代替プロテイン

米ビヨンドミート、植物ステーキ肉の年内発売を計画

 

植物肉を展開する米ビヨンドミートが今年後半に植物由来ステーキ肉の発売を予定していることが明らかになった。同社は植物ステーキ肉をまず小売店に導入し、次いでレストランへ提供する計画のようだ。

ビヨンドミートの売上はこの1年減少しており、植物ステーキ肉の上市が功を奏すか注目される。

ビヨンドミート、植物ステーキ肉の発売計画を発表

出典:Beyond Meat

ビヨンドミートの決算報告によると、2022年第1四半期の純売上高は約1億950万ドルと、前年比1.2%の増加となった。これに対し、売上総利益は19万ドルと、2021年同時期の3270万ドルと比べ大幅に減少している。

株価は過去1年間、一貫して下落しており、植物ステーキ肉開発の背景には、経済的な低迷を打開する狙いがあると考えられる

Good Food Instituteのレポートによると、アメリカの植物由来製品の小売売上高は、2021年は前年比6%の74億ドルを記録した。

出典:GFI

この中で、植物卵、植物チーズ、植物バターなど、卵・乳製品は動物由来食品に対して急速な成長をとげているのに対し、植物肉は植物由来製品のなかで唯一、横ばい状況となっている。

ビヨンドミートの売上低迷の背景には、アメリカの植物肉市場の成長が鈍化していること、参入企業の増加による競争過熱も考えられるが、主な原因は今年3月に発売したビヨンドジャーキーの製造コストにあるようだ。

売上低迷の主因はビヨンドジャーキー

出典:Beyond Meat

前述のとおり、ビヨンドミートの2022年第1四半期の売上総利益は純売上高の0.2%だが、前年同期は30.2%だった。

これについてビヨンドミートは、第1四半期の業績にはビヨンドミートジャーキーの発売が含まれていることを指摘したうえで、ビヨンドジャーキーの製造には、複雑で高コストな製造プロセスが使用されていることを報告している。ビヨンドジャーキーはペプシコとの合弁会社Planet Partnershipから最初に発売された製品だ。

ビヨンドミートはビヨンドジャーキーの製造コストについて、プロセスの最適化によって今年下半期から「大幅に緩和される」としており、同製品の製造に必要な投資が売上総利益の落ち込みを招いたようだ。

黎明期にある代替ステーキ肉市場

出典:Beyond Meat

ビヨンドミートのこれまでの製品は、バーガーミートボール、ソーセージ、チキンナゲットなど、ミンチ肉や加工肉だった。これに対し、年内に発売予定の植物ステーキ肉は肉全体を複製するようにデザインされるという。

ビヨンドミート創業者兼CEOのイーサン・ブラウン氏は植物ステーキ肉の原料や製法について詳細は明らかにしていないが、「これまででおそらく最高の製品の1つになる」と自信を見せる。

本物のステーキ肉に食感、味を近づけた代替ステーキ肉を消費者に提供できれば、ビヨンドミートにとって低迷する売上を向上させるきっかけになるかもしれない。しかし、ブロック肉の外観、食感、口当たりを備えた代替ステーキ肉の製造には、追加の投資が必要になる可能性もある。

厚みのある植物ステーキ肉の再現は、代替肉の中でも難易度が高く、市場に流通しているものは限られるのが現状だ。競合のインポッシブルフーズも代替ステーキ肉の必要性を過去に言及しているが、現時点で製品化の計画は発表していない。

一方、一部のスタートアップは代替ステーキ肉の上市を進めている。菌糸体を使って代替肉を作るMeati Foodsは今年5月、代替ステーキ肉を発売した。これはアメリカで上市された最初の代替ステーキ肉となる。

アメリカ以外でも、イスラエルのRedefine Meatは3Dプリンター製の植物ステーキ肉をイスラエル、欧州で市販している。スペインのNovameatも3Dプリンターを使ったステーキ肉を開発しており、年内にレストラン、来年には小売への導入を目指している

 

参考記事

Beyond Meat to launch plant-based steak, CEO says

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Beyond Meat

 

関連記事

  1. 代替肉はなぜ必要なのか?代替肉の必要性、分類、現状をわかりやすく…
  2. 米New Culture、精密発酵カゼイン使用量を50%以上削減…
  3. デンマーク議会、炭素税・植物性食品・森林拡大を推進する協定に合意…
  4. Alt Farmは3Dプリンターで作った植物代替和牛で2023年…
  5. 米ビール大手のモルソン・クアーズが植物性ミルク市場へ進出
  6. 精密発酵で乳タンパク質を製造するImagindairyが約14億…
  7. The EVERY Companyが約198億円を調達、精密発酵…
  8. CO₂を使用した脂肪開発の動向|米Savorのバター発売とGre…

おすすめ記事

米January AI:血糖値モニターを使用せずに血糖値を予測する世界初のアプリを発表

毎回の食事で血糖値への影響が気になる人に、事前に食品が血糖値に与える影響を予測分…

イート・ジャストの代替卵JUST EggがEU当局の認可を取得

植物由来の代替卵を開発するアメリカのスタートアップ企業イート・ジャストは、主力製…

Calystaの単細胞タンパク質FeedKind、水産養殖への使用で米国GRASステータスを取得

動物飼料や食品向けの微生物タンパク質を開発・製造する米Calystaは、同社の主…

CO₂由来タンパク質を開発するオーストリアのArkeonが破産申請

CO2を原料に代替タンパク質を開発するオーストリア企業Arkeonが、正式に破産…

培養魚のBLUU Seafoodが約24億円を調達、年内にパイロット工場稼働へ

ドイツの培養シーフード企業BLUU Seafoodは先月、シリーズAラウンドで1…

イスラエルの培養肉企業Believer Meats、アブダビでの事業展開を視野にAGWAと提携

イスラエルの培養肉企業Believer Meats((旧称Future Meat…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

最新記事

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(08/02 15:31時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(08/02 01:37時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(08/02 05:29時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(08/01 21:35時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(08/02 13:35時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(08/02 00:42時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP