代替プロテイン

ドイツのInnocent Meatが約11億円を調達、2028年の市場投入へ|食肉加工業者の培養肉生産を可能にするソリューション

出典:Innocent Meat

ドイツの細胞性食品スタートアップのInnocent Meatは先月19日、600万ユーロ(約11億円)を調達したと発表した。調達した資金で、最初の実証プラントの建設を進め、2028年の市場投入を目指すとしている。

今回の資金調達は、2024年4月の300万ユーロ(当時約4.8億円)の調達に続くものとなった。

同社は食肉加工業者向けに、細胞性食品の工業生産を可能にする自動化製造技術を開発している。植物分子農業により細胞の成長と分化に必要な成長因子も自社開発している。

Innocent Meatが「プラグアンドプロデュース・ソリューション」と呼ぶサービスには、細胞性食品の製造に必要なハード(バイオリアクターや培地ろ過システム)・ソフト・原料(細胞や培地など)が含まれている。

クライアントには、幹細胞や足場、培地など必要な原料がパッケージで届けられ、これをバイオリアクターに入れることで、自社で培養肉生産が可能となるという。スマートAIを搭載したバイオリアクターは6㎡のスペースに設置可能で、週に豚30頭分に相当する約1トンの細胞性ひき肉を生産できるという。

「プラグアンドプロデュース・ソリューション」の提供に先立ち、2023年8月にはウシ胎児血清(FBS)に代わる豚細胞用の増殖培地を開発しており、公式サイトで無血清培地を販売している。また、スイスのThe Cultured Hubでスケールアップを進めている。

期待と現実の間にある分散型生産モデル

出典:Innocent Meat

Innocent Meatの事業モデルは、食肉加工業者が自社で研究開発のリソースやノウハウを構築することなく、細胞性食品の生産を可能にするものだ。

これが実現すると、食肉加工業者が同社サービスを実装することで、社内で細胞性食品を製造し、パティやソーセージなどに直接加工することが可能になる。

類似の事例では、農場に専用コンテナを設置して農家の培養肉生産を可能にするソリューション提供を目指すドイツのMEATOSYSもある。昨年11月にはオランダのRespectFarmsが、オランダの農場に培養肉を生産する設備を導入し、今年は培養肉の生産を直接見学できる体験センターの開設を予定している。

Innocent Meatのように食肉メーカーに設備や原料を提供し、彼らに製造・販売を担ってもらう分散型の方法は、単独の企業が大型工場を立ち上げ、B2B供給を目指すよりも、長期的には広範囲の培養肉普及を可能にする。

出典:MEATOSYS GmbH

しかし、販売までの道のりは長く、設備の導入などハード面でのコストもかかる。

Believer Meats(旧称Future Meat Technologies)もかつて、細胞性食品の製造に必要な設備・技術・原料を主要な食肉メーカーに販売するという構想をもっていた。昨年にアメリカで大型工場を完成させ、細胞性鶏肉の販売認可を取得するところまで到達したものの、2025年12月に事業終了が報じられた。

精密発酵カゼインで同様の構想をもっていたオーストリアのFermifyもアメリカで販売できる状態まで到達したものの、昨年9月に事業を終了した。

このように、既存産業側での生産を目指した数社が、一定の成果に到達しながら事業継続に至らなかった例も出ている。

今回の資金調達には初期から支援してきたGENIUS Venture Capitalも参加した。同社のUwe Bräuer氏は、「Innocent Meatのような急進的かつ破壊的なイノベーションを起こそうとする企業は、立ち上げ期に多大な資金支援が必要です。地域の助成制度や資金調達手段がスタートアップの実態に合致して初めて、十分な民間資本も動員しやすくなります」とプレスリリースで述べた。

低迷する資金調達環境下での調達は、Innocent Meatのポテンシャルに高い関心が集まっていることを示唆している。一方で、同様の構想で一定の到達点に達しながらも終了した例があることも踏まえると、地域・国レベルでの支援が、事業の行方を左右する可能性がある。

 

※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。

 

フードテックの国内外ニュースを週1回まとめてお届けしております。
メールマガジン登録はこちらから

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Innocent Meat

 

関連記事

  1. 微生物と副産物で代替油脂|ÄIOが化粧品で初上市、食品はシンガポ…
  2. 中国の培養肉Joes Future Foodが約12億円を調達、…
  3. Nature’s Fyndが菌類由来の代替肉を米ホー…
  4. 英当局、培養肉の規制サンドボックスプログラムを始動-安全性とイノ…
  5. シンガポール発、Fattastic Technologiesの油…
  6. Strauss Group、Imagindairyの精密発酵ホエ…
  7. ユニリーバ傘下の代替肉ブランドThe Vegetarian Bu…
  8. レタスを活用して乳タンパク質を開発するイスラエル企業Pigmen…

おすすめ記事

菌糸体からステーキ肉を開発するMeati Foodsが約55億円を調達、2022年に商品の販売へ

菌糸体からブロック肉を開発する米Meati Foodsが、シリーズBで5000万…

中国、細胞性食品特許で世界首位に 背景に見える国家戦略

出典:GFI APAC細胞性食肉(培養肉)の特許出願で中国が勢いを増していることが明らかになった…

米Finless Foods、細胞性マグロの商用化に向け投資ラウンド開始|2027年のFDA審査完了を見込む

出典:Finless Foods数年にわたり表立った動きが確認できていなかった米Finless …

食品廃棄物を活用してマイコプロテイン由来の代替肉を開発するMycorenaとは

スウェーデンの代替肉企業Mycorenaは、廃棄される植物をアップサイクルして、…

ドイツ企業Nosh.Bioがマイコプロテインを工業生産する自社施設を発表

ドイツのマイコプロテイン企業Nosh.bioは今月、ドイツ・ドレスデン近郊にある…

ソーラーフーズ、シンガポールでソレインの販売認可を取得

二酸化炭素と微生物を活用して代替タンパク質ソレインを開発するソーラーフーズ(So…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

次回Foovoセミナーのご案内

細胞性食品(細胞培養食品)レポート販売開始

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

精密発酵・定期動向レポート発売のお知らせ

代替カカオレポート・好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

会員サービスFoovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

PAGE TOP