代替プロテイン

英Hoxton Farmsが住友商事と提携、日本を含むアジア市場への培養脂肪導入を目指す

2025年4月1日更新

豚の培養脂肪を開発する英Hoxton Farmsが先月27日、アジア市場への参入に向けて、住友商事との戦略的提携を発表した

Hoxton Farmsが開発する培養豚脂肪「Hoxton Fat」を、日本を含むアジアに導入するための提携となる。

住友商事のアグリイノベーションユニット長・小島健夫氏は、「Hoxton Farmsの培養脂肪は、味の向上だけでなく、持続可能性にも貢献する画期的な素材です。法整備やサプライチェーンの拡充を含め、アジアにおける研究開発を加速させるため、引き続き協力していきます」と述べている。

培養脂肪のHoxton Farmsが住友商事と提携

Hoxton Farms共同創業者のMax Jamilly氏 Foovo(佐藤)撮影

アジアの食肉需要は、所得の増加、都市化、人口増加により、2017年比で2050年までに78%増加すると予測され、食品価格の高騰、気候変動や疾病による供給の不安定化が懸念されている。

プレスリリースによると、2018年に中国で発生したアフリカ豚熱(ASF)により、世界の豚の約4分の1に相当する2億2500万頭が殺処分され、中国に1100億ドルもの経済損失が生じた。

豚の幹細胞から作られる「Hoxton Fat」は、従来の動物性脂肪よりも健康的かつ多用途にカスタマイズ可能で、持続可能性を備えた素材として期待されている。

同社は、飽和脂肪酸を抑え、オメガ3脂肪酸など有益な成分を増やしたバージョンの開発に取り組んでいる。

出典:Hoxton Farms

Hoxton Farms共同創業者のMax Jamilly氏は先週東京で開催されたCMS Japanに登壇し、大豆タンパク質と「Hoxton Fat」を2層構造にした代替豚バラ肉、本物の豚肉と「Hoxton Fat」を組み合わせたハイブリッドミートボール、「Hoxton Fat」を使用した豚骨ラーメンモルタデッラ(ハム)ランチョンミートなどのさまざまな試作品(写真)を紹介した。

培養脂肪は、動物を介さず、工場で製造されるため、疫病や気候変動の影響を受けない安定した供給源になることが期待される。

現在、培養肉が認められた地域はヒト向けではアメリカシンガポールイスラエル香港であり、先月にはMission Barnsが培養脂肪についてFDAの安全性審査をクリアし、販売に向けて前進した。ただし、シンガポールと香港を除けば、アジアでは培養肉の販売はまだ未承認だ。

Hoxton Farmsと住友商事は今後、アジアの当局と緊密に連携し、市場導入に必要な承認取得を目指す。また、細胞農業研究機構(JACA)とも連携し、培養脂肪の社会的受容や規制整備に向けた取り組みを進める予定だ。

JACA代表理事の吉富 愛望 アビガイル氏は、「住友商事とHoxton Farmsの提携は、日本に大きなメリットをもたらします」とコメント

さらに、「日本の関係者が、革新的な技術や生産設備、安全性や味覚に関する重要な情報へ効率的にアクセスできるようになり、食料供給が直面するさまざまな課題の解決につながります」と述べ、今回の提携が日本市場における細胞農業の普及促進や、日本とイギリスの二国間協力の強化に重要な役割を果たすとの期待を示している。

Hoxton Farms、最初の市場はシンガポール

培養肉企業へ出資・または提携する日本企業 Foovo独自調査により作成

2020年に設立されたHoxton Farmsは、Mission Barns(2018年)やCubiq Foods(2018年)などと並び、初期に設立された培養脂肪プレーヤーとなる。

Hoxton Farmsは先月、イギリス政府主導の規制プログラムの対象企業にも選ばれた。最初の市場としてシンガポール、続いてイギリス、日本、韓国、タイなどへの進出を目指しているとJamilly氏述べている

培養脂肪分野ではMission Barnsが市場投入に最も近づいているが、オランダのモサミートも今年EUおよびスイス培養脂肪の申請を完了し、販売に向けて着実に前進している。

住友商事はすでに2020年5月に培養魚企業のBlueNalu出資しており、今回のHoxton Farmsとの提携により、日本の細胞農業分野のさらなる活性化が期待される。

 

参考記事(プレスリリース)

Hoxton Farms and Sumitomo Corporation announce strategic partnership

 

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アイキャッチ画像の出典:Hoxton Farms

 

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