代替プロテイン

培養肉企業モサミートが約66億円を調達、新たに食肉メーカーからの支援を得る

 

オランダの培養肉企業モサミート(Mosa Meat)は先月、4,000万ユーロ(約66億円)を調達した応募超過となったこのラウンドは、Lowercarbon CapitalM Venturesが主導した。

新たに、欧州最大の鶏肉メーカーの1つであるPHWグループ、インパクト投資を行うオランダの国営会社Invest-NL、欧州委員会のプログラムであるInvestEU、リンブルフ州の地域開発会社LIOF、リンブルフ州の地域インパクトファンドであるLimburgs Energie FondsLEF)など、畜産業者・政府の支援を受ける会社が参加した。

ドイツに本社を置くPHWグループは45社以上の子会社を有し、2018年に代替タンパク質部門を設置した。同社による培養肉企業への出資はイスラエルのスーパーミートに続く2社目、代替肉・代替魚ではRedefine MeatGOOD Catchを含め4社目となる

今回の調達により、モサミートの調達総額は1億3850万ドル(約212億円)となった

厳しい投資環境における大型調達

出典:Mosa Meat

代替タンパク質の普及促進を行う非営利団体Good Food InstituteGFI)によると、2023年に培養肉・培養魚に集まった投資額は2億2590万ドル(約346億円)と、2022年の9億2230万ドル(約1416億円)と比べて大幅に減少した培養肉・培養魚企業への投資家の数も、2022年の204に対し、2023年には111とほぼ半減する結果となった。

こうした厳しい投資環境下、昨年8月のオランダの培養肉企業Meatableによる約51億円の大型調達に続き、モサミートも大型調達に成功したインパクトは大きい。

モサミートCEO(最高経営責任者)のMaarten Bosch氏は、「公的機関および従来の食肉生産者の双方を、この重要な旅に迎えることができ、身の引き締まる思いであり、光栄に思っています」と述べた。

さらに、「地球を破壊することなく優れた食料の生産方法を再考することは、非常に困難な作業であり、多くの人や組織が同じ方向に向かって力を合わせる必要があります」と述べ、培養肉の社会普及にはさまざまなステークホルダーとの協力が不可欠であることを強調している。

出典:Mosa Meat

モサミートは昨年5月、スケールアップ施設として4番目の施設をマーストリヒトに開設した。昨年9月には、社会や環境に配慮した公益性の高い事業活動を行う企業に与えられるグローバル認証であるBコープ認証を培養肉企業として初めて取得した

同社は今年1月、Meatableのプレスリリースに寄せるコメントの中で、培養牛肉の試食会開催の申請をまもなく行うこと発表。オランダでは先月、MeatableがEU初の試食会を開催した

今回のプレスリリースで、オランダで最初の正式な培養牛肉試食会に向けて準備をしていると述べていることから、早ければ年内に試食会が開催される可能性がある。

培養肉を巡る二極化

Maarten Bosch氏 出典:Mosa Meat

アメリカでは今月、フロリダ州で培養肉の製造販売を禁止する法律が成立し、7月1日から施行される予定となる。

Green queenの報道によると、アメリカで培養肉の販売を禁止するのはフロリダ州が初だが、アラバマ州、アリゾナ州、テキサス州など他の州でも、培養肉の禁止が提案されている。アメリカ以外では、イタリアで昨年12月、培養肉の製造販売を禁止する法案が可決された

一部地域では政策的に逆風が吹く中、オランダのように公的機関・食肉メーカーが培養肉業界を支援する国もある。

Bosch氏は、「二極化が進む環境において、私たちはつながり、協力し合い、培養牛肉が消費者にとって真の選択肢となり、気候変動の危機、生物多様性の損失、食糧安全保障に対応する手段の補完的な解決策となる未来に向けて努力することを選択します」と述べている。

 

参考記事

Mosa Meat Raises €40M in New Financing

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Mosa Meat

 

関連記事

  1. 培養肉未来創造コンソーシアム、大阪万博で培養肉の実物を展示|家庭…
  2. Leaft Foods、ルビスコの日本商用化に向けラクト・ジャパ…
  3. イスラエルの培養肉企業Steakholder Foods、バイオ…
  4. 米Geltor、飲食用の精密発酵コラーゲン「PrimaColl」…
  5. 植物から短鎖状の食物繊維を取り出す米One Bioが約42億円を…
  6. 「米ぬか」をタンパク質源に:食糧と競合しない米タンパク質で収益性…
  7. スウェーデンHookedが約6200万円を調達、2021年春にス…
  8. MeaTech、3Dプリンターによる培養シーフードの開発でUma…

おすすめ記事

精密発酵により代替タンパク質を開発する企業23社

微生物発酵は、代替タンパク質における第3の柱として注目される。発酵ベースのタンパ…

チーズ大手のBelグループ、米Superbrewed Foodとバイオマス発酵由来の代替チーズ製品の開発で提携

世界的なチーズブランドBabybel、Laughing Cow、Boursinで…

大手食品メーカーの精密発酵食品への参入・販売状況【Foovo独自】

2025年9月15日追記ダノンは今月、ミシュランら3社と協力して、フランスに精密発酵のスケー…

培養細胞を原料とする食品、「細胞性食品」を基本名称に──「培養」から「細胞性」へ|官民協議会が方針発表

写真:Gourmeyフードテック官民協議会の細胞農業ワーキングチームは2025年8月18日、培養…

菌糸体で代替ステーキ肉を開発する英Adamo Foodsが約2.7億円を調達

菌糸体から代替肉を作るイギリスのスタートアップ企業Adamo Foodsは先月、…

米Upside Foodsが新たに培養鶏ひき肉製品を発表

カリフォルニア州を拠点とするUpside Foodsは、新たな製品として培養鶏ひ…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

最新記事

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(09/18 15:54時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(09/18 02:17時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(09/18 05:56時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(09/17 21:55時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,980円(09/18 13:52時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(09/18 01:12時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP