代替プロテイン

英Meatlyが培養キャットフード製品を発表、3ヶ月以内の承認を期待

 

細胞培養によるペットフードを開発する英Meatly(旧称Good Dog Food)は今月、持続可能なペットフードを開発するOmniと協力し、培養鶏肉を使用した培養ペットフード缶の開発を発表した

The Sunday Timesの報道によると、Meatlyは現在、英国環境・食糧・農村地域省の承認を待つ状態にあり、3ヶ月以内に承認される見込みだという。

培養肉はこれまでシンガポール、アメリカ、イスラエルで販売が認められている。イギリスで最初に発売される培養肉は、人間用ではなく、ペットフード製品になるかもしれない。

Meatlyはイギリスで発売を実現した後、アメリカ進出も視野にいれている

Meatlyがハイブリッドな培養キャットフードを製造

出典:Meatly

Meatlyは、培養肉企業に細胞株を提供してきたRoslin Technologiesと、多くの細胞農業企業に出資するベンチャーキャピタルAgronomicsとの合弁会社として、2022年に設立された。同社は昨年10月、イギリスでの発売に向けて、社名をMeatlyに変更した

MeatlyはAgronomicsのほか、イギリスの大手ペット用品小売業者であるPets at Homeから出資を受けている。当局が販売を認めると、Pets at Homeが培養ペットフードを店舗で販売する最初の小売業者になる可能性がある。

MeatlyはB2B販売に向けて、豆類、藻類、酵母タンパク質などを使用した植物性ドッグフードを開発してきた2020年設立のスタートアップ企業Omniと協力した。Omniの豆類、野菜に培養肉を混合し、ウェットタイプの培養キャットフードを製造した。

1缶150グラムで約1ポンド(約190円)の価格になるという。同社は今後、犬用の製品開発も計画している。

Meatlyの共同創業者兼CEO(最高経営責任者)のOwen Ensor氏はプレスリリースで、「世界で生産される食肉の20%をペットフードが占めており、需要の拡大に伴い、この業界が環境に与える影響も増大しています」と述べ、高まるペットフード需要がもたらす地球環境への影響を指摘している。

動物に依存せず、少ない資源で作られる培養肉は、従来のペットフードに代わる持続可能なオプションになる可能性を秘めている。

人間向け製品の課題を回避できる培養ペットフード

出典:Meatly

Meatlyの公式サイトによると、1個の鶏卵から採取した細胞を除き、生産プロセスではウシ胎児血清(FBS)、動物血清など動物由来成分は使用していない。製造では食品成分として安全と認められた成分のみを使用しており、マイクロキャリア、足場、成長因子も使用していないという。

培養ペットフードは構造化、食感の面で、人間向けの製品が直面する課題を回避できるメリットがある。こうした「ショートカット」のメリットに着目し、培養魚企業のUmami Bioworksのように、人間向け製品と並行してペットフード業界への参入を目指す企業もある。

同社のほかにも、Wild EarthBiocraft NutritionBene Meat Technologiesなどの企業が確認されている。タンパク質全体に目を向けると、精密発酵ミオグロビンでペットフード業界への参入も目指すPaleoや、菌糸体タンパク質でドッグフードの試作を実施する企業などさまざまだ

犬、猫などペットは人間よりも嗅覚が鋭い。こうした鋭い感覚特性に訴える成分は、ミオグロビン、動物タンパク質に限らない。

昨今、増加傾向にある細胞培養や精密発酵による動物脂肪企業でも、2023年の1,033億ドルから、2030年には1,392億ドルになると予想されるペットフード市場への参入を目指す企業が出てくる可能性があるとFoovoは考えている。

 

参考記事

Britain’s first lab-grown meat: it’s for cats(プレスリリース)

Britain’s first lab-grown meat: it’s for cats

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Meatly

 

関連記事

  1. Calystaの単細胞タンパク質FeedKind、水産養殖への使…
  2. オレオゲルで植物肉用の代替脂肪を開発するParagon Pure…
  3. ひよこ豆タンパク質粉末を開発するChickPが約9億円を調達
  4. ビールの醸造で発生する廃棄大麦をアップサイクルするReGrain…
  5. 米イート・ジャスト、年内または2022年に30億ドルのIPOを目…
  6. 韓国政府、2022年の国家計画に培養肉のガイドラインを追加
  7. イスラエルのSuperMeat、培養肉の生産コスト削減を発表-1…
  8. 培養肉企業21社の生産工場・稼働状況まとめ-2022年11月時点…

おすすめ記事

米InnerPlantが自らSOSを出す植物 InnerTomatoを開発、病気の早期発見に

(▲左は通常のトマト、右が昆虫の攻撃を受けたInnerTomato。通常のトマトは発光しないが、In…

インポッシブルフーズがオーストラリア・ニュージーランド進出へ向け準備

代表的な米代替肉企業インポッシブルフーズが1年以内に株式上場すると言われるなか、…

Evo Foodsとギンコ・バイオワークス、アニマルフリーな卵タンパク質の開発で提携

海外では動物に頼らずに食品成分を作る手法として、精密発酵が人気の手法になりつつあ…

Moolec Science、ウシミオグロビンを生成するエンドウ豆で米国農務省の承認を取得

ルクセンブルクに拠点を置く植物分子農業企業Moolec Scienceは今月、米…

Shiruが「見た目も挙動も動物油脂のような」植物性代替脂肪「OleoPro」を発表 

カリフォルニアを拠点とするフードテック企業Shiruは、最初の製品となる代替脂肪…

米January AI:血糖値モニターを使用せずに血糖値を予測する世界初のアプリを発表

毎回の食事で血糖値への影響が気になる人に、事前に食品が血糖値に与える影響を予測分…

精密発酵レポート・予約注文開始のお知らせ

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovo Deepのご案内

精密発酵レポート・予約注文開始のお知らせ

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(11/21 14:06時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(11/20 23:44時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(11/21 03:26時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(11/20 20:01時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(11/21 12:17時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(11/20 23:02時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP