代替プロテイン

仏Verley、精密発酵ホエイでGRAS認証を取得―「代替」ではなく「補完×機能」を掲げる差別化戦略

出典:Verley

フランスの精密発酵企業Verley(旧称Bon Vivant)は今月、アメリカ食品医薬品局(FDA)から精密発酵で開発したホエイ(β-ラクトグロブリン)について「質問なし」のレターを受領したと発表した

今年1月のGRAS自己認証に続くもので、最新事例も含めると精密発酵ホエイではアメリカで6社目のGRAS認証となる。

特にトランプ政権の発足以降では、オランダのVivici(2月)、中国のChanging Bio(9月)に続き、精密発酵ホエイでは3社目のレター受領となった。

Verleyが精密発酵ホエイで「質問なし」レターを受領

出典:Verley

精密発酵は、動物に依存せずに乳タンパク質の生産を可能にする技術であり、食品分野においては米パーフェクトデイが先行して市場投入を実現している。現在も同社原料を使用した製品がアメリカで販売されている

GRAS認証を取得した6社目の精密発酵ホエイ企業として、Verleyは市場投入を進める方針だが、同社は自社のタンパク質を「代替タンパク質」とは位置づけず、乳製品を補完する素材とみなしている。

精密発酵によるタンパク質を通じて、乳製品の機能性を拡張し、持続可能性を高めるとともに、GLP-1服用者、高タンパク・低糖質食といった現代の多様なニーズに対応していくことを狙っている。

GRN No.1241によれば、同社はAspergillus oryzae TFB-CLEO75TAを用いてβ-ラクトグロブリンを生産。サプリメント、栄養バー、スポーツドリンク、ミルク、クリームチーズ、ヨーグルト、焼き菓子など幅広い用途を想定している。

プレスリリースによれば今回のGRAS認証は、Verleyの主力原料2種を対象としている。

FermWhey Native」はβ-ラクトグロブリンを95%含有し、スポーツ向けや栄養補助製品、代替乳製品、インスタント飲料などを想定。「FermWhey MicroStab」は耐熱性と耐酸性を備えた微粒子化ホエイで、インスタント飲料や高タンパク質乳製品などを想定している。

公式サイトにはフレッシュチーズやヨーグルト向けの「FermWhey Gel」も掲載されており、同社はこの原料についても申請準備を進めていることをGreen queenのインタビューで述べている

FermWhey Gel」には同社の特許取得済みのGelFactor技術が採用され、ホエイに欠けていたゲル化機能を付与したものとなる。これにより、カルシウム存在下低温の酸性条件下でもゲルを形成するため、安定剤の使用が不要になるとしている

Verleyは2026年にアメリカでの市場投入を目指すが、他の市場での展開も視野に当局との協議を進めているとプレスリリースで述べている。

「補完×機能性」で差別化を狙うVerleyの戦略

出典:Verley

Foovoの調査では、アメリカで販売可能な段階に到達している企業は増えているものの、実際に乳タンパク質の上市が確認できている精密発酵企業はパーフェクトデイRemilkの2社に限られている(自社で原料開発する企業を対象/公開情報からの確認に基づく)。

今月には長期にわたり販売されていた精密発酵クリームチーズ製品の終了も確認された

Verleyはこれまでの精密発酵企業と異なり、ホエイの弱点(酸・熱安定性、ゲル化など)を機能別に強化した原料ポートフォリオを複数展開し、用途ごとのニーズに応える設計を前面に出している。

さらに「精密発酵は従来の乳業を置換するものではなく補完するもの」だと公式サイトで述べ、補完の戦略を明確に打ち出している。

こうした姿勢からVerleyは「代替タンパク質」という大きな枠組みを細分化し、企業が抱える個別の課題に対応する原料を提示することで、より広く、かつ深く市場へ浸透しようとしていることがうかがえる。

長期に販売された商品の撤退例が確認される中、Verleyがこの差別化戦略によって精密発酵ホエイの分野で独自のポジションを確立できるか、今後の展開に注目したい。

 

※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Verley

 

関連記事

  1. 子どもが培養肉を知るための絵本のクラファンがスタート
  2. そら豆を原料に代替卵を開発するPerfeggtが約4.9億円を調…
  3. SimpliiGoodのスピルリナ由来のビーガンスモークサーモン…
  4. デンマークのMATR Foods、欧州投資銀行から約31億円の融…
  5. アレフ・ファームズがアジアへの培養肉導入加速に向けてタイ・ユニオ…
  6. Moolec Science、豚タンパク質を作る大豆「Piggy…
  7. 【万博フードテックガイド】──2025大阪・関西万博の注目のフー…
  8. BlueNaluがアジアへの培養魚販売に向けて三菱商事、タイ・ユ…

おすすめ記事

GOOD Meat、世界最大の培養肉用バイオリアクターの製造へ

イート・ジャストの培養肉部門GOOD Meatはバイオプロセス機器のリーディング…

幅広い植物肉製品を開発するHungry Planetが約27億円を調達

植物性の代替肉を開発するHungry PlanetがシリーズAラウンドで2500…

培養油脂のPeace of Meatと英ENOUGH、マイコプロテインを使った培養ハイブリッド肉の開発で提携

イスラエルの培養肉企業MeaTechは19日、傘下の培養油脂を開発するベルギーの…

精密発酵カゼインを開発するThose Vegan Cowboys、大手チーズメーカーHochlandと提携

精密発酵カゼインを開発するベルギーのThose Vegan Cowboysは先月…

インポッシブルフーズの脅威になるか?スピルリナ由来のヘムを開発したBack of the Yards Algae Sciences

Back of the Yards Algae Sciences(BYAS)とい…

【2021年10月】代替シーフードの投資動向/大手、スタートアップの参入・提携状況

本記事は、2021年1月~9月までの代替シーフードの投資状況、大手×スタートアッ…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

精密発酵ミニレポート発売のお知らせ

最新記事

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(01/25 16:36時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(01/25 03:21時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(01/25 06:55時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(01/24 22:40時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(01/25 14:38時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(01/25 02:01時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP