代替プロテイン

ネスレ、精密発酵由来ヒトラクトフェリンのHelainaと複数年提携|Perfect Dayに続く動き

出典:Helaina

ネスレは、精密発酵スタートアップのHelainaと複数年にわたる戦略的提携を締結した。乳幼児期の発育における新たな生理活性タンパク質の役割を探るのが狙い。

ネスレのプレスリリースによると、提携では、ネスレの乳幼児栄養と商品開発の知見に、Helainaのバイオテクノロジー能力を組み合わせる。Helainaは精密発酵によりヒトラクトフェリン「effera」を開発しており、サプリメントを中心に市場投入を進めている

ウォールストリートジャーナル報道によると、ネスレがHelainaの原料を購入する計画だという。これが実現すれば、精密発酵ラクトフェリンの用途は、サプリメント中心から乳幼児栄養へと広がることになる。

公開情報に基づくFoovoの調査では、ネスレが精密発酵タンパク質企業と提携するのは、パーフェクトデイ(Perfect Day)に続き2社目。

ネスレは2022年9月にパーフェクトデイと提携し、同年12月に同社の精密発酵ホエイを使用した代替ミルク製品「Cowabunga」を試験販売した

さらに2024年にはネスレヘルスサイエンス傘下のOrgainブランドから精密発酵ホエイ(開発企業は非公開)を使用したプロテインパウダー「ORGAIN Better Whey」を販売した(現在は売り切れ)。

出典:Helaina

今回のHelainaとの複数年にわたる協業は、ネスレによる精密発酵タンパク質の活用が、代替乳製品や成人向け栄養から、乳幼児栄養へ広がる可能性を示すものといえる。

Helainaは2019年創業のニューヨークを拠点とする精密発酵企業で、最初の原料としてヒトラクトフェリン「effera」を開発した。

ラクトフェリンは1939年に牛乳から発見されたタンパク質であり、その後、牛乳だけでなく、ヒトの母乳にも含まれることが判明した

Helainaのプレスリリースによれば、efferaはヒト型と完全に同一のラクトフェリンとなる。ラクトフェリンは鉄と結合することで、病原菌が生存に必要な栄養素を奪うと同時に、腸の健康を支えるとされる。牛乳から抽出されるラクトフェリンは、ヒト由来との相同性が約7割にとどまるという。

出典:Helaina

同社はまた、ウシラクトフェリンに対してヒトラクトフェリンの摂取では、抗体の増加がほぼなく、アレルギーの懸念が低いとの結果を論文で報告している

遺伝子組換え微生物を用いた精密発酵技術により、従来はウシラクトフェリンが中心だった食品・サプリメント領域で、ヒトラクトフェリンを安定的に生産できる可能性が開かれる。efferaは今年4月時点で、サプリメントを中心に11の商品に採用されており、採用数は昨年から倍増している。

精密発酵ラクトフェリンに関しては、他社の動きも進んでいる。

TurtleTreeは2025年5月、精密発酵ウシラクトフェリン「LF+」について、アメリカ食品医薬品局(FDA)からGRAS通知に対する「質問なし」レターを取得した

オーストラリアのAll Gも2026年3月、精密発酵によるウシラクトフェリンでFDAからレターを取得しているが、FDA文書では乳児用粉ミルク用途は対象外とされている

精密発酵ラクトフェリンが高付加価値タンパク質として競争が強まりつつある中、ネスレとHelainaの協業は、精密発酵由来ラクトフェリンが乳幼児栄養にも応用される可能性を示す動きとして注目される。

 

※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。

フードテックの国内外ニュースを週1回まとめてお届けしております。
メールマガジン登録はこちらから

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Helaina

 

関連記事

  1. 米国IPOを目指すMeat-Techが3Dプリンターで10mmの…
  2. イスラエルのSteakholder Foods、3Dプリンターで…
  3. 【第8回細胞農業会議レポート】問われる「出口」の重要性、阪大は年…
  4. 米Bond Pet Foods、精密発酵由来の動物タンパク質2ト…
  5. 細胞性食品は各国で何を意味するのか|研究者らが語る社会・文化の違…
  6. 微細藻類ナンノクロロプシスで油脂生産──ファイトリピッド・テクノ…
  7. フードテックで注目|精密発酵セミナー開催のお知らせ
  8. 消費者庁、細胞性食品の安全性確保ガイドライン案を初公表|国内販売…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

おすすめ記事

培養肉用の安価な食用足場を開発するエストニア企業Gelatex|事業開発部長Athanasios Garoufas氏にインタビュー

培養肉の生産では、生体内環境に似た状態を再現するために、細胞外マトリックス(EC…

Mycorenaが菌類由来の代替脂肪「Mycolein」の発売を発表

スウェーデン企業Mycorenaが菌類由来の代替脂肪「Mycolein(マイコレ…

アイスランドORF Geneticsが大麦由来の低コスト成長因子を開発、培養肉の生産コスト削減を目指す

アイスランド・ORF Geneticsの技術によって、今後数年のうちに培養肉の商…

海藻で地方創生を目指す米Aqua Theon──和菓子、寒天ドリンク、そして「テキーラボール」で目指す医療用カプセル【セミナーレポート】

三木アリッサ氏(右) Foovo(佐藤)撮影「卵のキユーピー、トマトのカゴメ──…

Nature’s Fyndの微生物発酵によるタンパク質「Fy」が米国FDAよりGRAS認証を取得

微生物発酵により代替タンパク質を開発するNature’s Fyndが、米国の食品…

東京農大、エリンギで代替ホタテ貝柱を開発 製品化へ向けパートナー模索

出典:東京農業大学ユキグニファクトリー(旧称雪国まいたけ)が昨年3月にまいたけを使用した代替肉「…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

細胞性食品(細胞培養食品)レポート・予約注文開始

最新記事

精密発酵・定期動向レポート発売のお知らせ

代替カカオレポート・好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

会員サービスFoovo Deepのご案内

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP