水産資源の枯渇が懸念される中、カリフォルニア州サンマテオに新たな代替シーフード企業が登場した。
カリフォルニア大学バークレー校に所属するKelly Pan氏、Stephanie Claudino Daffara氏、Adrian Miranda氏によって共同で設立されたImpact Foodは、年内にアメリカで、植物性マグロを販売することを計画している。
カリフォルニア大学バークレー校の学生が設立
Impact Foodは植物のタンパク質・デンプン、藻類を組み合わせることで、マグロのゲル状の食感を再現した。
商品開発を担当するMiranda氏によると、「特定の植物のでんぷん・タンパク質には、生のシーフード製品のゼリーのような質感を再現できる、安定したゲルを形成する能力があること」を見出したという。
同社独自の成分・技術を活用することで、マグロの食感・味だけでなく、栄養プロファイルも本物に近づけることができた。
クロマグロは100グラム中タンパク質を26グラム含む。代替マグロの開発で難しいことは、本物に匹敵するタンパク質含有レベルを満たすことだという。
しかし、消費者の多くは、タンパク質源としてマグロなどの刺身を求めるのではなく、刺身を食べる食体験そのものや食感を重視しているとパン氏は考える。そのため、Impact Foodは味を優先しつつ、タンパク質含有量の強化も図っている。
本物のマグロに栄養価ではまだ及ばないものの、Impact Foodの代替マグロには本物のマグロに優るメリットがある。植物成分で作られた代替魚であれば、水銀、マイクロプラスチックなど汚染物質を含有するリスクはゼロだ。
クロマグロは初期個体数の3%未満に減少
現在、世界の魚資源の80%以上が完全に利用または乱獲されていると推定される。特に、太平洋のクロマグロは乱獲により、初期個体数の3%未満にまで減少している。
中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)および全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)は2017年に、2034年までに初期個体数の20%まで回復させることで合意した。これは現在のレベルの7倍となる。
一方、世界人口とシーフード需要の増加により、2030年までにさらに2800万トンのシーフード生産が必要になると予想される。
Pan氏は海外メディアのインタビューに対し「現在の動物に依存した食料システムは、環境、動物、人間にとってサステイナブルではありません。特に、乱獲によって生物多様性が喪失し、水産資源が枯渇しています。プラントベースの選択肢をつくるために、今こそ行動に起こす必要があります」と述べている。
今月に資金調達を予定
Impact Foodは現在、カリフォルニア州ベイエリアにあるレストランやフードサービスとの提携を模索している。年内にレストランで販売し、消費者と市場の反応を確認したい考えだ。その後は、小売の冷凍食品コーナーで販売することを計画している。
事業を拡大するため、同社は今月に初の資金調達ラウンドをクローズする予定だという。代替マグロの大量生産を実現した後は、カニやサーモンなどほかの代替シーフード製品の開発も予定している。
代替シーフード企業が相次いで登場
代替シーフードは代替肉と比べて、市場規模はまだ小さいものの、急速に成長している。近年、フレーク状の刻まれた製品から、切り身タイプの製品へと、開発製品の差別化がみられる。
あづまフーズは、コンニャクをベースとしたマグロ・サーモンの代替魚製品「Green Surf」を自社オンラインストアで販売している。
海外ではアメリカのCurrent Foods(旧称Kuleana)、スペインのMimic Seafood、イスラエルのPlantishなど、切り身タイプの代替品を開発するプレーヤーが登場している。
植物成分だけでなく、微生物発酵、細胞培養による製品開発も進む。
バイオマス発酵により白身魚、マグロの切り身を開発するAqua Cultured Foodsは昨年、スイスのミグロスと締結、年内の市販化を目指している。
細胞培養によるサーモンを開発するWildTypeは大衆向けレストランと提携を発表、アメリカでの培養魚市販化も間近だ。培養魚のブルーナルは先月、日本市場向けの製品開発でスシローを運営するフード&ライフカンパニーズと提携した。
イスラエルでは2021年に新たに培養魚企業が4社登場したことからも、代替肉に続く成長分野として代替シーフードの世界的な競争が始まっている。
参考記事
Can plant-based seafood replace the real thing? Startup Impact Food thinks so
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アイキャッチ画像の出典:Impact Food