食品に特化した精密発酵・液中発酵施設のCDMOであるシンガポール企業ScaleUp Bioは今月21日、シンガポール西部のトゥアスにあるパイロットスケールの商用施設について、シンガポール食品庁(SFA)より食品製造ライセンスを取得したことを発表した。
これにより、ScaleUp Bioは液中発酵・精密発酵に焦点をあてた、食品製造施設として認可された世界でも数少ないCDMOの1つとなった。
ScaleUp Bioがシンガポール当局から食品製造ライセンスを取得
ScaleUp Bioはフードテック企業に対し、ベンチスケールからパイロットスケールの商用生産へとスケールアップを支援し、市場参入を支援することを目指して2022年に設立された。
ScaleUp Bioは、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)とアジアで持続可能な食品の商用化を目指すNurasaによる合弁会社であり、シンガポールの政府系投資会社テマセクが完全所有する会社となる。
同社がスタートアップ企業にアクセスを提供する施設は2つある。
1つは、Nurasaのフードテックイノベーションセンター(FTIC)に設置された発酵共同ラボ。スタートアップ企業はこの食品グレードの研究所で最大100Lの発酵設備を利用できる。この発酵共同ラボは2023年第4四半期に稼働を開始した。
2つ目が今回発表されたシンガポール西部トゥアスのLOGOS Food21にある施設で、約2,266㎡の敷地に最大10,000Lのバイオリアクターが設置されている。この施設は発酵共同ラボを補完する役割を持ち、スタートアップ企業は最大10,000Lのバイオリアクター、下流処理設備にアクセスできる。
開設前からの本契約と増える企業からの関心
食品グレードの発酵設備が不足していること、アイディアを製品にして、市場投入まで導くための理解、知見、インフラが不足していることに着目したScaleUp Bioが自社施設についてシンガポール当局から認証を得たことで、スタートアップ企業は設備に多額の費用を投じることなく、市場投入を進めることができる。
ScaleUp Bioは昨年10月、施設の開設に先立ち、最初のクライアント企業を発表した。
精密発酵で脂肪を開発するオーストラリア企業Nourish Ingredientsとの契約発表に続き、今年3月には独自技術で新規酵素を開発するシンガポール企業Allozymes、微細藻類でタンパク質と色素を開発するシンガポール企業Algrow Biosciencesとも契約を交わしたことを発表した。
ほかにも、代替パーム油を開発する米C16 Biosciences、マイコプロテイン肉を開発するマレーシアのUltimeat、微細藻類・菌糸体の共培養でタンパク質を開発するシンガポール企業Allium Bio、農業副産物をアップサイクルしてタンパク質に変換するカナダのTerra Bioindustries、農業廃棄物から食品、燃料、肥料、材料など幅広い製品を作る英Argento Labsなど、さまざまな企業と基本合意書(LOI)を締結している。
開設前からクライアント企業との本契約にいたったことや、昨年Foovoも参加した現地視察に多くの人が参加していたことから、ScaleUp Bioの提供サービスに対する需要・関心の高さがうかがえる。
同社CEO(最高経営責任者)Francisco Codoner氏は昨年のFoovoのインタビューで、稼働開始前にも関わらず「かなり多く」のLOIを交わしていると述べていた。
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アイキャッチ画像の出典:ScaleUp Bio