊の課題となっている。フードテックを含むバイオ産業は、こうした社会課題への対応と経済成長を両立し得る分野であり、今回の提言が成長戦略にどこまで具体策として反映されるかが注目される。

 

提言本文はこちら概要版はこちら

 

関連記事

アイキャッチ画像はFoovo(佐藤あゆみ)撮影

 

関連記事

  1. 中国発の培養肉企業CellXが資金調達、2021年に試作品発表へ…
  2. 培養肉企業メンフィス・ミーツが社名をUPSIDE Foodsに変…
  3. 英Meatlyがイギリスで培養ペットフードの販売認可を取得、年内…
  4. 培養肉はまず「ハイブリッド」から、価値は肉以外へ拡張|GFI E…
  5. 細胞性魚脂肪のImpacFatが日本に拠点設置|2026年に化粧…
  6. 代替エビを開発するNew Wave Foodsが約18億円を調達…
  7. 【世界初】Shiok Meatsが試食会で培養カニ肉料理を発表
  8. 6つの豆タンパク質から代替魚を開発する米Good Catch、カ…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

おすすめ記事

精密発酵で卵白タンパク質を開発するOnego Bio、米国進出に向けて約61億円を調達

フィンランド・アメリカに拠点を置くOnego Bioは今月、精密発酵による卵白タ…

仏Bon Vivantが精密発酵ホエイでGRAS自己認証を取得|アメリカ認証状況を時系列で振り返る

フランスの精密発酵企業Bon Vivant(現Verley)は今月、精密発酵で生…

スピルリナ由来の代替スモークサーモンを開発するSimpliiGood

2024年8月13日修正・追記スピルリナを活用して代替タンパク質を開発す…

細胞農業によるキャビア製造でGeneus Biotechがヴァーヘニンゲン大学と研究提携

細胞農業企業の多くが牛肉や鶏肉、チーズなどの製造に力を注ぐ中、高級食材であるキャ…

ネスレがFuture Meatと協業して培養肉参入に向けて準備

ネスレが培養肉事業に参入する準備を進めている。ネスレが培養肉と植物肉をブ…

培養牛肉を開発する米SCiFi Foodsが資金調達難で事業を停止

培養牛肉を開発する米SCiFi Foodsが今月、資金調達難から事業を停止したこ…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovoセミナー開催のお知らせ

最新記事

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP