代替プロテイン

ヘルシンキ市、2030年までに肉・乳製品調達の半分を削減する方針決定|自治体の公共施策がプラントベース移行を後押し

フィンランド・ヘルシンキのスーパーに陳列される代替肉製品 Foovo(佐藤)2024年8月撮影

ヘルシンキ市議会は、2030年までに2025年比で市全体の肉・乳製品調達を半減し、その分をプラントベース食品に置き換える市の方針決定した。

Mai Kivelä議員らは2025年5月、2030年までに2025年比で肉・乳製品調達を半減し、栄養価の高いプラントベース食品に置き換える提案を提出した。反対する差し戻し案が57対23で否決され、原案どおり同提案が決定された。

この提案は、ヘルシンキ市の肉・乳製品調達を見直し、食品調達に伴う排出量や環境への影響の低減、健康の促進、栄養勧告への対応、さらにはコスト削減を図る狙いがある。

Aalto大学の2025年の論文によると、肉の半分を、持続可能な植物性タンパク質に置き換えた場合、ヘルシンキは年間300万ユーロ以上を節約できるという

ヘルシンキの今回の動きは、都市が公共施策を通じて、食の環境負荷や栄養、さらには代替タンパク質市場の方向性にも影響を及ぼしうるものとして注目に値する。

フィンランド・ヘルシンキのスーパーに陳列される代替乳製品 Foovo(佐藤)2024年8月撮影

注目すべきは、ヘルシンキがゼロから始めるわけではない点だ。

市の資料によると、ヘルシンキの教育部門ではすでに2019年比で赤肉料理の提供は50%減少している。市は教育部門で2030年までに肉全体の提供量も2019年比で半減させる計画を立てており、2029-2030年度には学校と幼児教育で肉料理の提供頻度を隔週で1回、もう一方の週は2回、6週間で計9回とする想定だ。

学校では昼食の85%が野菜・魚、15%が肉という構成が示され、肉の削減を進めるため、肉の一部を植物性タンパク質に置き換えるハイブリッド食の活用が重視されている。

また市は「環境保護目標2024」として、肉・乳製品の消費量を2019年比で2025年までに半減させる目標を掲げてきた。

今回の提案は、学校や保育施設を含め、既存の市全体の肉・乳製品削減の取り組みを踏まえつつ、2025年比で2030年までに肉・乳製品調達を半減する新たな目標を示した

こうした自治体主導の取り組みは、ヘルシンキだけの事例ではない。

オランダ・アムステルダムのスーパーに並ぶ代替肉 Foovo(佐藤)2024年10月撮影

たとえばオランダアムステルダム市は食料戦略政策において、2030年までに食生活における植物性タンパク質の比率を40%から60%へ引き上げる方針を掲げ、市のケータリングでも植物性比率を少なくとも50%、将来的には70%まで高めることを検討している。

デンマークオーフス市も、市の外食サービスに伴う二酸化炭素排出量を25%削減する目標を設定し、2022年のCO2税導入以降、市の牛肉消費は33%減ったと報告している(PDF p26)。

スペインでは昨年4月、学校給食でヴィーガンを含む植物由来メニューの選択を保証する政令が承認され、今年4月16日から施行される

このように欧州では、「食を個人の選択に委ねる」だけでなく、自治体の調達基準そのものを変える動きが広がっている。

一方、アメリカではニューヨーク市の公立病院群NYC Health + Hospitalsが、2022年から患者向けに植物性メニューを昼食・夕食の選択肢として提示してきた。2024年時点で累計120万食以上のプラントベース食品を提供し、2023年には二酸化炭素排出量を36%削減、1食あたり59セントのコスト削減につながったと公表している。

さらにデンマーク政府は2023年10月、植物性食品を「未来」と位置づける行動計画「Action Plan on Plant-Based Foods」を発表した。

他国では、植物性タンパク質への移行が政府と都市の制度設計の話になりつつある。

日本で現時点で確認できる政府の取り組みは、学校給食における有機食品・地元産食材の導入であり、ヘルシンキのように肉・乳製品の削減を数値目標として掲げる例は公開情報からは確認できていない。

一方、政府は昨年、「供給構造の抜本的強化」に向けてフードテックを戦略分野の一つに指定した。フードテックの「攻めの分野」の一つにプラントベース食品が含まれることから、国内でも官主導での推進策が進められていく可能性がある。

 

※本記事は、ヘルシンキ市議会の公式資料()をもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。

 

関連記事

アイキャッチ画像はFoovo(佐藤)撮影

 

関連記事

  1. 【3/25】最新の研究事例から見る ! 細胞性食品(培養肉)セミ…
  2. Oobliが精密発酵モネリンでGRAS認証を取得|ブラゼインに続…
  3. 韓国政府、2022年の国家計画に培養肉のガイドラインを追加
  4. インテグリカルチャー、培養肉用資材のB2Bマーケットプレイス「勝…
  5. ドイツのVeganz、シート状のオーツミルク製品「Mililk」…
  6. Evo Foodsとギンコ・バイオワークス、アニマルフリーな卵タ…
  7. 英Hoxton Farmsが住友商事と提携、日本を含むアジア市場…
  8. Vowの培養ウズラ肉、シンガポールのレストランがメニューに導入、…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

おすすめ記事

不二製油、熟成チーズ風味を5日で実現|乳不使用素材DEALIも展開、発酵素材で新提案

Foovo(佐藤あゆみ)撮影不二製油が、発酵技術を活用した乳化発酵素材のラインナップを拡大してい…

UPSIDE Foodsが培養シーフード企業Cultured Decadenceを買収

アメリカの培養肉企業Upside Foods(アップサイドフーズ)が、培養シーフ…

2021年の代替タンパク質投資額は50億ドルとGFIが報告、2020年の約1.6倍に成長

代替タンパク質の普及を推進する非営利団体Good Food Institute(…

ビヨンドミート、菌糸体由来ステーキ肉の発売計画を発表

米ビヨンドミート(Beyond Meat)が菌糸体由来のホールカット代替ステーキ…

英Meatly、イギリスで世界初の培養ペットフードを発売

イギリスの培養ペットフード企業Meatly(旧称Good Dog Food)は、…

酵母から脂肪を開発するCultivated Biosciencesが約2.1億円を調達

植物由来乳製品の食感を改善するためにクリーミーな脂肪成分を開発するスイス企業Cu…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

精密発酵・定期動向レポート発売のお知らせ

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

会員サービスFoovo Deepのご案内

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP