新しい食

不二製油、カカオ不使用の代替チョコレートを発売 – カカオ価格高騰への新たな選択肢

 

カカオ豆の価格高騰が続くなか、大手油脂メーカーの不二製油は今月、カカオ・ココアバターを使用しない新製品を発売した。

3月12日に発表された「アノザM」は、カカオマスやココアバターなどのカカオ豆由来原料を一切使用しない、同社初のカカオフリー製品

原料にはエンドウ豆キャロブ(イナゴマメ)チョコレート用油脂などを使用し、業務用の代替ミルクチョコレートとして開発された。

不二製油の代替チョコレート開発の歴史

出典:不二製油

2024年、世界のカカオ生産の約70%を占める西アフリカでは、気候変動やエルニーニョ現象による異常気象の影響で、カカオ生産の構造的な問題が深刻化した

昨年12月にカカオ価格は1万2,646ドルと当時の過去最高値を記録し、2025年1月にはさらに高騰した

こうした状況を受け、不二製油はカカオ価格高騰に対する新たな選択肢として、代替チョコレート製品を開発。開発では、長年培った植物油脂とチョコレートの知見を活用し、「美味しさ」を重視した。

不二製油の代替チョコレート開発の始まりは1955年にさかのぼる

1955年、不二製油は国内で初めて、パーム核油を原料としたココアバター代替油脂「メラノバター」を開発・発売した

1970年代になるとカカオ豆由来のココアバターの品質・供給量の不安定さが問題視され、世界的にココアバター代替品への需要が高まった。

不二製油はエステル交換技術を導入し、1980年代中頃にはリパーゼを用いた酵素エステル交換技術によるココアバター代替油脂の工業化・大量生産を実現した

海外で進むカカオフリー市場と日本市場の行方

出典:不二製油

近年、代替カカオ開発は海外でも進展している。

イギリスでは2022年5月、Win-Win(旧称WNWN)が世界で初めてカカオフリーチョコレートをオンラインで限定発売した

ドイツのPlanet A Foodsは2023年4月、オンライン小売業者Confiserie Seidlと提携し、代替チョコレート製品Chovia(当時Nocoa)を発売。同年9月にはスーパーマーケットで代替カカオ使用の製品を初販売した

ほかにも、そら豆を使用するNukokoおからを原料とするMycosortiaなど、代替チョコレート開発に取り組む企業が増えている。

植物成分を使用した代替チョコレート開発では、使用する原料が多岐にわたることが1つの特徴といえる。日本国内でも、あじかんが昨年、焙煎ごぼうを主原料とした「GOVOCE(ゴボーチェ)」を発売した

最近では、ブラジルのCellvaコーヒーの副産物から代替カカオ開発に取り組むなど、新たな事例が確認されている。

現時点では、日本国内でカカオフリー製品はまだ限られた市場にとどまっている。代替肉やプラントベース食品の普及は進んでいるものの、 「カカオを使わないチョコレート」という概念は消費者に広く浸透していない。

しかし、環境意識の高まりやカカオ価格の高騰による代替需要が拡大すれば、数年以内に代替チョコ市場も欧州のように成長する可能性がある。

カカオの供給不安が続く中、グローバルの代替チョコ市場が今後さらに成長することは間違いない。カカオフリー製品の流通では海外が先行しているが、不二製油に続き、他の大手企業が技術力と生産能力を活かして参入すれば、国内市場の拡大も加速するだろう。

 

参考記事(プレスリリース)

カカオ豆由来の原料を全く使用しない、ミルクチョコレートタイプの新製品発売について

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:不二製油

 

関連記事

  1. フィンランドの研究チームが細胞培養によるコーヒー生産に成功
  2. シンガポール企業Mycosortia、おからをアップサイクルした…
  3. とうもろこしから作られる砂糖|植物繊維のアップサイクルで砂糖を開…
  4. コロラド州の植物肉バーガー企業が米MeliBioの代替ハチミツを…
  5. アボカドの芽の凍結保存に初めて成功|オーストラリアのクイーンズラ…
  6. 家庭用チョコレートメーカーChocomake|自分好みのチョコ作…
  7. 代替ハチミツの米MeliBioが約6.7億円を調達、今春より生産…
  8. 誰もが食べられるグルテンを開発するUkko、食品アレルギーにパラ…

おすすめ記事

米ビヨンドミート、植物ステーキ肉の年内発売を計画

植物肉を展開する米ビヨンドミートが今年後半に植物由来ステーキ肉の発売を予定してい…

最短30秒で調理する自律調理ロボットを開発したRoboEatz、1台目をラトビアに設置予定

カナダ、米国、ラトビアに拠点を置くRoboEatzは、自社の調理ロボットを「世界…

Believer Meats、培養肉の生産拡大に向けてGEAと戦略的パートナーシップを締結

イスラエルの培養肉企業Believer Meatsは先月26日、効率的かつ持続可…

分子農業パイオニアの英Moolec Science、SPAC経由の上場を計画

植物を活用して動物由来と同等のタンパク質を開発するイギリスの分子農業スタートアッ…

【4/10】代替カカオ・ココアバター最新動向セミナー開催のお知らせ

本セミナーは終了しました。アーカイブ動画はこちらからご覧いただけます。…

培養魚のWanda Fishがタフツ大学と独占的ライセンス契約を締結

イスラエルの培養魚スタートアップWanda Fishは、培養魚の開発でタフツ大学…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(04/16 15:00時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(04/16 00:46時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(04/16 04:45時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(04/15 21:00時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(04/16 13:05時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(04/16 00:01時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP