精密発酵でアニマルフリーなチーズを開発するChange Foodsが、シードラウンドで210万ドル(約2億3200万円)を調達した。
このラウンドには、Plug and Play Ventures、Clear Current Capital、Canaccord Genuity、Better Bite Ventures、GoogleのAI部門責任者であるJeff Dean氏などが参加した。
これは昨年のプレシード(約9100万円)に続くもので、今回の調達で、Change Foodsの調達総額は310万ドルとなる。
Change Foodsは2019年にDavid Bucca氏が設立したスタートアップ。
米国(カリフォルニア)とオーストラリア(メルボルン)を拠点とする。
同社は動物の代わりに、微生物を使う精密発酵という技術によって、動物はもちろんのこと、抗生物質やホルモン剤を使わずに本物そっくりのチーズを作り出している。
牛を飼育し、乳製品ができるまで、牛を飼育するための飼料、(牛の飼育と飼料栽培用の)土地、水、エネルギーが必要となる。
これに対し、精密発酵で作られる乳製品は、生産プロセスで排出される温室効果ガスを85%~97%、水の消費量を98%、二酸化炭素排出量を84%削減できる。
牛から牛乳を生産するのに2、3年かかるのに比べて、わずか数週間で生産できる「時短」というメリットもある。
Change Foodsの製法は、まず酵母などの微生物に、乳タンパク質を作る遺伝子を組み込む。これらの微生物を発酵槽にいれ、栄養を与えて発酵させる。
発酵の過程で、微生物からは本物と同じ乳タンパク質が分泌されるので、分泌されたタンパク質をろ過し、微生物を最終産物から除去すると、チーズ、ヨーグルト、アイスクリームなどの元になる乳タンパク質濃縮物となる。
つまり、微生物を「作り手」として活用している。このような精密発酵の有名な事例には、1970年代に開発されたインスリンがある。
Change Foodsが乳製品のなかでもチーズから開発するのは、現在、市販化されている代替チーズには本物に匹敵するものがなく、最も植物ベースに切り替えにくい動物製品がチーズであるため。
同社は、2023年にB2C戦略による市販化を目指している。
「チーズは二酸化炭素排出量の点で赤肉に次ぐものです。(略)
植物ベースのチーズは、特に伸びと溶解性については、動物性チーズと味と性能の面でギャップがあります。これが、私たちが妥協なきチーズ作りに着手する理由です。
動物の代わりに微生物の力を利用して、味や食感が動物ベースの製品と見分けがつかない乳製品を作り、よりサステイナブルで、より良い製品を提供します」。
Change Foodsのように精密発酵でアニマルフリーな乳製品開発に取り組む企業は増えている。
代表格であるパーフェクトデイのほか、イスラエルのRemilk、Imagindairy、イギリスのBetter Dairy、ドイツのFormo、アメリカのNew Cultureなど、微生物を活用して代替タンパク質を開発する企業の半数以上はこの2年に登場している(下グラフ)。
市販化のフェーズに到達しているのはパーフェクトデイのみとなるが、精密発酵により2030年までにアメリカの乳牛数は半減するという予想もあり、競争の激化が予想される分野である。
Change Foodsは今回調達した資金で、サンフランシスコでの拡大を促進し、研究開発を進め、2023年までに最初の製品を販売する。
Green queenの報道によると、今年後半には新たな資金調達ラウンドを計画しているという。
参考記事
Change Foods Raises US$2.1M Seed Funding To Fuel Bay Area Expansion & Animal-Free Cheese R&D
Animal-Free Dairy Startup Change Foods Closes $2.1M Seed Round
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アイキャッチ画像の出典:Change Foods