アップサイクル

米ビール大手のモルソン・クアーズが植物性ミルク市場へ進出

 

アメリカ大手のビール会社であるモルソンクアーズMolson Coors)は、大麦をベースとした新しい商品の取り扱いを始めた。ビール会社であるがビールではなく、乳製品不使用のミルクである。

モルソン・クアーズは今まで2世紀にわたって、穀物に関する知識を活用しビールを醸造してきたが、現在はその知見を全く新しい飲料である植物性ミルクへ活用しようとしている。

5つの天然素材から作られる植物性ミルク

出典:Molson Coors

モルソン・クアーズが2022年5月に発売した「Golden Wing Barley Milk」は、5つの素材すべてが天然素材から作られている。5つの素材とは遺伝子組み換えでない大麦、ヒマワリ油、ヒマラヤ岩塩、しいたけエキス、炭酸カルシウムだ。

これは、クアーズ・ライトブルームーンMiller Genuine Draftなど著名なビールブランドを展開してきたモルソン・クアーズが、消費者の需要が他の飲料へシフトしていく状況下でリーチを拡大し、急成長している植物性食品市場でシェアを獲得するための挑戦となる。

「植物性ミルクのカテゴリーは急速に成長しており、それは主にイノベーションによって促進されている」と、モルソン・クアーズノンアルコール商品のマーケティングマネージャーであるBrian Schmidt氏は主張する。「私たちはビールのことを良く知っているからこそ大麦もわかっている。我々の背景と専門知識をもってすれば、これは植物性ミルクにおける次の大きなイノベーションとなるだろう」という。

植物性ミルク「Golden Wing Barley Milk」

出典:Molson Coors

「Golden Wing Barley Milk」はオンラインストアに加え、南カリフォルニア州にあるホールフーヅやスプラウトの店舗でも販売される予定だ。Schmidt氏によると、「小売店や消費者からの初期のフィードバックは、Golden Wingが高い可能性を秘めていることを示している」という。

このミルクには、乳脂肪分2%の牛乳と比べて、ビタミンDが2倍含まれ、カルシウムが50%多く、糖質は60%少ない。

今回市場に参入したのはモルソン・クアーズが最初かもしれないが、ビールの穀物、特に使用済みの穀物をミルクにして再利用することは、特にホームブルワリー(家でビールを醸造すること)の間では数年前から行われていたという。

モルソン・クアーズのアメリカ最大の競合となるバドワイザーの親会社AB InBevの大麦廃棄物も、アップサイクルにより「Take Two」の植物性ミルクとして販売されている。

植物性ミルク需要の増加

出典:Molson Coors

牛乳を使用しない代替ミルクの需要は伸び続けている。Fortune Business Insightsよると、世界の代替乳製品市場は2020年に196億6000万ドル(約2.4兆円)と推定されている

アメリカの成人の70%近くが植物性ミルクを試したことがあり、その3人に1人が毎週飲んでるという。また12%の消費者が、植物性ミルクを少なくとも1種類は自宅に置いていると回答している。

Plant Based Foods Association、GFI、SPINSのデータによると、2021年、動物性ミルクの売上が2%減少しているにも関わらず、植物性ミルクの売上は4%増加して26億ドルに達した

健康にも環境にも優しい植物性ミルクは、今後の乳製品業界で大きな役割を担っていくだろう。

 

参考記事

This Dairy-Free Milk Is Made By An American Beer Giant

Beer giant Molson Coors taps into plant-based milk

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Molson Coors

 

関連記事

  1. 代替卵のイート・ジャストがアフリカ市場へ進出
  2. MycorenaとRevo Foodsが3Dプリント用マイコプロ…
  3. Juicy Marblesが植物由来の骨付きリブ肉の開発に成功、…
  4. イスラエルの培養肉企業Steakholder Foodsが日本で…
  5. オランダの大手スーパー売り場で見る代替乳製品の今|現地レポート
  6. ネスレが精密発酵ホエイを使用したプロテインパウダー製品を発売|2…
  7. 藻類で培養肉用培地のコストダウンを図る東京女子医科大学、培養廃液…
  8. 代替タンパク質の普及促進を行う国際シンクタンクGood Food…

おすすめ記事

VenHubが開発する完全自律型のスマートコンビニ

国内でも無人決済コンビニの導入が進むなど、小売の省人化・省力化が進んでいる。数年…

高級培養肉を開発するOrbillion Bioが約5億4000万円を調達

培養肉を開発するスタートアップ企業Orbillion Bioが、シードラウンドで…

モサミート、牛脂肪細胞を培養する無血清培地に関する論文を発表

オランダの培養肉企業モサミートは、ウシ胎児血清(FBS)を使用せずに脂肪を培養す…

Nature’s Fyndがカナダで微生物由来タンパク質Fyの認可を取得

極限環境微生物を使用して代替タンパク質Fyを開発する米Nature’s Fynd…

中国初の培養肉・微生物タンパク質センターが北京に誕生-未来食品の産業クラスター構築へ

今月、中国、北京市豊台区に同国初となる培養肉・微生物発酵に特化した代替タンパク質…

マクドナルドがアメリカでマックプラントの試験販売を終了

マクドナルドは先月、アメリカで植物性バーガー・マックプラントの試験販売を終了した…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

精密発酵ミニレポート発売のお知らせ

最新記事

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(11/07 16:13時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(11/08 02:48時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(11/08 06:21時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(11/07 22:13時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(11/07 14:13時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(11/08 01:31時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP