代替プロテイン

精密発酵の米パーフェクトデイ、約130億円の資金調達とともに創業者が退任、暫定CEOが就任

精密発酵による食品開発を牽引してきたパーフェクトデイ創業者のRyan Pandya氏(左)とPerumal Gandhi氏(右)(出典:Perfect Day)

 

精密発酵のパイオニア企業である米パーフェクトデイ(Perfect Day)が今月5日、プレシリーズEラウンドで9,000万ドル(約130億円)を調達したことを発表した。これにあわせ、Ryan Pandya氏Perumal Gandhi氏の創業者2名が経営事業から辞任することが発表された

AgFunderGreen queenなどが報じた。

暫定CEOには、同社現会長のTM Narayan氏が就任するという。

プレスリリースによると、パーフェクトデイは今後数週以内に精密発酵ホエイを使用する大手CPGパートナー企業の発表を予定している。さらに、精密発酵の影響力をさらに多くの製品と市場にもたらすと予測される、「新たな分子」の発表も予定している。AgFunderによると、この分子は同社が2022年9月に始動したバイオロジーサービスnth bioで作られたものだという。

今回の資金調達は2021年に約390億円(当時)を調達したシリーズDラウンドに続くものとなる。

パーフェクトデイの創業者が退任、収益化へ注力

出典:Perfect Day/Bored cow

2014年に設立されたパーフェクトデイは、牛に頼るのではなく、微生物を活用して独自のアニマルフリーな乳タンパク質を開発、2020年に世界で最初に精密発酵乳タンパク質を発売した企業だ

同社はこれまで子会社The Urgent Companyを通じ、Brave RobotModern KitchenCalifornia Performance、2022年初頭に買収したCoolhausなどのブランドで、アイスクリーム、クリームチーズ、スポーツ用栄養製品などさまざまな代替乳製品を市場に投入してきた。

会社のプレゼンスをさらに強め始めた2021年のスターバックスによる導入を始め、2022年12月にはネスレがパーフェクトデイのタンパク質を使用して精密発酵ミルクを試験販売するなど、大手食品メーカーとの提携も広く展開してきた。その進出市場は、アメリカ香港シンガポールに及び、インドでも認可を取得した。

2023年4月時点でのパーフェクトデイ乳タンパク質の上市状況一覧 ピンク色の部分が子会社The Urgent Companyによるブランド製品 Foovo作成

The Urgent Companyを通じたD2Cを幅広く展開していた同社が、The Urgent Companyを閉鎖し、B2B事業にシフトするため従業員の約15%を解雇したことが報じられたのは昨年7月。

8月にはSuperlatusがThe Urgent Companyと同社の消費者ブランドを買収することが報じられたが、買収したというニュースは確認されていない。パーフェクトデイの乳タンパク質を使用した一部の製品は現在も販売が確認されており、大手食品メーカーの中でも長期販売している事例は確認されている

パーフェクトデイはプレスリリースの中で、「技術的リスクの回避に成功し、現在、発酵由来の乳タンパク質の大量生産に注力しつつあります。これにより、収益性への明確な道筋を示し、発酵で作られた最初のホエイタンパク質のユニットエコノミクスを証明します」と述べ、採算性の向上に努める姿勢を示している。

注目される精密発酵による食品開発

出典:Perfect Day

Foovoの調査では、微生物を生産工場として活用する精密発酵で食品開発に取り組む世界の企業は2022年には50社ほどだったが、現在は80社以上が確認されている。その多くが乳製品に焦点をあてているが、近年、脂肪を開発する企業も増えている。

現在、販売されているのは乳タンパク質ホエイ(β-ラクトグロブリン)、卵白タンパク質、甘味タンパク質、レグヘモグロビンなどだ(各企業と認可取得状況はこちらにまとめている)。

昨年11月、TurtleTreeがウシラクトフェリンでGRAS自己認証を取得したため、今後はウシラクトフェリンも市場に流通していくだろう。

乳タンパク質では特に、ホエイに続き、乳タンパク質の8割を占めるカゼインの上市が期待される。

カゼインの開発では、米New Culture、オーストラリアのEden BrewChange Foods、タイのMuu、オランダのFooditive、エストニアのProProteinなど多くの企業が確認されている。

精密発酵による食品開発を先頭に立ち、牽引してきたパーフェクトデイの今後に注目したい。

 

参考記事

Perfect Day Accelerates Next Chapter of Impact with Pre-Series E of up to $90 Million and Leadership Updates (プレスリリース)

Exclusive: Perfect Day founders step away as company finalizes ~$90m pre-series E, installs interim CEO

Animal-Free Dairy Pioneer Perfect Day Raises Up to $90M & Brings On New Exec Team to Pursue Profitability

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Perfect Day

 

関連記事

  1. Remilkの精密発酵乳タンパク質がシンガポール当局の認可を取得…
  2. 藻類で培養肉用培地のコストダウンを図る東京女子医科大学、培養廃液…
  3. インポッシブルフーズがオーストラリア・ニュージーランド進出へ向け…
  4. 「発酵」で免疫力のある代替母乳の開発に挑むアメリカ企業Helai…
  5. オーストラリアのAll G、中国本土で精密発酵ウシラクトフェリン…
  6. Calystaの単細胞タンパク質FeedKind、水産養殖への使…
  7. デンマークの精密発酵企業21st.BIO、持続可能な乳タンパク質…
  8. ビヨンドミートが代替鶏肉ビヨンドチキンテンダーを北米で発売

おすすめ記事

培養肉アレフ・ファームズ、安価でオープンな増殖培地の開発でWACKERと提携

イスラエルの培養肉企業アレフ・ファームズとドイツの化学メーカーWACKERは、培…

オランダの培養肉企業Meatableが培地の共同開発でDSMと提携

オランダの培養肉企業Meatableは、手頃な培地の共同開発でオランダの総合化学…

Numilkが家庭用植物ミルクメーカーを発表、クラファンの累計支援額は目標の2倍以上に

感染が拡大する新型コロナウイルスの影響を受け、トッピングやカスタマイズが自由な次…

Moolec Science、豚タンパク質を作る大豆「Piggy Sooy」で米国農務省の承認を取得

2024年10月18日追記これまでの動きから、YEEAプロジェクトは高い可能性で精密発酵に関…

ソーラーフーズ、CO2由来の微生物タンパク質「ソレイン」で米国GRAS自己認証を取得

フィンランドのソーラーフーズ(Solar Foods)が、二酸化炭素を原料とした…

米Lypid、独自のビーガン脂肪を使用した代替豚バラ肉Lypid Pork Bellyを米・アジアで発売

植物肉向けの代替脂肪を開発する米Lypidは4月、独自の代替脂肪を使用した植物性…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(07/26 15:29時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(07/26 01:28時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(07/26 05:26時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(07/26 21:33時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(07/26 13:31時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(07/26 00:38時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP