イスラエルの培養肉企業Steakholder Foods(旧称MeaTech)とシンガポールの培養シーフード企業Umami Meatsは今月、3Dプリントされた培養ウナギと培養ハタ製品を共同開発するために最大100万ドルとなる助成金を獲得した。
これは、シンガポール・イスラエル産業研究開発財団(SIIRD)から資金提供されるもので、培養肉の販売が世界で唯一認可されているシンガポールでの培養魚製品の商用化を後押しするものとなる。
SIIRDは、エンタープライズ・シンガポール(ESG)とイスラエル・イノベーション庁が1997年に設立した二国間連携プログラムで、シンガポールとイスラエルに拠点を置く企業間の共同研究や市場投入を促進、支援している。
Steakholder FoodsとUmami Meatsが培養シーフード製品開発のための助成金を獲得
二社の提携では、構造化された培養魚製品を生産するための拡張可能なプロセスの開発を目的としている。Steakholder Foodsは新たに開発した技術を活用して、調理済みの魚フレークが持つ食感の再現を目指しており、最近これに関する仮特許出願を提出している。
シンガポールを拠点とするUmami Meatsは、ウナギ、キハダマグロ、タイなどの培養魚を開発しており、昨年には培養つみれや培養フィッシュケーキなどのプロトタイプを発表した。最近では、1つの幹細胞から筋肉、脂肪を構築する独自の間葉系幹細胞技術を開発し、特許出願している。
二社は今年第1四半期までに、最初のプロトタイプとなる構造化された培養ハイブリットハタ製品を完成させる予定。この製品は、Steakholder Foods独自の3Dプリンティング技術とUmami Meatsの細胞にカスタマイズされたバイオインクを活用して製造されるという。
Steakholder Foodsで事業開発部長を務めるYair Ayalon氏は今回の助成金獲得について、「Umami Meatsとの提携は、魚の食感に関する最近の特許出願に続く重要なもので、イスラエルとシンガポール両政府のイニシアティブの支援を受けており、その一員であることを非常に誇りに思います」とコメントしている。
2023年はバイオ3Dプリンターの商用化に注力
Steakholder Foodsは2023年の事業戦略として、提携や協業を通じて、バイオ3Dプリンターの商用化に焦点をあてることを発表している。
同社は昨年、関連する知的財産ポートフォリオを拡大しながら、独自のバイオ3Dプリンターの開発にリソースを投入した。昨年後半には、3大陸における国際会議やイベントでバイオ3Dプリンターを展示し、バイオ3Dプリンターの実演を披露した。
Steakholder Foodsはこうした取り組みを通じて寄せられた関心を活かし、バイオ3Dプリンティング能力の商用化を目的とした協業や戦略的パートナーシップを加速することを計画している。
上記のプラットフォーム事業の強化と並行し、Steakholder Foodsは今年、シンガポール、アメリカ、欧州での販売認可の取得を目指している。
今回の発表とこれまでの報道から、Steakholder Foodsは製品事業ではなく、他社が培養肉を生産するのを支援するプラットフォーム事業としてバイオ3Dプリンターを商用化し、これを通じた培養肉の大量生産を目指していると考えられる。
同社はUmami Meatsのほかにも、2021年に培養肉製品の共同開発でイスラエルの小売・食肉生産者であるTivTa’amと提携している。Steakholder Foodsが他の培養肉企業との提携を拡大する可能性は高く、今後は食品企業との提携も強化されていくと予想される。
参考記事
関連記事
アイキャッチ画像はイメージ写真