出典:大阪大学
国内ではまだ販売に至っていない培養肉などの細胞性食品を、実物を見て、知ってもらうための取り組みが始まった。
大阪大学は今月12日、大阪・関西万博で展示した培養肉を全国の科学館で巡回展示するため、クラウドファンディングを開始した。展示の実施期間は2026年2月から2028年1月を予定している。
2025年4月13日から半年間開催された万博の大阪ヘルスケアパビリオンでは、「家庭で作る霜降り肉」ブースが設置され、培養肉の実物が展示された。

万博で展示された培養肉の実物 出典:大阪大学
細胞性食品の社会実装を目指す大阪大学や伊藤ハム米久ホールディングス、ZACROS、TOPPANなどで構成される「培養肉未来創造コンソーシアム」が、開催の3年前から構想していた企画だ。
個人の健康状態や好みに合わせ、家庭で霜降りステーキ肉をいつでも食べられる未来を体感してもらうことを狙った。7月には培養肉の香りを体験するイベントも開催された。一方で、筆者も含め、万博へ行ったもののパビリオンの予約が取れず、展示を実際に見られなかった人もいる。

出典:大阪大学
本プロジェクトでは、万博に行けなかった・行ったけれど実物を見ることができなかった人を含め、若い世代や子どもを含む幅広い層に向けて、全国の科学館で培養肉の巡回展示を開催することを目指している。
その第一歩として、今月上旬から大阪科学技術館(てくてくテクノ館)で期間限定展示が開始された。来年2月からは東京都内の科学館での展示を予定している。現在も複数施設での展示に向けた調整を行っているが、最終目標は47都道府県の科学館での展示だ。
大阪大学の松﨑典弥教授らは、数年前から培養肉の社会受容度の調査を実施してきた。過去3~4年は「食べたい」と回答する層が3割程度にとどまっていたという。しかし万博での展示を通じて、「食べてみたい」という声を多く耳にした。実物を見て体感することの効果を実感したことが、本プロジェクトの立ち上げを後押しした。
巡回展示では輸送費やメンテナンス費が発生し、1回あたり50万円~100万円が見込まれるため、クラウドファンディング実施を決めた。目標寄付額は500万円。期間は2月9日23時までで、本記事執筆時点で55万9,000円が集まっている。
3,000円から支援できるプランのほか、来年6月に開催予定の培養肉未来創造コンソーシアムの総会の参加チケットがついた10万円のプランなど、複数のリターンが用意されている。

Foovo作成
細胞性食品は、人口増加や気候変動によって顕在化する食料危機への備えとして位置づけられている。畜産に伴う温室効果ガス排出の抑制が期待され、水や土地を集約的に利用する従来畜産への依存を緩和し得ることから、気候変動・環境負荷対策として注目されてきた。

出典:Vow Vowの販売状況(2025年12月19日時点)
商用化は海外が先行し、シンガポールでは現在もVow、GOOD Meatの2社が、オーストラリアではVowが、アメリカでは細胞性サーモンのWildtypeが提供を続けている(2025年12月19日時点)。国内でも昨年11月から、安全性に関するガイドライン策定に向けた調査部会が本格的に動き出し、議論が進む。
細胞性食品を「食べてみたい」と思う層を増やすには、まず多くの人が培養肉の役割・意義を知り、理解しているという「高い社会認知度」が前提となる。全国の科学館での巡回展示が実現すれば、その土台づくりを進める一手になり得る。
※本記事は、プレスリリースおよびクラウドファンディングページをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
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アイキャッチ画像の出典:大阪大学





















































