アグテック

農業に塩水を活用するRed Sea Farmsが約17億円を調達、北米展開も視野に

 

作物の栽培に塩水を活用するRed Sea FarmsがシリーズAで600万ドル(約6億5000万円)を追加調達した。これは6月の1000万ドルの調達に続くもので、本ラウンドの調達総額は1600万ドル(約17億円)となる。

ラウンドにはサウジアラムコ(サウジアラビアの国有石油会社)のベンチャー部門Wa’ed、サウジアラビア政府によるFuture Investment InitiativeKAUSTGlobal Venturesが参加した。

今回の追加ラウンドではアメリカのベンチャーキャピタルBonaventureとアグテック企業のAppHarvestが600万を出資した。

サウジアラビアのキング・アブドラ科学技術大学(KAUST)のスピンオフベンチャーであるRed Sea Farmsは、灌漑に塩水を利用するシステムを開発している。

出典:Red Sea Farms

90%の塩水と10%の淡水で水耕栽培することで、水が豊富でない地域に有効な農業手段を提供する。栽培に塩水を活用するだけでなく、温室の蒸発冷却にも塩水を利用することで、温室運営に伴うエネルギー・水消費の削減を可能にする。

公式サイトによると、塩水を活用した栽培・冷却機能によって、淡水とエネルギーの使用を最大10分の1に削減できるという。

Red Sea Farmsは現在、サウジアラビアに3つの施設を保有している。6月の資金調達時には、サウジアラビア中西部に6ヘクタール(6万㎡)を超える商用農業施設を建設することを発表した。サウジアラビアでは自社ブランドのトマトを販売している。

今回の追加調達は、同社がサウジアラビアと中東で事業を拡大するだけでなく、栽培環境が厳しいアメリカでの事業機会を模索するうえでも追い風となる。

出典:Red Sea Farms

ラウンドに参加したAppHarvestはアメリカ、アパラチアに世界最大の屋内農場を建設しているアグテック企業。従来の農業技術と最先端の技術を組み合わせ、より持続可能な農業、自家栽培の食品供給の構築など重要な問題に取り組んでいる。

同社が所有するケンタッキー州モアヘッドにある60エーカー(24万㎡)の施設は、アメリカ最大の屋内農場の1つとされる。Red Sea Farmsが塩水を活用するのに対し、AppHarvestは温室に雨水を再利用している。

今回のラウンドは、目標額1000万ドルを大幅に上回る結果となった。

「目標金額を大幅に上回ったことに感激しています。投資家や同社のチームと緊密に協力し、サウジアラビア、中東、北アメリカで当社の技術を展開する計画を加速するのを楽しみにしています」。

(Red Sea Farms CEOのRyan Lefers氏)

 

参考記事

Red Sea Farms Raises an Additional $6M to Grow Crops With Saltwater

Saudi-based sustainable AgTech firm Red Sea Farms, a salt-water growing specialist, receives $10m investment

Red Sea Farms raises additional $6 million in pre-Series A round

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Red Sea Farms

 

関連記事

  1. Calystaの単細胞タンパク質FeedKind、水産養殖への使…
  2. ゲノム編集で食・農業の変革を目指す米Pairwiseが新たな戦略…
  3. 二酸化炭素からタンパク質を作る英ディープ・ブランチ、アイスランド…
  4. マイクロ流体チップによる農業用栄養分析デバイスを開発したNord…
  5. 米Pairwise、CRISPR技術により世界初の種なしブラック…
  6. 英Tropic、「12時間変色しないバナナ」をゲノム編集で開発|…
  7. Marsapet、Calystaの単細胞タンパク質「FeedKi…
  8. 米Apeel Sciencesがアボカドの熟度を即座に把握する新…

おすすめ記事

Current Foodsが生食用代替シーフードのDtoC予約販売受付を開始

代替シーフードを開発・製造するアメリカ企業Current Foods(旧Kule…

米培養肉Upside Foods、培養肉用のアニマルフリーな増殖培地を開発

アメリカの主要な培養肉企業Upside Foods(旧称メンフィスミーツ)はアニ…

チリのユニコーン企業NotCoが約259億円を調達、アメリカに続き欧州・アジアを目指す

代替ミルクなどプラントベース食品を開発するチリのユニコーン企業NotCoがシリー…

Helaina、精密発酵によるラクトフェリンの商用化へ移行、機能性食品参入に意欲

アメリカのバイオテック企業Helainaは、精密発酵によるラクトフェリンの生産に…

フードテック現地レポート会・セミナー動画|2024年10月開催

2024年10月に開催した第15回Foovoセミナーの動画です。たくさんの方にご…

ジャガイモで乳タンパク質を開発|イスラエルのFinally Foodsがプレシード資金を調達

イスラエルの植物分子農業企業Finally Foodsは今月、The Kitch…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(04/15 15:00時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(04/16 00:46時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(04/16 04:45時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(04/15 21:00時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(04/15 13:04時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(04/16 00:01時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP