代替プロテイン

オランダのモサミートが約27億円を調達、細胞性バーガーで99.999%のコスト削減を達成

出典:Mosa Meat

牛肉や牛脂などの細胞性食品を開発するオランダのモサミート(Mosa Meat)は今月22日、1500万ユーロ(約27億円)を調達したことを発表した。

同時に、2013年に発表した細胞性バーガー25万ユーロ(約4500万円)のコストと比較して、99.999%のコスト削減を達成したと発表した。

4市場で認可待ちのモサミートが約27億円を調達

出典:Mosa Meat

イスラエルのBeliever Meats、オランダのMeatableなど、業界を牽引してきたスタートアップの突然の終了が報じられる一方で、モサミートのように先駆的プレイヤーが資金調達に成功していることは、この分野の将来性を信じる投資家が依然としていることも示している。

モサミートはコスト削減の成果について、「これは単に経済的な話ではなく、入手可能性の問題です。高級価格にしなくても、本物で美味しい牛肉を食卓に届ける準備ができたということを意味します」とブログ記事で述べている。

CEO(最高経営責任者)のMaarten Bosch氏は「私たちは現在、レストランメニューにふさわしい価格帯のハンバーガーを製造しています」とプレスリリースで述べた。

ただし、今回のコスト削減の対象について同社は、プレスリリースで「beef」「burger」と表現する一方で、コスト削減を達成した「細胞性バーガー」の構成が「牛脂と植物性成分」なのか、それとも「牛肉と植物性成分」なのかは明言していない

実際には同社は、細胞性牛肉も開発しているが、植物成分と混合することで、全体に占める割合が少なくても製品全体の味や風味の改善に寄与する脂肪から参入を目指す戦略明らかにしてきた

これまでにスイスEUイギリスシンガポールで申請を提出しており、前3市場では、細胞性脂肪の申請であることを発表している。

Bosch氏は今年1月のプレスリリースで「細胞性脂肪から始めることで、長期的なビジョンに忠実に、最初のバーガーを消費者に届ける道を拓いています。初期製品は、当社の専門性を活かし、細胞性成分と植物由来成分を組み合わせたものになります」と述べている

クランチベースによると、今回の調達で同社の調達総額は1億5990万ドル(約250億円)になった。

モサミートに最初に開かれる市場はどこか

出典:Mosa Meat

モサミートは初の安全性ガイダンスを先日発表したイギリスで、サンドボックス・プログラムの参画企業の1社に選ばれている。このプログラムでは2年以内に2件の安全性評価を完了することが約束されており、モサミートがその対象に選ばれた場合、イギリスでの上市に近づくこととなる。

一方でシンガポールでも、1年前の段階で申請済みであることに言及しており、シンガポール、EU、スイス、イギリスのどの地域で最初に認可を取得するかが注目される。

この中で、EUについては1月に申請を発表してから依然としてOpen EFSA上に情報が公開されていない(2025年12月31日時点)ことから、2026~2027年中のEU承認は考えにくいとFoovoは見ている。

細胞性食品では資金調達難で複数のスタートアップが終了している。また今年、世界最大規模の工場を開設し、販売認可を取得したBeliever Meatsは、工場建設費未払いの訴訟の末に終了が報じられた。この事例は、規制をクリアした後も、スタートアップが事業継続する上で直面しうる障壁があることを物語っている。

それでも、市場の開放はスタートアップが事業を継続するための必要条件だ。

モサミートはGreen queenの取材に対し、イギリスが最初の承認市場になるとの見通しを語っている。その背景には、見通し不明なEU市場、審査が遅延するシンガポールアレフ・ファームズが申請してから2年以上たってもまだ承認が下りていないスイスと、各地域でも見通しが立たないことが背景にあるかもしれない。

同社は2023年5月、オランダ、マーストリヒトに工場を開設した。7,340㎡の同施設には1,000リットルのバイオリアクターが設置され、年数万個の細胞性ハンバーガーを製造する生産能力を誇る。同年1月にはFBSを使用せずに脂肪を培養する無血清培地について論文を発表し、同社の無血清培地がFBS含有培地よりも分化能が優れていることを示した

昨年には欧州最大の鶏肉メーカーの1つであるPHWグループから出資を受け、同グループは今回の出資にも参加した。

先行きが不透明なこの分野において、同社がどの市場で最初の認可を取り、事業化の道筋を示せるかが注目される。

 

※本記事は、プレスリリースおよびブログ記事をもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Mosa Meat

 

関連記事

  1. 精密発酵チーズのNew CultureがCJ第一製糖と提携、20…
  2. 精密発酵セミナー開催のお知らせ|2023年4月20日(木)
  3. 精密発酵で乳タンパク質・乳脂肪を開発するPhyx44が約1.7億…
  4. 米Upside Foodsが新たに培養鶏ひき肉製品を発表
  5. 米The EVERY Company、代替肉への精密発酵タンパク…
  6. 酵母由来の代替パーム油を開発するオランダのNoPalm Ingr…
  7. オルガノイドファーム、2027年に細胞性食品のパイロット実証施設…
  8. 3Dプリンター肉のSavorEatが代替卵に特化したスタートアッ…

おすすめ記事

不二製油、カカオ不使用の代替チョコレートを発売 – カカオ価格高騰への新たな選択肢

カカオ豆の価格高騰が続くなか、大手油脂メーカーの不二製油は今月、カカオ・ココアバ…

チェコのBene Meat Technologies、培養ペットフードで欧州当局に登録

2025年4月11日 更新当初、販売認可と記載していましたが、その後の報道で市販前承認を必要…

オレオゲルで代替脂肪を開発するPerfat Technologies、シリーズAで約4.3億円を調達|欧州で年内に商用生産開始を計画

2025年9月25日更新:Jyrki Lee-Korhonen氏のFoovoへのコメントを追記しまし…

ユニリーバ、精密発酵アイスクリームをBreyersブランドで発売|パーフェクトデイのホエイを使用

食品・日用品大手のユニリーバが精密発酵に参入した。今月22日、ユニリーバ…

マクドナルド、ビヨンドミートと開発した植物性マックナゲットをドイツで発売

マクドナルドはビヨンドミートとの提携を通じて、ドイツのマクドナルド1400店舗で…

韓国の培養肉企業SeaWithは2022年末までにレストランでのテスト販売を目指す

韓国のスタートアップ企業SeaWithは、2022年末までに培養肉のテスト販売を…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

精密発酵ミニレポート発売のお知らせ

最新記事

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(12/30 16:29時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(12/31 03:09時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(12/31 06:46時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(12/30 22:28時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,980円(12/31 14:28時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(12/31 01:52時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP