代替プロテイン

微生物で希少な天然成分を発酵生産するファーメランタ、シリーズAで20億円を調達──2026年にパイロット工場竣工へ

出典:ファーメランタ

合成生物学により天然由来の希少な有用成分を発酵生産する日本のファーメランタは先月末、シリーズAラウンドで20億円の資金調達を実施した

これにより同社の累計調達額は48億円となった。

調達した資金で、開発パイプラインを拡大し、ラボからパイロットスケールへのスケールアップを進める。さらに、開発製造受託機関(CDMO)を通じ、開発パイプラインのサンプル試作、量産化の実証も進める。

ファーメランタは、石川県立大学発のベンチャー企業として2022年に設立された。合成生物学によるバイオものづくりに取り組んでおり、植物など天然由来の希少な有用成分を微生物発酵で生産する。開発対象は、医薬品、化粧品、機能成分、香料、農薬、飼料添加物など多岐にわたる。

研究チームは2008年に世界で初めて、植物二次代謝産物であるアルカロイドを微生物発酵で生産することに成功した実績を有するアルカロイドにはモルヒネ、コデインなどがあり、医薬品に使用される)。

昨年には農林水産省中小企業イノベーション創出推進事業に採択され、現在、3,000リットル規模のバイオリアクターを有するパイロット工場の建設を進めており、来年5月に竣工予定となる。

国家戦略に位置づけられる「バイオものづくり」

出典:ファーメランタ

バイオものづくりとは、微生物動植物などの細胞によって物質を生産することを指し、医薬品、化粧品、バイオ燃料、プラスチック原料から食品など、さまざまな産業分野で利用される技術となる。

政府の「バイオエコノミー戦略」によると、フードテックの文脈では微生物を「ミニ工場」として有用物質を生成する精密発酵や、細胞自体を増殖させる細胞性食品(培養肉など)などがあてはまる(PDF p8)。

「バイオエコノミー戦略」では2030年の市場規模目標として53.3兆円を掲げ、2030年までに官民投資額を年3兆円規模に拡大することを目標にかかげている(p17)。

2022年度には、経済産業省を中心としたグリーンイノベーション基金事業、バイオものづくり革命推進事業などを含む、総額1兆円規模の大型予算も措置され、国家プロジェクトとして始動した(p3)。

微生物発酵で希少成分の安定供給へ

出典:ファーメランタ

ファーメランタは、バイオものづくりの中でも注目される合成生物学に注力している。

従来の応用微生物学や遺伝子工学が自然界にある機能の「発見と改変」に重点を置くのに対し、合成生物学は「自然界に存在しない新たな機能を創出」できる点が特徴となる。同社はこの技術を基盤に、微生物を工場として、分野や構造を問わず、低分子から高分子まで幅広い化合物を安価に生産できる仕組みづくりを進めている。

同社は大腸菌内で改変型生合成経路の構築に成功し、20以上の外来遺伝子を1菌体に導入・発現する多段階遺伝子導入技術を確立した。

さらに、目的物質の生産効率を向上させる遺伝子発現バランスの最適化技術タンパク質過剰発現耐性菌株(大量のタンパク質を作らせても成長停止が起きにくい菌株)の作出など、独自技術を構築した。これらの基盤技術を組み合わせて、20段階以上の生合成経路を細胞内に構築している

2023年6月の発表では、培養液1Lあたりグラムスケールで目的物質を発酵生産することを可能にしていた。

現在の開発対象は、設立当初の医薬品原料1テーマから、10テーマ以上に拡大した。

一部の化合物では、既存市場の製品単価を下回る収量をラボスケールで達成しており、ベンチスケールでも再現性の高い生産実証を実現している。最新の発表では、1バッチあたり数十グラムの生産を実現している。今後、CDMOとの提携を通じ、1バッチあたり数十~数百キログラムへのスケールアップを目指している。

ファーメランタは今年8月、特設ラボを併設した東京オフィスを開設した。4月にはアメリカに事業開発拠点を設け、今後、フランスなど欧州市場でも事業開発を進めていくとしている。

ファーメランタは、希少で有用でありながら、植物抽出など従来の手法では安定調達しにくい領域に、合成生物学で切り込もうとしている。

今回新規で出資した慶應イノベーション・イニシアティブも「高コスト・低純度・環境負荷の大きい既存の製造手段に代わる革新的な手法」だと評価しており、同社の技術が「新たな産業モデルを切り開く可能性」に期待を寄せている

北米・欧州を視野にいれた同社の取り組みは、日本発のバイオものづくりが国際市場に挑むモデルケースとなりそうだ。

 

※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:ファーメランタ

 

関連記事

  1. 米The EVERY Company、精密発酵卵白を全米Targ…
  2. 韓国のEverything But、ペットフードを使った培養肉の…
  3. イート・ジャストの培養肉部門GOOD Meatが約184億円を調…
  4. ソーラーフーズのCO2由来「ソレイン」、米国で初の消費者向け販売…
  5. 培養マグロを開発するWanda Fishが約10億円を調達
  6. トマトで代替マグロを開発するスペイン企業Mimic Seafoo…
  7. 動物を殺さずに動物性脂肪を開発する英Hoxton Farmsが約…
  8. 米The Every Company、精密発酵で作られた史上初の…

おすすめ記事

万博展示の培養肉、全国の科学館展示を目指して大阪大学がクラウドファンディング

出典:大阪大学国内ではまだ販売に至っていない培養肉などの細胞性食品を、実物を見て、知ってもらうた…

英Multus Biotechnology、食品グレードの基礎培地を発売──日本でも開発が進展

培養肉向けの非動物性培地を開発する英Multus Biotechnologyは今…

不二製油、白湯風味の植物性粉末だし「MIRA-Dashi C820P」を新発売

出典:不二製油動物製品に代わる代替肉や代替乳製品が国内外で広がるなか、広く料理にされているにもか…

GRAS自己認証に終止符か|米国FDA、通知義務化の規制案をアジェンダに追加

ロバート・ケネディ・ジュニア米保健福祉長官(出典:米保健福祉省)ロバート・ケネディ・ジュニア米保…

機械学習でフードロス削減に取り組むFloWasteが約1億2400万円を調達

フードロス削減に取り組むFloWasteがシードラウンドで110万ドル(約1億2…

細胞性食品セミナー動画・資料【2025年11月開催】

2025年11月に開催した第19回Foovoセミナーの動画です。使用した…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

精密発酵ミニレポート発売のお知らせ

最新記事

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(01/23 16:35時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(01/23 03:21時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(01/23 06:54時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(01/23 22:38時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(01/23 14:36時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(01/23 02:00時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP