代替プロテイン

ドイツのThe Cultivated B、EFSAに向けた培養ソーセージの承認申請手続きを開始

 

ドイツの培養肉企業The Cultivated Bは14日、欧州食品安全機関(EFSA)との協議を開始し、自社の培養ソーセージ製品に関する新規食品承認に向けた事前提出プロセスを正式に開始したことを発表した

これに続き、The Cultivated Bが申請書を正式に提出すると、同社がEFSAへ培養肉の申請を行った世界初の企業となる可能性がある。

The Cultivated BがEFSAへ培養ソーセージの承認申請手続きを開始

新規食品(Novel Foods)をEU市場で販売するには、まず欧州委員会に申請書を提出する必要がある。欧州委員会はその有効性を確認後、加盟国に公開し、EFSAにリスク評価を委託する。EFSAは、欧州委員会から申請書を受領した日から9ヶ月以内に、その意見を採択する決まりとなっている

全体的な申請手順は、事前提出(Pre-submission phase)、提出・適合性確認(Submission phase&suitability check)、リスクアセスメント(Risk assessment phase)、採択後プロセス(Post-adoption phase)の4段階からなる。The Cultivated Bはこのうち第1段階の事前提出のプロセスを正式に開始したこととなる。

出典:EFSA

2021年に設立されたThe Cultivated Bは、細胞農業、精密発酵、バイオリアクター技術の新しいアプローチを使用して、培養肉、食品生産、パーソナルケア産業を推進しようとしている。

同社がEFSAと協議を開始した培養ソーセージ製品は、ホットドッグに使用される茹でたソーセージに似ており、ビーガン素材と「大量の」培養肉から構成される培養ハイブリッドソーセージとなる。同社の姉妹会社であるThe Family Butchersとの協力により開発された。

短納期で使いやすいバイオリアクターを開発

出典:The Cultivated B

The Cultivated Bは培養肉だけでなく、バイオリアクターの開発にも取り組んでいる。目指すのは、研究者向けに設計された現在のバイオリアクターではなく、スタートアップや小規模企業が使用しやすいモジュール式バイオリアクターの提供だ

The Cultivated Bは今年7月、工業グレードのバイオリアクターAUXO Vを発表した。プレスリリースによると、バイオリアクターの納入には通常2年かかるが、The Cultivated Bのバイオリアクターはわずか数週間で納入できるという。

多くの業者が現在、シングルユースのタイプを使用しているのに対し、AUXO Vは滅菌して再利用可能なタイプとなり、ラボスケールから工業スケールの25,000リットルまで、さまざまなサイズが用意されている。

昨年10月には、カナダ、オンタリオ州に130,000平方フィート(約12,000㎡)の製造施設・イノベーションハブ開設を発表した。この施設では 500ml~25,000Lのバイオリアクターや、細胞農業装置、精密発酵用のフォトバイオリアクターが開発・製造されている。

「EFSAとの協議開始は培養肉の民主化を促進」

出典:The Cultivated B

欧州でこれまでに培養肉の申請を行ったのは、スイス連邦食品 安全獣医局(FSVO)英国食品基準局 (FSA)に提出したイスラエル企業アレフ・ファームズのみとなる。

EU加盟国で培養肉を販売するためには、新規食品の承認を得る必要があるが、今年5月時点では欧州当局はいずれの培養肉企業からの申請も受理していなかった。現時点で他の企業が申請していなければ、The Cultivated BがEFSAへの申請手続きを開始した最初の企業となる。

培養肉業界における重要な課題の1つは、食品業界が必要とする規模の大量生産をまだ実現できていないことだ。また、培養肉の安全性に対する懸念や、多くの地域では法整備が整っていないことから、米・シンガポールで販売が認可されているものの、消費者にとって培養肉はまだ手の届く存在にはなっていない。

The Cultivated Bは、EFSAとの早期の協議開始は、これらの障壁を取り除き、培養肉業界が品質や持続可能性に妥協することなく培養肉を民主化するうえで促進剤となると考えている。

 

参考記事

The Cultivated B Initiated Pre-Submission Process towards EFSA Certification for Cultivated Sausage

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:The Cultivated B

 

関連記事

  1. CSIROが支援するEden Brewが約6.4億円を調達、精密…
  2. 菌糸体で代替ステーキ肉を開発する英Adamo Foodsが約2.…
  3. 代替シーフードのAqua Cultured Foods、スイスの…
  4. 世界初!シンガポールOsomeFoodが開発したマイコプロテイン…
  5. ネスレも細胞農業による代替母乳産業に参入か?
  6. Believer Meats、培養鶏肉の連続生産が高い費用対効果…
  7. 代替卵のイート・ジャストがアフリカ市場へ進出
  8. QuornとPrime Rootsが菌糸体由来肉の市場拡大に向け…

おすすめ記事

米Plantible Foodsがウキクサ由来の植物性代替卵を発表

ウキクサから高機能タンパク質を抽出する米スタートアップPlantible Foo…

Mycorena、マイコプロテイン由来のバター試作品を発表

マイコプロテインを活用した代替肉を製造、販売するスウェーデン企業Mycorena…

クラフト・ハインツがAIを活用するフードテック企業NotCoと合弁会社を設立

クラフト・ハインツ(Kraft Heinz)は、フードテックのスタートアップTh…

ドイツのMeatosys、農家の培養肉生産を可能にするモジュール型コンテナを開発

培養肉を広く供給するには、工業規模の工場が必要になるが、ドイツでは農場で培養肉生…

イスラエルのDairyX、精密発酵技術で自己組織化するカゼインミセルの生産方法を開発

2022年に設立されたイスラエルのスタートアップ企業DairyXは今月、精密発酵…

培養シーフードのAvantが約14億円を調達、来年パイロット工場を稼働

香港の培養シーフード企業Avantが先月、シリーズAラウンドで1080万ドル(約…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoセミナー開催のお知らせ

Foovo Deepのご案内

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(01/17 14:27時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(01/18 00:10時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(01/18 03:58時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
2,156円(01/17 20:26時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(01/18 12:39時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(01/17 23:23時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP