精密発酵企業9社が今月、精密発酵組合(Precision Fermentation Alliance)を設立したことを発表した。
同業界団体は、より柔軟で持続可能な食品システムのための信頼できるソリューションとして、精密発酵を支援する新しい業界団体となる。
パーフェクトデイ、Change Foods、The EVERY Company、Helaina、Imagindairy、Motif FoodWorks、New Culture、Onego BioおよびRemilkの9社から構成される精密発酵組合は、「精密発酵産業のための業界の声とグローバルな呼びかけ人」として機能することを目的としている。
精密発酵スタートアップ9社が新たな業界団体を設立
微生物を活用してタンパク質、脂肪、着色料など目的成分を生成する方法を精密発酵といい、近年、参入企業が急増している。
市販されている精密発酵由来の食品成分には、パーフェクトデイのホエイタンパク質や、The EVERY Companyの卵白タンパク質などがあり、乳タンパク質を中心にアメリカ・シンガポールで上市が進んでいる。
精密発酵は、牛や鶏を育てて乳タンパク質、卵白タンパク質を収穫する代わりに、必要な成分だけをボトムアップ式に生産できる点で、非常に柔軟性があり、環境負荷の軽減効果も確認されている。
海外シンクタンクのRethink Xは、2030年には牛由来の乳タンパク質の生産コストは精密発酵タンパク質の約2-3倍になり、アメリカの乳製品需要の9割が精密発酵由来になると予想している。
1社ができることを指数関数的に加速
精密発酵組合は次の目標を掲げている。
- 精密発酵技術の理解を促進する。信頼と理解を深めるため、精密発酵で生成された原料や食品に関するグローバルな透明性を確立する。
- 規制、製造、食品の安全性、情報の基準・コンプライアンスに関するベストプラクティスを確立するため、食品業界のバリューチェーン全体で主要な利害関係者を教育し、参画させる。
- 規制当局と連携することで、市場へのアクセスと、製品を効果的に運用、販売する能力を開発する。公的資金と官民パートナーシップを解放し、業界の成長を加速させる。
パーフェクトデイの企業広報副部長を務めるNicki Briggs氏は、「この組合は、私たちが信じてきたことを成文化しました。つまり、より環境に優しい未来は、協業によって可能になるということです。同じ使命を持つリーダーから構成されるこのエコシステムは、一人のメンバーができることを指数関数的に加速させます」と述べている。
政策・規制の制定を促進
精密発酵組合は、食品用の精密発酵製品・技術に関連する規制が、科学に基づいた意思決定と確かな情報に基づいた公共政策によって規定されるよう、重点的に取り組むとしている。同団体はまた、精密発酵産業に関連するグローバルな課題を議論するフォーラムも開催するとしている。
「私たちの多くは、ビタミン、酵素や天然の香料など、精密発酵で作られた成分を含む食品をあまり意識することなく、数十年にわたり消費しています。私たちはこの技術の使用を拡大し、タンパク質や脂肪など消費が拡大している食品成分の作成を目指していますので、消費者におなじみのさまざまな食品を、動物を使わず、環境に対する負荷を減らして生産できるようになります」と、Change FoodsのCMO(最高マーケティング責任者)であるIrina Gerry氏は述べている。
同氏はさらに、「食品の新時代の先がけになるには、明快なコミュニケーション、十分に考えられた政策、一貫した規制、利害関係者の関与が必要であり、この組合はこれを行うことを目指しています」と述べ、精密発酵が直面する規制、政策、消費者受容の課題に向けて、複数企業で取り組む必要性を強調している。
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アイキャッチ画像の出典:Precision Fermentation Alliance