代替プロテイン

スペインのLibre Foodsが菌糸体由来の代替鶏胸肉を発表、2024年に発売へ

 

菌糸体を活用して代替肉を開発するスペイン企業Libre Foodsは先月、欧州初となるホールカットの菌糸体由来の代替鶏胸肉を発表した。Green Queenが報じた

Libre Foodsは2年前、ホールカットの代替牛ステーキ肉を開発すると発表していたが、牛肉を再現する複雑さを認識した後、ベーコンに軸足を移行。その後、代替ベーコンに使用していた菌糸体が欧州で新規食品に該当していることが判明したため、当該菌糸体を使用しないキノコ由来のベーコンを昨年発表し、現在スペインの30箇所以上で展開している。

今回報じられた代替鶏胸肉は、欧州の新規食品に該当しない菌糸体を使用することで規制の障壁を回避しているようだ。Libre Foodsは2024年始めに製品の発売を目指している。具体的に使用している菌類については明らかにされていない。

スペイン30箇所以上で代替ベーコンを販売

出典:Libre Foods

Libre Foodsの代替ベーコンは今年7月末の時点で、バルセロナ5箇所、マドリード4箇所、コペンハーゲン1箇所、バレンシア1箇所、メノルカ島1箇所など、スペインの30以上のレストランで販売されている。

その後もバルセロナのバーガーショップLA BURGUESAなど提携パートナーを拡大している。Green queenによると、提携レストランで販売されているベーコンの維持率は100%近くと、高い評価を得ていることがうかがえる。

Libre Foodsはスペイン国内で導入エリアを拡大し、リピーターを獲得していることから、来年発売予定の菌糸体鶏胸肉も好調なスタートを切ると思われる。

菌糸体由来の肉・シーフードの現在地

出典:Libre Foods

菌糸体をベースに作られる代替肉は、天候に左右されず施設内で年間を通して生産できるほか、成長が速く、肉らしい繊維構造を持つことを特徴とする。

畜産肉の生産と比較して必要となる土地・水が少なく、排出される温室効果ガスが少ないことから持続可能な食料システムとして注目される。

菌糸体から代替肉、代替魚を開発する取り組みは世界的に増加傾向にある。

イギリスのQuorn以外で良く知られる企業は、アメリカのMeati FoodsMyForest Foodsだ。

Meati Foodsは今年8月、全米のホールフーズで代替肉を発売したが、9月には収益向上のため、人員削減とパイロット工場の閉鎖が報じられた

MyForest Foodsは菌糸体由来のベーコンを展開している。MyForest Foodsは昨年、年産約1300トンの新工場を開設し、100を超えるニューヨーク・ニューイングランドの小売店で主力製品「MyBacon」を販売している。今後は菌糸体由来の「MyJerky」の発売を計画しているようだ。昨年開設した工場に続き、Whitecrest Mushroomsと協力してカナダに2番目となる工場開設も予定している。

出典:Adamo Foods

イギリスのAdamo Foodsは、市場におけるホールカット製品の不足に着目し、菌糸体を使用したホールカット肉を開発している。今年6月にヘルシンキで開催された第1回国際細胞農業会議で代替ステーキ肉を発表した。

代替肉以外では、ドイツ企業Esencia Foodsが今月ドイツ、ケルンで開催されたANUGA 2023で、欧州初となる菌糸体由来シーフードの試食会を開催した。Esencia Foodsは昨年菌糸体由来のサーモンを開発していたが、ANUGAでは白身魚を模したフライが発表された。Green queenによると、すでにタラやシーバスのプロトタイプを完成しているという

菌糸体シーフードではアメリカのAqua Cultured Foodsが代表的だ。同社は今年4月、代替マグロ、エビ、ホタテの試食会を開催した。同月に550万ドル(約8億2,300万円)のシード資金を調達し、年内にレストラン・フードサービスでの発売を目指している

欧米以外でも、中国で昨年菌糸体タンパク質に取り組む企業が登場するなど、参入企業が増えているこの領域に今後も注目だ。

 

参考記事

Exclusive: Mycelium Startup Unveils ‘EU-First’ Whole-Muscle Cut Chicken Breast

Is Fungi The Future Of Bacon? We Tasted Libre Foods’ Animal-Free Rashers To Find Out

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Libre Foods

 

関連記事

  1. 代替シーフードのAqua Cultured Foods、スイスの…
  2. Finless Foodsが約40億円を調達、培養マグロの製造と…
  3. 精密発酵スタートアップが欧州の「不透明な」規制枠組みの改善に向け…
  4. Avant Meatsが中国バイオ医薬品企業QuaCellと提携…
  5. カーギルがマイコプロテインの英ENOUGHと販売契約を締結
  6. Daisy Labがシード資金を調達、今年半ばに精密発酵プロトタ…
  7. シンガポール・イスラーム評議会、特定条件下で培養肉をハラールと認…
  8. インテグリカルチャー、アヒル由来の細胞培養食品の試作品を発表-官…

おすすめ記事

培養肉スーパーミートと欧州大手養鶏企業PHW、培養肉の欧州導入で合意

テルアビブを拠点とする培養肉企業スーパーミート(SuperMeat)は、欧州市場…

ビール酵母をアップサイクルして代替タンパク質を開発するRevyve、今年商用生産を開始予定

代替タンパク質開発において、アップサイクルを取り入れる企業が増えている。…

デンマークの21st.BIO、アメリカで精密発酵ホエイのGRAS自己認証を取得

2024年12月27日:後半のスライドを一部修正・追記デンマークの21s…

スペインの食品メーカーGrupo Palacios、精密発酵卵タンパク質を使用したオムレツ開発でThe EVERY Companyと提携

世界で初めて精密発酵による卵白タンパク質の販売を実現した米The EVERY C…

ノルウェー研究評議会が5年間の細胞農業プロジェクトに出資、培養肉・精密発酵による食品開発強化へ

ノルウェーの国家研究戦略を決める政府系機関ノルウェー研究評議会(The Rese…

英Hoxton Farmsが住友商事と提携、日本を含むアジア市場への培養脂肪導入を目指す

2025年4月1日更新豚の培養脂肪を開発する英Hoxton Farmsが先月27日、アジア市…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(05/08 15:05時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(05/09 00:56時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(05/09 04:56時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(05/08 21:05時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(05/08 13:11時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(05/09 00:11時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP