オランダの培養肉企業Meatableは今月、シリーズBラウンドで3500万ドル(約51億円)を調達した。
多くの細胞農業スタートアップに出資するイギリスのベンチャーキャピタルAgronomicsがラウンドを主導し、Invest-NL、BlueYard、Bridford、MilkyWay、DSM Venturingなどが参加した。この調達によりMeatableの調達総額は9690万ドル(約141億円)となった。
Meatableは調達した資金でプロセスを拡張し、商用化を加速させる。2024年にシンガポールの一部レストラン、小売店で培養肉を使用したソーセージ、餃子を販売することを計画している。
Meatableが約51億円を調達、2024年にシンガポールで販売へ
昨年末から最近までにUncommon、BLUU Seafood、Vow、Klever Meat、MeatAfora、Clever Carnivoreなど一部の培養肉企業が資金調達に成功しているものの、全体的に培養肉企業への出資は、出資ラッシュが目立った2021年前半と比べ、落ち着いている。
こうしたなか、シリーズAラウンドからシリーズBラウンドへ進み、約51億円という大型資金調達を実施できたことについて、同社共同創業者兼CEO(最高経営責任者)のKrijn de Nood氏は、「新しい投資家としてInvest-NL迎え入れ、既存の投資家から新たな支援を得られたことを大変嬉しく思います。これは、特に現在の投資環境において、当社製品の驚くべき品質、味、実証された拡張性に対する大きな信頼の表れです」と述べている。
培養肉を広く入手可能なものに
Meatableは今春、シンガポール食品庁(SFA)の承認を受けて、シンガポールで同社初の試食会を実施した。また、独自のOpti-ox技術により、培養豚肉の作製期間を以前の3週間から8日間に短縮したことを発表した。これは、豚を飼育して豚肉にする時間より30倍速い生産となる。
世界的に高まる食肉需要に応え、環境負荷を軽減するためには、培養肉を広く入手可能なものにする必要がある。Meatableは今回調達した資金で、規模を拡大して生産期間を短縮し、培養肉を価格競争力のあるものにしようとしている。
Meatableはまた、来年の販売実現に向けてシンガポール当局と協力している。シンガポールで培養肉の製造認可を取得しているEsco Asterと協力して培養肉の現地生産を開始したほか、アジア初の「プラントベース肉屋」であるLove Handleと培養ハイブリッド肉製品の開発を進めるなど、培養肉を市場投入する準備を着実に進めている。
Meatableがシンガポールの次に目指す市場はアメリカだ。アメリカでは今年6月、GOOD Meat、Upside Foodsが販売認可を取得するという大きな動きがみられた。
培養肉数社も申請へ
こうした業界の前進を受けて、他社の培養肉企業も申請に向けて動き出している。中国のCellXは、年内に米・シンガポールで申請予定であることを明らかにしている。
最近スイス、イギリス当局に申請を完了したイスラエルのアレフ・ファームズは、今年後半にシンガポールで発売する予定だ。オーストラリア企業Vowはオーストラリアでの申請を完了しており、シンガポールでは年内の販売を予定している。
こうした状況から、今年から来年にかけて、シンガポール、オーストラリア、アメリカを中心に新たな培養肉の販売が実現する可能性がある。
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アイキャッチ画像の出典:Meatable