出典:トイメディカル
減塩をサポートする「塩分オフセット技術」を開発した熊本のスタートアップトイメディカルは、10月に3億円の資金調達を実施したことを今月2日に発表した。
既存投資家として肥銀キャピタル、新規投資家として東洋製罐グループホールディングスと再春館共創ラボラトリーが参加し、累計調達額は11億円を超えた。
あわせて東洋製罐グループHDは、トイメディカルとの協業開始を明らかにした。
塩味を変えずに塩分吸収を抑制するオフセット技術

出典:トイメディカル
トイメディカルは2013年に竹下英徳氏によって設立された。
もともとは透析用の医療用品を扱っていたが、透析患者の「以前のようにラーメンが食べたい」という声をきっかけに、減塩技術の開発に着手した。テレビCMで脂肪や糖の吸収を抑える飲料を目にし、「ナトリウムでも同じことができるのではないか?」と着想。
熊本大学との共同研究を開始し、透析患者にとって制限が必要なカリウムを含まず、ナトリウムを吸着する原材料の検討を進めた結果、海藻由来のアルギン酸類にたどり着いた。
アルギン酸類はナトリウムイオンと結びつきやすく、人の消化酵素では分解されない性質をもつ。食品中の塩分と結合したアルギン酸ナトリウムは体内で吸収されにくく、そのまま体外へ排出される。
つまり、食べるときには塩味を感じながら、体内では塩分の吸収が抑えられるというのが、「塩分オフセット技術」の仕組みだ。

出典:トイメディカル
約2年の開発期間を経て、この技術はすでに複数の製品に展開されている。
サプリメントの「デルソル」と、GABAを追加した「GABAデルソル」、塩分吸着ファイバーを配合した調味料「零シリーズ(塩・粉末醤油・塩胡椒)」、さらに塩分吸着パウダーを配合したオランダせんべい「気にせんべい」などだ。
たとえばサプリメント「デルソル」は、食事の前後に摂取することで、食事の味を変えずに塩分コントロールをサポートする設計となっている。
トイメディカルは今月1日、重光産業と共同開発中の「塩分オフセット麺」を、2026年春から店頭販売する計画も発表した。経済産業省の中小企業向け補助金制度「Go-Tech事業(成長型中小企業等研究開発支援事業)」の採択を受け、開発を進めてきたものだ。
麺にはアルギン酸類が練り込まれており、ラーメンのスープに約5~6g含まれるとされる塩分のうち、約1g相当の塩分を吸着し、体外に排出することが期待されるという。
熊本県の味千ラーメン富合店で先月25・26日に実施された試食会では、「違いを探してみたけれど分からない」といった声が寄せられた。
今回の資金調達について、東洋製罐グループHDは出資の背景として、「“おいしさ”を保ちながら塩分過剰摂取の抑制を可能にすることを目指す、次世代の食に資する有望な技術」だと評価している。トイメディカルは今後、調達した資金で、「塩分オフセット技術」を用いた製品開発、生産体制の拡充、国内外の販路拡大にあてる方針だ。
国内で進む減塩ソリューション

出典:トイメディカル
塩分を摂りすぎると血液中のナトリウム濃度が上昇し、浸透圧の関係で血管内の水分量が増えて血管壁に強い圧力がかかり、高血圧を引き起こす。高血圧が続くと動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞といった重篤な疾患のリスクも高まる。
日本人成人の食塩摂取量は平均9.6gとWHO(世界保健機関)の推奨値5g未満の約2倍とされており、社会全体として減塩対策は喫緊の課題である。
減塩をめぐっては、トイメディカルのような吸収抑制というアプローチとは異なる技術も登場している。
キリンホールディングスは電気の力で塩味やうま味を増強するスプーンやカップを開発し、味の素も首や耳にかけて電気の力で味覚をコントロールするデバイスを開発している。
トイメディカルの技術は、物理的に塩分を減らしたり、代替塩を使用したりするのではなく、味を保ちながら、その吸収を抑えられる点が特徴だ。資金調達と外食展開を追い風に、「味を変えずに塩分の吸収を抑える」というトイメディカルの技術がどこまで食生活に浸透していくのか、今後の動向が注目される。
※本記事は、プレスリリース(①・②・③)をもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
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アイキャッチ画像の出典:トイメディカル
















































