フィンランド企業ソーラーフーズ(Solar Foods)は今月15日、代替タンパク質ソレインを商用生産するための工場Factory 01の稼働開始を発表した。
ソーラーフーズはこれまで、フィンランド首都ヘルシンキ近郊のエスポ―にあるパイロット施設でソレインを製造してきた。Factory 01の稼働により、年間最大160トンのソレインを製造できるようになり、食品メーカーがソレインを使用した製品を量産するためのソレイン供給が可能になる。
今回の記事では、工場稼働のニュースに加え、シンガポールでソレインを料理に使用中の現地レストランを訪問した結果をお伝えする。
ソーラーフーズ、工場Factory 01を稼働
フィンランド、バンターにあるFactory 01は、二酸化炭素、電気、微生物(水素細菌)から作られるタンパク質ソレインを商用生産する同社初の工場となる。
微生物発酵を利用したタンパク質生成には大きく、精密発酵、バイオマス発酵がある。
ソーラーフーズは微生物に餌として水素、酸素、二酸化炭素を与え、微生物が二酸化炭素を炭素源として利用して体内に蓄積した炭素化合物を粉末にしており、バイオマス発酵といえる(同社プロセスはガス発酵とも呼ばれる)。
同工場には20,000Lのバイオリアクターが設置されている。プロセスでは、敷地内の電解槽から供給される水素と、工場のDAC技術によって回収された二酸化炭素を使用。これにより、寒冷なフィンランドでも年間を通じて、農業と切り離されたタンパク質製造が可能になる。
同社はFactory 01の運営を通じて得られたデータをもとに、Factory 02の計画も進める考えだ。
年に500万~800万食のソレイン使用食を提供可能に
ソーラーフーズは2022年11月にシンガポールでソレインの販売認可を取得した。アイスクリーム、チョコレートバーの提供に続き、最近では中華レストランとのコラボを実施しているが、Foovoの現地調査(後述)では量・食事の範囲ともに提供は限定的だった。
Factory 01の稼働により、年に500万~800万食のソレインを使用した食事を提供可能になり、食製品への適用が拡大する。
同社共同創業者兼CEO(最高経営責任者)のPasi Vainikka氏は、「消費者に少量を提供することはできましたが、地元のスーパーでソレインを使用した食品を見つけることは不可能でした。まもなくそれが可能になります」と述べている。
ソーラーフーズはシンガポールに続き、EU、イギリス、アメリカなど主要市場での認可取得を目指している。当面の目標として、2024年後半のアメリカ市場進出を目指している。
ソレインを料理に使用中という現地レストランを訪問
ソーラーフーズは今月、シンガポールの中華レストラン「Chengdu Bowl」で、ソレインを使用した2メニューの提供開始を発表した。プレスリリースによると、4月2日から新しいビーガンメニューが導入され、3ヵ月間提供される。
そこで今月14日、タンジョンパガー通りにある「Chengdu Bowl」を訪れてみた。プレスリリースに掲載されていた2メニューを注文したが、結論を先にいうと、本当にソレインが使用されていたか、最後まで自信を持てなかった。
まず、メニュー・店内に「Solein」の記載がどこにもない(プレスリリースには「Mapo Tofu with Solein」「Spicy and Sour Soup with Solein」と「Solein」の記載がある)。
ホールスタッフに聞くと、ソレインのことを知らなかった様子で、厨房に確認してくれた。
戻ってきたスタッフは、ソレインを使用した料理は、「Mapo Tofu」「Sichuan Spicy and Sour Soup」だと教えてくれた。しかし、「Mapo Tofu」にはビーガンを示す「素」の表記があるが、「Spicy and Sour Soup」にはない。ソレインについて初耳だった様子から、そうだと言われても納得できない。
以前、ソレイン使用のジェラートを提供したレストラン「Fico」はインスタグラムでソレインに言及していたので、「Chengdu Bowl」のインスタグラムを見てみるが、言及はない。公式サイトにもない。住所を何度も確認するが、ここで正しい。
スタッフがそうだというのに、さらに追及するのははばかられたので料理を分析してみる。
プレスリリースで「Spicy and Sour Soup with Solein」(酸辣湯)は、卵と肉をソレインに置き換えたと記載されている。この「置き換え」はソレインで卵、肉らしいものを生成するのか、単に相当するタンパク質をソレインで置き換えるという意味なのか読み取れず、ソレインを使用しているのかやはりわからなかった。
せっかく店まで行ってみたものの、自分が食べたものがソレイン使用の料理なのか確信が持てず残念だった(料理自体は美味しかった)。もしかしたら、予定よりも提供が遅れているだけで、今後「Chengdu Bowl」で提供するのかもしれない。あるいは、店内で特に言及せずにすでに提供しているのかもしれない(現地で何か新しい情報をお持ちの方がいたら教えてもらえると嬉しい)。
これをふまえると、Factory 01の稼働は、ソレイン使用食品の流通拡大を促進するものとなり、農業と切り離された新しいタンパク質へのアクセスを容易にする。ソーラーフーズはソレインを使用した製品開発・試験販売で味の素と提携しており、今後の動向を注視していきたい。
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アイキャッチ画像の出典:Solar Foods