出典:Onego Bio
フィンランドのフードテック企業Onego Bioは今月22日、精密発酵で開発したオボアルブミン(卵白の主要なタンパク質)「Bioalbumen」についてアメリカ食品医薬品局(FDA)から「質問なし」のレターを受領し、GRAS認証を取得したと発表した。
アメリカで卵白タンパク質のGRAS認証を取得した企業として、The EVERY Companyに続き2社目となる。
Onego Bioはこれにより、価格変動や供給変動、鳥インフルエンザの脅威に対する安定した供給源として、Trichoderma reeseiを用いて生産された「Bioalbumen」の市場投入を進めることが可能となる。
共同創業者・CEO(最高経営責任者)のMaija Itkonen氏は、「Onegoでは、誠実さと透明性を常に活動の中心に据えています。FDAのGRAS審査プロセスを追求したのはそのためです」とプレスリリースで述べ、今回のFDAの結論により、クライアント企業は「Bioalbumen」を食品に取り入れるにあたり、規制当局に裏付けられた確かな根拠を持って自信を持って採用できると強調した。
精密発酵卵白で米国2社目のGRAS認証

出典:Onego Bio
Onego Bioは今春、最初の商用規模のパイロット生産を完了し、米国ウィスコンシン州ジェファーソンにあるFood and Beverage Innovation Campusに製造施設を建設する計画を発表した。2028年に稼働開始予定で、600万羽の鶏が生産するのに相当する卵白タンパク質を供給可能な規模となる。
FDAにより公開されたGRN 1249によれば、「Bioalbumen」は焼き菓子、ベーキングミックス、スムージー、マシュマロ、代替ミルク、代替卵、アイスクリーム、代替肉、プロテインバーなどへの使用(タンパク源・気泡剤・ゲル化剤・結着剤用途)が想定され、使用量は食品100gあたり3~25gとされている。
先行するThe EVERY Companyはこれまでにスムージー(2021年11月)、マカロン(2022年3月)、アルコールドリンク(2022年10月)、プロテイン粉末(2024年6月)といった商品で精密発酵による卵白タンパク質を市場投入してきた。
今年3月にはEarthbarが、The EVERY Companyの「EVERY OvoBoost」を使用したプロテイン・ラテ(モカ味、抹茶味)を期間限定で発売した。導入の多くは期間限定で、適用の幅や市場性の検証を進めている。2023年末に発表された液状卵のレストランへの導入は確認されていない。
The EVERY Companyとの特許抗争

Maija Itkonen氏 出典:Onego Bio
一方、両社の間では特許無効を求める訴訟が進行している。
AgFunderの報道によれば、The EVERY CompanyがOnego Bioに対し不当な特許ライセンス料を要求し、特許ライセンスを取得しなければThe EVERY Companyの特許を侵害することになるとの干渉があったという。
これに対し、Onego Bioが原告となり、The EVERY Company(Clara Foods)が昨年取得を発表した米国特許12,096,784号の無効・非侵害・執行不能の宣言を求めて提訴した。
Onego Bioは、The EVERY Companyの特許には菌株の1つにTrichoderma reeseiが挙げられている一方で、これを用いた実施例の記載が特許にないこと、同菌株による生産はVTTが先行し、周知化していたこと、さらにThe EVERY CompanyがVTTに技術情報を求めていたことなどを根拠に挙げている。
Motif Foodworksのように同じ成分領域で精密発酵企業の特許抗争が一方の存続に影響した前例もあり、特許抗争が二社の今後の市場投入にどのように波及するか注視される。
※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
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アイキャッチ画像の出典:Onego Bio