代替プロテイン

培養肉企業のパイオニア、モサミートがオランダに培養肉工場を開設

 

オランダを拠点とする培養肉企業モサミートは今月、オランダ、マーストリヒトに2,760㎡(29,708平方フィート)の培養肉工場を開設したことを発表した。これは同社4番目の施設となる

この工場の開設により、モサミートの生産施設は7,340㎡(79,007平方フィート)となった。AgFunderの報道によると、当面は、1,000リットルのバイオリアクターを使用して年間数万個の培養肉ハンバーガーを製造する生産能力となる。需要増加に伴い、長期的には年間数十万個の生産能力まで拡大するよう設計されているという。

モサミートは現在、シンガポール・欧州での認可取得に向けて取り組んでいる。シンガポールは現在も培養肉の販売を認めた唯一の国であり、これまでにGOOD Meatのみが販売を実現している。

モサミートはシンガポール進出を視野に昨年、シンガポールで培養肉の製造認可を持つEsco Asterと提携した

出典:Mosa Meat

2013年に世界に先駆けて培養肉バーガーを発表したモサミートは、持続可能な食料システムの構築に向けて、培養肉の研究開発を加速させると同時に、培養肉を正しく理解してもらうため、情報発信にも力をいれてきた。

昨年には倫理的な問題が指摘されるウシ胎児血清(FBS)を使わずに筋細胞を分化させる方法について論文を発表した。今年1月には、FBSを使用せずに脂肪を培養する無血清培地について論文を発表し、同社の無血清培地がFBS含有培地よりも分化能が優れていることを示した

同社はこれまでに、Blue Horizon三菱商事Nutreco、スイスの食肉加工会社Bell Food Group、俳優のレオナルド・ディカプリオ氏などから総額9600万ドル(約130億円)の出資を受けている。今年3月には培地サプライチェーンの構築でNutrecoとの提携を発表している

出典:Mosa Meat

培養肉企業の中には大量生産に向けて、大型バイオリアクターの構築に取り組む事例もみられるが、モサミートはAgFunderのインタビューに対し、培養牛肉で収益を出すにあたり、25万リットルのバイオリアクターは必要ないと回答している。

モサミートのほかにも昨今、マレーシアのCell AgriTech、中国のCellXが工場建設を発表したり、イスラエルのBELIEVER Meatsがアメリカで工場の建設を開始するなど、培養肉業界全体で商用化・大量生産に向けて工場の建設が増加している。

 

参考記事

Mosa Meat opens new facility in Maastricht, sees ‘a clear path towards price parity’ for cultivated meat

Dutch Pioneer Mosa Meat Opens World’s Largest Cultivated Meat Facility

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:モサミート

 

関連記事

  1. ADMが精密発酵スタートアップNew Cultureと戦略的パー…
  2. 分子農業で代替タンパク質と成長因子を開発するスタートアップ企業4…
  3. イスラエルのBeliever MeatsがFDAの安全性審査をク…
  4. オランダのViviciが精密発酵ホエイの生産プロセスをスケールア…
  5. スイスの小売大手ミグロスがビーガンゆで卵を発売
  6. 精密発酵で乳タンパク質・乳脂肪を開発するPhyx44が約1.7億…
  7. Tempty Foods、デンマークのセブンイレブン30店舗で試…
  8. イート・ジャストの代替卵JUST Eggが欧州の安全性承認を取得…

おすすめ記事

マイコプロテイン企業Mycorenaが正式な倒産申請を発表、新たなオーナーで事業の継続へ

欧州の代表的なマイコプロテイン企業Mycorenaが正式に倒産申請をしたことが発…

パーフェクトデイ、精密発酵の「biology-as-a-service」を本格始動

食用タンパク質で精密発酵をリードする米パー​​フェクトデイ(Perfect Da…

GOOD Meatが培養肉生産に無血清培地を使用する認可をシンガポール当局から取得

米イート・ジャストの培養肉部門GOOD Meatは18日、培養肉生産に無血清培地…

米New Culture、精密発酵カゼイン使用量を50%以上削減しながらレストラン品質のモッツァレラを実現

精密発酵でカゼインを開発する米New Cultureは先月、新たなコスト削減の成…

果物の鮮度保持シールStixFRESHを開発する米Ryp Labs、ベリー向けに商用化を発表

果物の鮮度を2倍に伸ばす独自シールを開発する米Ryp Labsが、ベリー向けの鮮…

独Nosh Biofoodsが赤身肉のようなマイコプロテインの開発でGinkgo Bioworksと提携

代替肉用に菌類由来の機能性成分を開発するドイツ企業Nosh Biofoods(以…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

精密発酵ミニレポート発売のお知らせ

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

最新記事

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(10/06 16:04時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(10/07 02:29時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(10/07 06:06時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(10/06 22:04時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,980円(10/07 14:02時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(10/07 01:20時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP