シンガポールの培養魚企業Umami Meats(ウマミミーツ)が日本進出を発表した。
Umami Meatsは、日本で需要の高いウナギ、マグロ、タイなどの培養魚の開発に注力している。日本への進出は、日本企業とのパートナーシップの構築、日本でのエコシステム構築に取り組むことを目的としている。
水産物の供給不足を解決する培養魚
近年、海洋水産物の需要が高まる一方で、過剰漁獲や海洋汚染による漁獲量の減少、品質の低下により、水産物の供給不足が世界的な課題となっている。日本で人気のあるニホンウナギは絶滅危惧種に指定されており、メバチメグロは過去20年間で個体数が30%減少した。
プレスリリースによると、2050年までに供給不足は7,000万トンに達することが予測されており、魚細胞から魚肉を作る培養魚の研究開発が世界中で進んでいる。
2020年にシンガポールに設立されたUmami Meatsは、幹細胞技術と人工知能を活用し、ウナギ、タイ、マグロ、ハタハタなどの培養魚の開発に注力している。昨年には培養つみれや培養フィッシュケーキなどのプロトタイプを発表した。1つの幹細胞から筋肉、脂肪を構築する独自の間葉系幹細胞技術で特許も出願している。
日本で培養シーフード製品の商品化を目指す
Umami Meatsは日本進出にあたり、日本支社の設立を計画している。日本支社を、地域の文化やサプライチェーンに適した製造エコシステムと消費者向けアプリケーションを構築する「イノベーションラボ」とすることを構想している。
日本企業とのパートナーシップを通じて、さまざまなシーフード製品の商品化を目指していく考えだ。
Umami Meatsは昨今、培養肉関連企業とのパートナーシップを積極的に拡大している。
直近ではマレーシアの培養肉企業Cell AgriTechと培養肉工場開発で提携したほか、細胞株の改善でカリフォルニアのTriplebarと提携している。
今年1月には、コムギ胚芽を活用し、安価な成長因子を開発する日本企業NUProteinと、同社の成長因子生産システムの使用でライセンス契約を締結している。
Umami Meatsはバイオ3Dプリンターを活用した培養シーフードの共同開発でイスラエルの培養肉企業Steakholder Foodsとも提携している。Steakholder Foodsは4月、二社の提携の成果として、培養ハタの切り身製品を発表した。
世界の培養肉上市の現状
世界でこれまでに培養肉の販売を実現した企業は米GOOD Meat(イート・ジャストの子会社)の1社に限定される。
シンガポールは現在も培養肉の販売が認められている唯一の国だが、最近ではアメリカ食品医薬品局(FDA)が培養肉2社について、安全性に異議なしのレターを発行するなど、進展がみられている。
国内では培養肉に関連したルール形成が整備されていないため、販売は実現していない。しかし、インテグリカルチャーが2月に食品成分のみを使用した培養フォアグラを使用した試食を実施したり、東京大学と日清食品ホールディングスが昨年3月に培養肉の試食を実施したりするなど、研究は前進している。
今年3月には、大阪大学、島津製作所など5団体が、3Dプリンターを活用した培養肉製造技術の社会実装に向けて「培養肉未来創造コンソーシアム」を設立した。
参考記事
培養魚開発のパイオニア企業 シンガポールの「Umami Meats」海洋資源の保護、日本人の魚食文化を守るため、日本進出決定!
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アイキャッチ画像の出典:Umami Meats