代替プロテイン

代替マグロの米Kuleanaが販路拡大、オンラインストアでの販売を開始

 

サンフランシスコを拠点に代替マグロを開発するKuleanaの製品が、オンラインでも購入できるようになった。

これまでKuleanaの代替マグロはアメリカの一部のレストラン、小売で販売されていたが、アメリカのビーガン専門オンラインストアGTFO It’s Veganでの販売をスタートする。

100%ビーガンな代替マグロを開発するKuleana

出典:Kuleana

Kuleanaは藻類、大根、麹、えんどう豆などを原料に、100%ビーガンな代替マグロを開発するアメリカ企業。

寿司のネタとされる太平洋クロマグロは絶滅危惧種とされていたが、今年のレッドリスト最新版で「準絶滅危惧種」に引き下げられた。持続可能な漁業の取り組みの成果といえるが、「国際自然保護連合」(IUCN)によると、クロマグロの「深刻な資源枯渇の状況は続いている」。

Kuleanaのように魚を使わない代替魚は、限られた海洋資源の保護につながるだけでなく、水銀汚染、プラスチック汚染、混獲、燃料による温室効果ガス排出など、漁業を取り巻く多くの課題を回避できるため、参入するスタートアップ企業が急増している。

出典:Kuleana

Kuleanaが2年かけて開発した代替マグロは、味、食感、口当たりで妥協せず、オメガ-3 DHA、鉄、ビタミンB12など栄養素を豊富に含んでいる。

代替マグロは同社の最初の製品となり、ロサンゼルスのスーパーマーケット、アメリカにあるファーストレストランPoké Bar、寿司レストランBlue Sushi Sake Grill、そして今回追加されたオンラインストアGTFO It’s Veganで販売されている。

「私たちは環境に影響を及ぼすことのない、次世代シーフードを提供しています」(共同創業者兼CEOのJacek Prus氏)

Kuleanaの代替マグロは魚資源の保護になるだけでなく、冷蔵で7日間、冷凍で12ヵ月保管でき、食品廃棄物の削減にも役立つ。同社は「環境と倫理に影響を与えない次世代シーフードを提供する」という使命のもと、Y-Combinatorなどから支援を受けて2019年に設立された。

Kuleanaは、今年のTIME誌が選ぶ「100 Best Inventions of 2021(ベスト発明100社)」に代替ハチミツのMeliBio、培養肉のUpside Foodsと共に選出された。

高まる代替シーフードへの投資

出典:GFI

植物ベース、細胞ベース、発酵ベースの代替品を開発する代替シーフード企業は、2021年上半期の時点で1億1,600万ドル(約132億円)を調達した。

これは2020年の合計額をさらに2600万ドル(約29億円)上回る額となり、今年上半期の投資額が前年を超えた。

代替シーフードを開発する企業の中には、Kuleanaのように寿司にできる切り身を開発するプレーヤーが増えている

細胞培養のサーモンを開発する米WildType、微生物発酵でマグロやホタテ、白見魚を開発するAqua Cultured Foods、マグロ・うなぎを開発するOcean Hugger Foods、培養魚・植物魚を両方手掛けるFinless Foodsなどが登場している。

Kuleanaは今回オンラインストアでの販路を獲得したことで、代替刺身を開発する上記企業より市場参入では先行するが、代替シーフード市場の競争が激化するのは間違いない。

 

参考記事

Kuleana Plant-Based Tuna Now Available at GTFO It’s Vegan

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Kuleana

 

関連記事

  1. ブラジルの精密発酵企業Future Cow、約1.2億円を調達─…
  2. 中国Dicosが米イート・ジャストの代替卵をメニューに追加、50…
  3. スイス初の培養肉企業Mirai Foodsが初の資金調達、培養肉…
  4. 精密発酵:8ヵ月にわたる企業・政府動向の全記録【Foovo独自調…
  5. 培養肉企業フューチャーミートが約394億円を調達、生産コストを1…
  6. オランダのモサミート、培養牛脂でEU初の新規食品申請を提出
  7. オランダで世界初の細胞性食肉農場の建設に向けてCRAFTコンソー…
  8. 食肉大手JBSが培養肉に参入、培養肉企業BioTech Food…

おすすめ記事

「代替タンパク質大国」を目指すイスラエルの今をクローズアップ-2022年2月-|市場動向・新規スタートアップ企業・研究者・政府の動き

イスラエルの代替タンパク質企業は100社以上に上り、うち40%がブレイクスルー技…

培養肉など細胞性食品のガイドライン議論が国内で進展──昨年11月の検討開始から制度設計の骨格が見え始める【国際会議レポート】

会場の様子(別セッションの様子) Foovo(佐藤あゆみ)撮影2025年11月19日追記(事業者…

仏Nutriearth、ミールワーム由来ビタミンD3の商用工場をフランスで開設|輸入依存からの脱却へ

出典:Nutriearth2025年11月4日更新フランスのNutriearthは先月2…

パーフェクトデイの精密発酵由来の乳タンパク質を使った牛乳が今夏、ついに市販化

今夏、精密発酵で作られたアニマルフリーな牛乳がアメリカで発売される。世界…

中国代替肉企業Hey MaetがプレシリーズAで数百万ドルを資金調達

コロナ後に誕生した中国発の代替肉スタートアップ企業Hey Maetが再び資金調達…

微生物を活用してアニマルフリーなチーズを開発するFormo、年内に試食会を実施

ベルリンを拠点とするスタートアップFormoは微生物を使ってアニマルフリーなチー…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

精密発酵ミニレポート発売のお知らせ

最新記事

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(12/03 16:20時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(12/04 03:01時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(12/04 06:34時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(12/03 22:22時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(12/04 14:21時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(12/04 01:40時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP