アップサイクル

ソーラーフーズ、CO2由来の微生物タンパク質「ソレイン」で米国GRAS自己認証を取得

 

フィンランドのソーラーフーズ(Solar Foods)が、二酸化炭素を原料とした代替タンパク質ソレインについて、アメリカでGRAS自己認証ステータスを取得したと発表した

同社は2022年9月にシンガポールでソレインの販売認可を取得し、これまでに味の素Fazerなど有名企業とコラボして、ソレイン使用食品の限定販売をシンガポールで実施してきた

GRAS自己認証ステータスの取得について同社は、「ソレインの商用化とアメリカ市場進出に向けた重要な一歩」だと述べた。

ソレイン、年内にアメリカで販売へ

今年8月に味の素がシンガポールで販売したソレイン使用の月餅 出典:Solar Foods

ソレインは、二酸化炭素、電気、微生物(水素細菌)から作られるタンパク質で、二酸化炭素を原料に使用するため、空気タンパク質とも呼ばれる。

二酸化炭素を原料とするため環境負荷を軽減し、工場があれば理論的に地球上のあらゆる場所でタンパク質生産を可能にするため、持続可能なタンパク質として期待されている。革新的な生産方法だが、大部分の市場では新規食品に該当するため市販前承認が必要となる。

今回の発表は、ソーラーフーズが目指してきたアメリカ市場進出に向けた重要な節目となる。

ソレイン商用化に向けた次のステップとして同社は、今年4月に稼働を開始したフィンランドの自社製造施設「Factory 01」をアメリカ食品医薬品局(FDA)に登録する予定だ。これはアメリカで消費される食品の製造、加工、包装などに関わる施設は、FDAへの登録が義務付けられているためとなる

FDAに施設登録することで、「Factory 01」からアメリカへ食品の輸出を開始できるようになる。

ソーラーフーズはGRAS自己認証に続き、製造施設登録が完了次第、年末までにアメリカでの販売を開始する予定だ。

以上のステップを経て、ソレインの販売が実現する予定だが、ソーラーフーズはFDAによる安全性のお墨付きとなる、GRAS認証取得も目指している。

GRAS自己認証ステータスの場合、FDAへの通知は任意となるが、GRAS自己認証を宣言していても、要件を満たしていないことが判明した場合、法律違反によりFDAによる執行の対象となる。また、GRAS認証はFDAが安全性を正式に認めたことを意味するため、信頼性担保のためにこのステップに進む企業は多い

ソーラーフーズも、潜在顧客がGRAS認証を要求する可能性があるためGRAS認証を取得する考えであり、2026年末までの取得を見込んでいる。

EUでは2026年の認可取得を見込む

2023年にシンガポールで販売されたソレイン使用のアイスクリーム 出典:Solar Foods

ソーラーフーズはEU、イギリスでも新規食品申請を完了し、EUでは2026年の認可取得を見込んでいる

同社は先月、フィンランドのNasdaq First North Growth Marketへの上場計画を発表。この時のプレスリリースでは、ソレインと並行して「新製品」も開発中で、「新製品」に対する新規食品の規制プロセス開始も継続的に評価していると言及していた。

この「新製品」は昨年9月に発表された、二酸化炭素と水素細菌から乳タンパク質を作る精密発酵プロジェクトではないかとFoovoは見ている。

同社は長期計画として、「Factory 01」の50~100倍の生産能力を見込む「Factory 02」の建設も予定している。今回のGRAS自己認証ステータスにより、他の市場での認可取得、「Factory 02」に向けた資金調達に弾みがつきそうだ。

ソーラーフーズように二酸化炭素からタンパク質を作る企業には、Aerbio(旧称Deep Branch)、NovoNutrientsAir ProteinAvecomJooulesなどがある。

国内では、今年5月に約28億円を調達したCO2資源化研究所が富士フイルムと、アラニン(アミノ酸の一種)の量産化技術で共同研究を行うなど、近年取り組みが増えている。

 

参考記事

Solar Foods obtains self-affirmed GRAS status for Solein® in the United States

Solar Foods is planning a listing on the Nasdaq First North Growth Market Finland marketplace

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Solar Foods

 

関連記事

  1. イスラエルのSteakholder Foods、3Dプリンターで…
  2. 【現地レポ】Perfect Dayの精密発酵乳タンパク質を使用し…
  3. 【現地レポ】Quornのマイコプロテインを食べてみた@シンガポー…
  4. Redefine Meatが3Dプリントされた植物ステーキ肉を欧…
  5. ブラジルのマイコプロテイン企業Typcal、ブラジル州政府から助…
  6. Vowが絶滅マンモスのDNAから培養マンモスミートボールを作製
  7. 中国バーガーキングが植物肉バーガーを発売開始
  8. 植物性刺身を開発するOcean Hugger Foodsが復活|…

おすすめ記事

【世界初】シンガポールの小売店で培養肉の購入が可能に|米GOOD MeatがHuber’s Butcheryで新製品の販売を開始

世界で初めて培養肉を発売した米GOOD Meat(イート・ジャストの子会社)が、…

Novameatが約7億円を調達、独自3Dプリント技術による代替ステーキ肉製造の更なるスケール化へ

独自の3Dプリント技術を使い植物性の代替ステーキ肉を製造するバルセロナのスタート…

【2024年】培養魚企業レポート販売開始のお知らせ

更新日:2024年3月13日最新版を2024年3月13日に発売しました。…

韓国政府、2022年の国家計画に培養肉のガイドラインを追加

韓国の食品医薬品安全処が、国家計画に初めて代替タンパク質に関するガイドラインを盛…

インポッシブルフーズがオーストラリア・ニュージーランド進出へ向け準備

代表的な米代替肉企業インポッシブルフーズが1年以内に株式上場すると言われるなか、…

スペインのRemy Robotics、ロボットによるバーチャルレストラン「Better Days」を米国で立ち上げ

ロボット工学、AI、調理工学を組み合わせてレストラン業界の変革を目指すスペイン企…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(04/25 15:03時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(04/26 00:51時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(04/26 04:48時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(04/25 21:03時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(04/26 13:07時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(04/26 00:05時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP