代替プロテイン

大手乳業メーカーLeprino FoodsとオランダのFooditive、精密発酵カゼインの製造販売で世界的な独占契約を締結

 

精密発酵カゼインを開発するオランダ企業Fooditiveは今月、世界最大のモッツアレラチーズメーカーであるLeprino Foodsと提携したことを発表した

Fooditiveが大手乳業メーカーLeprino Foodsと提携

Fooditiveが開発した精密発酵によるカゼイン 出典:Fooditive

Leprino Foodsは、Fooditiveの独自プラットフォームを使用して精密発酵カゼインを製造する世界的な独占製造権と、チーズに使用する世界的な独占販売権を取得する。また、他の食品向けに販売、流通するための非独占的ライセンスも取得する。

Leprino FoodsがFooditiveと結んだ2つの世界的独占権は、同社がFooditiveの精密発酵カゼインを使用するだけでなく、自社で生産することも意味する。

Leprino Foods社長のMike Durkin氏はAgFunderのインタビューで、今後数年間で数十万トン以上の非動物性カゼインを製造する予定であること、来年に数万トンにスケールアップし、需要の拡大に応じてアメリカにある工場のいずれかで拡張する予定であると述べている

「精密発酵で製品の拡充、環境負荷の軽減が可能になる」

出典:Fooditive

Fooditiveは2019年に精密発酵でカゼインの開発を開始した。

当初は「生産工場」として酵母を使用していたが、現在は遺伝子合成によりFooditiveが開発した独自の細菌株を使用している。これにより品質や味を妥協することなく、コスト最適化、拡張性、効率性、安全性の向上など多くの利点が得られるようになったという

同社は昨年、精密発酵カゼインを大規模に生産する実現可能性を実証した。AgFunderによると、今年後半にFDAにGRAS通知を提出する予定だという

パーフェクトデイRemilkなど、アメリカでは精密発酵ホエイの販売が実現しているが、精密発酵カゼインはまだ上市されていない。

米New Cultureは今年2月に精密発酵カゼインでGRAS自己認証を発表した。今年後半にロサンゼルスにあるNancy Silverton氏のレストラン「Pizzeria Mozza」で初販売が予定されている。

1950年代に創業したLeprino Foodsは世界55ヵ国に製品を展開するグローバルな乳業メーカーであり、アメリカ、イギリス、中国、日本、韓国、シンガポール、ブラジルに拠点を持つ

昨年にはドミノピザとの10年契約を延長し、5年間で9の国際市場でピザを供給する提携を締結した。Leprino Foodsは毎年2億6,000万枚以上のピザに使用するチーズをドミノピザに供給しており、Fooditiveとの提携は、ドミノピザなど身近なピザチェーン店に精密発酵カゼインが導入される可能性を意味する。

Durkin氏は、「従来の乳製品生産に精密発酵を取り入れることで、発酵由来の非動物性カゼインが当社の製品ポートフォリオにどのように使用できるかを検討します」とコメント。精密発酵を導入することで、製品ラインナップの拡充にとどまらず、製品の機能性、品質、味、食感を維持しながら、サプライチェーン全体の環境負荷を軽減できる可能性があると述べている。

精密発酵乳タンパク質の市場導入は2024年7月時点ではアメリカに集中している。ネスレユニリーバのように、大手食品・消費財メーカーが精密発酵乳タンパク質を自社製品に取り入れる提携も確認されている。一方、New CultureとADMの提携のように、スケールアップを支援すための提携も確認されている。

 

参考記事

Leprino Foods and Fooditive Group Sign Exclusive Agreement to Commercialize Non-Animal Casein Worldwide

World’s largest mozzarella maker Leprino Foods to commercialize animal-free casein from Dutch startup Fooditive Group

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Fooditive

 

関連記事

  1. 国内初|グリーンカルチャーが植物性ゆで卵の開発に成功
  2. 代替卵イート・ジャストが欧州進出へ向けて加速、EUの承認待ち
  3. イスラエルのFuture Meatが培養肉の生産コスト削減に再び…
  4. 代替母乳のBiomilqがシリーズAで約24億円を調達
  5. 培養魚の米Wildtype、培養魚の試食ができるパイロット工場の…
  6. 微生物で希少な天然成分を発酵生産するファーメランタ、シリーズAで…
  7. イスラエルのMarineXcell、独自の核初期化技術で細胞培養…
  8. シンガポールの研究チームがウナギ細胞株と植物血清の開発に成功

おすすめ記事

全卵タイプの植物性代替卵を開発するYo Egg、アメリカで小売進出を実現

植物性の全卵製品を開発するイスラエル企業Yo Eggが今年3月、アメリカで小売進…

菌糸体由来肉の米Meati Foodsが約199億円を調達、今年後半に大型工場から出荷を開始

菌糸体由来の代替肉を開発する米Meati Foodsは今月、シリーズCラウンドで…

Amazonで圧倒的な高評価を誇る家庭用カクテルロボットのBartesianが約21億円を調達

家庭用カクテルロボットを開発するBartesianがシリーズAラウンドで2000…

韓国の培養肉企業SeaWith、2030年までに培養ステーキ肉を1kgあたり3ドルへ

培養肉を開発する韓国企業Seawithが、新たな目標を発表した。同社はこ…

UMAMI UNITEDの植物性代替卵「UMAMI EGG」が都内レストランに登場

シンガポール、日本に拠点を構えるUMAMI UNITEDが開発した植物性の代替卵…

Nature’s Fyndがカナダで微生物由来タンパク質Fyの認可を取得

極限環境微生物を使用して代替タンパク質Fyを開発する米Nature’s Fynd…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

精密発酵ミニレポート発売のお知らせ

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

最新記事

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(10/05 16:04時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(10/06 02:28時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(10/06 06:06時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(10/05 22:04時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,980円(10/05 14:02時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(10/06 01:20時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP